第二章の二 猿田彦命
九月も半ばに差し掛かったある日。久々に奏たちの前にヤタガラスが舞い降りた、二人は急ぐでもなく、そのヤタガラスの導きで、夏に良く来ていた
「お久しぶりだね」
まだまだ残暑が厳しい時期だと言うのに、相変わらず涼しげな表情のツクヨミに迎えられ、二人はそんなツクヨミに挨拶をする。
「今日は有名な神様、かな? 君たちにどうしてもお願いがしたいみたいなんだ」
「有名?」
あずさは小首を傾げる。
今までの神様はあずさにはぴんと来ない人たちばかりだった。今回はあずさでも知っている、と言う意味だろうか。
しばらく
「いらっしゃい、
ツクヨミはにっこりと微笑みながら言う。この神の名は
「
地を震わすような低い声音で
「
あずさが言う。
「そうね。いちばん有名なのは三重県の神社になるのかしら」
奏がフォローを入れる。あずさはなるほど! と納得したようだった。
「そんな有名な神様が私たちにお願い事なんてあるの?」
あずさの素朴な疑問に
「彼の見た目、何かに似てないかい?」
涼しげな声音でツクヨミがあずさに問いかけてくる。あずさは
「天狗……?」
「正解」
ツクヨミはにっこりと微笑んで言った。
「今回は天狗絡みの依頼ってことなのかしら?」
奏の言葉に押し黙っていた
「私は天狗の元祖と言われているのだ。今は天狗のことは天狗たちに任せているのだが、どうもそこで問題が出ているみたいなのだ」
奏たちのことは
天狗には階級がある。その階級のいちばん上が『大天狗』と呼ばれている。以下、
そんな天狗界での話だと言う。
「実は、この近くにも
「どうか奴を、自信を持って山を守るよう変えてもらいたいのだ」
「うん! 分かった!」
話を聞いたあずさはにっこりと微笑んで即答する。
「ちょっと、あずさちゃん?」
奏は驚いてあずさの顔を覗く。あずさはケロリとしていた。
「今までだって奏と一緒にいて出来ないことなんて無かったんだもん。きっと大丈夫だよ!」
どこから来るあずさの自信なのだろうか。奏は小さな頭痛を感じつつも、これも乗りかかった舟である。
「
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