ネク・ビエンテ 黒霧の館


ここが黒霧の少女の家。随分といい雰囲気のとこだ。人でも死んでるんじゃないかと思う程だ。


「……警戒態勢を」


フォールスは最大の警戒態勢をとって家、もとい屋敷を油断なく睨む。


「まともな場所じゃないのは分かる。人足りる?」


いくら手練のフォールスと言えど私なんて所詮後衛だ。問題が起きた時ほぼ1人でフォールスが全て問題を解決しなければならない。


「………ネクが居れば大丈夫だ」


「ご期待ありがとよ。無事帰ったら人員を増やそう」


白の代行は何もフォールス1人じゃない。そんなちっぽけな組織ではなく、むしろ統括会に並び立てる程の規模を持つ。


黒霧の龍=黒霧の少女と仮定し、あの緑の魔法使いとの戦いの跡を捜索し、それはもうフォールスをこき使い捜索しようやく出てきたのはハンカチ1枚。


だが、そこに名前が刺繍されていた。『乃愛』手掛かりはそれだけ。けどそれだけで十分、ウチにはルーンの使い手が居るからな。私にはさっぱり解らん方法で「……ここだ」と連れてきたのが今目の前の屋敷と言うわけだ。


森の中にひっそりとただずむ洋館。厳格な雰囲気は客人を萎縮させるには申し分ない。正直行きたくない。だって、怖いじゃん!人死ぬようなとこじゃん!


(せめて空達を仲間に引き入れた後に来たかったな)


それに、夜ということもあるけどそれだけじゃない寒気が止まらない。


私の中の何かが、警告を鳴らしている。


「……行く」


フォールスが杖を構え魔力を練っている。いつでも簡単な魔法なら打ち出せるよう準備ができいた。


「えっ」


考え事をしていたネクは準備が整っていなかった。


うっわ、コイツ周り見えてねー。ここにビビってる女いますけどー?


どうしてこうまで鈍感なのか、この場所の空気のやばさを感じとれないのか、どうとでもないのか。


「……どうした?」


「怖いんだけど……」


いや、何が?みたいな顔やめてよ。


「……それは、困るな」


本当に困ってるのかコイツは。いつもと変わらない無表情を向けるだけ。次からは最低1人は連れてこよう。


喚いても仕方ないことは分かる。すっごい嫌だけど私にしか出来ん状況が来るかもしれんしな。


大きく深呼吸。すーはー、すーはー。


「…よし、行くぞ……はぁ」


「……決心してくれて……よかった」


「良くねーからな!絶対守れよ!」


「それは任せておけ、悪意は全て跳ね除ける」


フォールスは冷徹な表情で屋敷に足を踏み入れた。

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