第6話 cattalk その二

 再び地獄のメス猫たちの様子をお届けしたい。

 場所も同じく地獄の西の北の西のラブホテル――じゃなくて『オセ城』。

『失礼致します。オセ様』

 上品なロシアンブルーの仔猫がドアをコンコンとノックして部屋に入ってくる。

『おー。フラウロス。調査の方はどうなってるナ?』

 シャムネコのオセはベッドに気だるげに寝転がったまま彼女を迎え入れた。

 フラウロスは口に咥えていた紙片をオセに渡す。

 紙片にはごくごく平凡な容姿の少年と、彼にぴったりと寄り添うようにしている紫色の髪で顔を隠した少女が写っていた。

『この人間は?』

『彼らがグラシオ・ラボラスを人間界に召喚した張本人です』

『にゃるほど』

 オセは猫目を皿のようにして紙片をじっと見つめる。

『彼らはどうもグラシオ・ラボラスを元の地獄に返そうとして、奴の配下のクソ犬連中を次々と人間界に召喚しているようです』

『ほう……』

『そのおかげで。地獄と人間界を繋ぐ『ゲート』がガバガバになってきております』

『私のアソコとはまるで逆の状態というわけだナ?』

 などと艶めかしく笑ってみせた。

『その通りで御座います。そういう状態ですので。彼らが『ゲート』を開く所を観測してそのタイミングに合わせれば――』

『こっちからむこうに乗り込んでいくことができる』

 オセは興奮した様子でベッドになんども尻尾を叩きつける。

『おっしゃる通りで御座います。いかが致しましょう? すぐに乗り込まれますか』

『いや。こうみえても私は慎重派でナ。まずは刺客を送り込むべし。誰かいいのはいないか?』

『そうですね』

 フラウロスはしばらく喉をゴロゴロと鳴らして首を捻ったのち、

『それでしたら『シトリー』を送り込んでみましょう』

 と提案した。オセは尻尾で『?』マークを作りながら疑問を呈する。

『シトリー?? あのド変態のバカ猫? あいつで大丈夫?』

『わかりませんが。上手いこと共倒れになってくれれば最高かと思いまして』

 オセはにゃははは! と笑い声を立てた。

『おまえも性格悪いナ!』

 と手招きをするように尻尾を動かしフラウロスをベッド上に招く。

『そういうところが好きだナ……』

 フラウロスの首辺りの毛をペロペロと舐める。フラウロスは艶っぽい声でにゃぁ……と鳴く。

『よし。それじゃあ頃合いを見てシトリーのバカ猫を送り込むにゃ』

 オセはフラウロスを解放するとそのように命じた。

『承知致しました。全てはワタタビ天国のために――』

 フラウロスはベッドから飛び降り深々と頭を下げると、ドアに向かって人間のファッションモデルのごとき上品な足取りで歩いた。

『それにしても』

 オセは再び紙片に目を落す。

『この人間の男の子。けっこうタイプだナー♪』

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