ネク・ビエンテ 黒霧の館10


「………では、倒すとしよう」


フォールスは無造作に石を投げつける。人型の化物は当たる瞬間に過剰とも言える程後ろに下がった。その様子は石に怯えているようにも見える。


「……ネク、おくり還りの祝詞を」


「分かった」


人型の化物は両手を地面に叩きつける。その衝撃で、波状に冷気が押し寄せる。空気さえ凍らせるその風はしかし、フォールス達には届かない。


ネクが、痺れを切らしたようにフォールスに聞く。


「おい、どおすんだよ!守り一辺倒じゃジリ貧でしょ!」


「俺達はただ、時間が過ぎるのを待てば勝ちだ」


「どうゆうことよ」


話している最中でも冷気は押し寄せるが、影響を与えることは出来ないようだ。


「ネクがおくりの祝詞を唱え、魂ごとあの世に持っていく。その為に時間稼ぎする」


フォールスがさっき投げた石は赤く光り、熱を帯び始める。


フォールスは移動する度に、ルール文字と、ルーン文字の並びによる複合魔術を行使している。


使うのは静と、熱。


相手の動きを止め、熱による魔除のシールドを展開し、実質の相手の無力化をする。


フォールスにできるのはここまでで、相手を倒す事は出来ない。だから、ネクの出番だ。


人型の化物の周りを白い光が渦巻いていく。


その光は段々と強まっていき、辺り一帯白で覆い尽くされる。


この白は眩いが不快ではなく、心地の良いものに感じる。


ノアは今まで感じたことの無いような温かさに包まれて、眠りに着いた。




ノアが目を覚ますと神殿内に冷気はなく、人型の化物も居なくなっていた。


喉が痛いと喚き散らすネクと困り果ててるフォールスがノアに気付き話題を逸らした。


「起きたようだな」


「あー、てめぇ露骨に話そらすんじゃねーよ」


ネクの事を完全に無視してフォールスはノアに剣を突き付ける。


「話してもらおうか、知ってること全て」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る