黒霧の少女23
空は心地よい微睡みの中で自身の魔力が溶けていくような感覚がする。それは、この世界とは別の世界に浸透していく。
空の体の内側、イメージとしては壺。そこにいっぱいに入っている魔力がどんどんこぼれ落ちていく。決して枯渇している訳ではなくて、内側から止めどなく溢れてくる。空の中の魔力と妖力が一つに成ろうとしていた。
パッと目が開く。そのままパチパチと瞬きをする。
そうだ、あの後はどうなった!?
ガバッと上体を起こすと、光が現れる前の空間に居る。当然燈火は居ない。
「お疲れ、どうだった?」
声のする方を向くとそっぽを向いたくうが胡座を組んで空の隣に座っていた。
相変わらず素っ気ないがその声色は何か別の感情が上乗せされている様な明るさを感じる。
それでも態度は変わらないのかと、思わず苦笑いが出る。
「ああ、何とかなったみたいだ。そっちは?」
「余裕」
「ああ、そうかい」
そう言ってお互いニヤリと笑い合う。
本当はギリギリだっただろう空も、目が赤く何かあっただろうくうも、今はどうでもよかった。
「ただ、記憶が無いんだよな。前回もそうだった」
「えっ、それ大丈夫なの?私はそんな事ないけど」
「杖見たらクリアしたらしい事は分かる」
空の杖は前と変わらない姿形だが、魔力を込めると薄らと別の形が見える。
まだ、杖を扱う器では無いが、自分次第で、更に次のステージに立てる。それが今はただ、嬉しかった。
「お前は何か憑き物が落ちた様な顔してんな」
「うっさい。こっち見んな……ばか」
くうは、顔つきの違いを分かってもらえて少し嬉しかったのと、照れが来て顔が熱くなって、そんな顔を見られたくなくてそっぽを向く。
「あと、くうって名前があんの。ちゃんと名前で読んでよね」
「ん?ああ、分かったよ、くう」
くうは、にまにまと嬉しそうな顔をしていた。
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