黒霧の少女21


『お前の価値は?』


その声は周りの壁からの問だった。


「精神的に追い詰める気かよ」


くうには、この試練はかなり堪えそうな気がして気が滅入る。


「……私は、私には起源の魔法、歌がある。それが私の価値だ」


これは紛れもない私の本心だ。出来ることが多い使い方次第では格上にも一矢報えるだろう。


そうだ。使い方次第で。私には扱いきれない。起源の魔法は二つとない。だから、正しい使い方は本人以外には分からない。


ああ、そうか、私には分からないんだ。


悔しくて心臓が握られてるかのような痛みを感じる。その痛みに眉間に皺が寄る。


さっきとは違い、小さな振動で目の前の壁は左右に別れ新しい一本道が出来上がる。しかし、その道の先は行き止まりだ。


くうは舌打ちをして、歩き出す。


試練は始まったばかりだ。

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