この飛び散った、綺麗な赤黒いものから、目が離せない――
どうしてなんだろうか。こんなにも心が躍ってしまうのは。息が、上がってしまいそうだよ。
ねえ、やっぱり転がっている肉片って、そうなのかな。
ここで殺人が起きたんだよね。
聞きたくて。でも、聞けなくて。
そうして、わたしはこっそりと気付かれないように、上がっていく口角を自覚して。
――恍惚に、瞳を細めた。
この真っ赤に染まった廊下も。
転がっている何かも。
尋常じゃない二人も。
凶器を蹴り上げ、躊躇いもなく女の腕に投げつけた、このひとも。
そして、わたしも。
確かに、何もかも。
すべてが、普通じゃない――ね。
わたしの胸中の呟きを知ってか知らずか。
ただただ雨音が静かに。しかし、着実にその量を増やして、館へ降り注いでいた。
潜んだ者の、ほくそ笑む声を掻き消すように――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます