第13話 cattalk その三

『シトリーのメスビッチはみっともなく敗北しました。ざまあないですね』

 件のラブホテルチックな部屋の中。フラウロスは舌打ちをしながらそのように報告した。

『まっ分かってたナー』

『しかし。人間界への移動は成功、その後も問題なく活動することが出来ました。これだけで十分な成果かと』

『それじゃあいよいよ私たちが乗り込んで行く番だね』

 オセはしっぽを器用に動かしてハートマークを作ってみせた。

『それじゃあ人間の格好で行こうかなー。どんな姿にしよう』

 フラウロスは首をかしげながら『フゥ?』と疑問を呈する。

『なぜです? 今の姿のままの方が動き易いと思うのですが』

 オセはナハハハハ! と笑ったのちフラウの質問に答える。

『それはね。あの少年を篭絡するためだナ』

『召喚士の少年ですか?』

『うん。あの少年は使える。彼をこちらの仲間につけてしまえば、わが部隊を大量に人間界に送り込むことも可能だナ』

『確かに――』

『人間界には地獄よりはるかに広い土地と、溢れかえるほどの水があるナ。それを使えば今考えているものよりもっと凄まじい規模の『大巨大ワタタビハイパーデリシャスデラックスグレート必殺プランテーション牧場』が実現可能』

『さすがとしか申し上げようが御座いません』

 フラウロスが深々と頭を下げる。

『フフフ。全てはワタタビ天国のために』

 オセは満足げに尻尾を波打たせた。

『さーてじゃあ一発変身してみるかナー。彼が好きそうな姿に――』

 オセはこの世のものとは思えない高い声で呪文を唱えると、その姿を変化させた。

『どうかナー?』

『とってもかわいいです。オセ様』

『どのくらいかわいい?』

『地獄にも人間界にもこれよりかわいいものは存在しません』

 オセは飛び跳ねながら両手を挙げて喜んだ。

『やったー! じゃあフラウも人間の姿にしてあげるナ! どんなカンジがいい?』

『そうですねー……』

 フラウは尻尾で頭を掻きながらしばし考えたのち、

『メガネ。メガネっ娘がいいです』

 と回答した。

『ほほう』

『うまくは言えませんが。もし私が人間であったら確実にメガネキャラである。そんな気がするのです』

『ニャハハハ! そうかもね! それじゃあとってもメガネが似合う女の子にしてあげる!』

 オセは再び呪文を唱え始めた。

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