この飛び散った、綺麗な赤黒いものから、目が離せない――

 どうしてなんだろうか。こんなにも心が躍ってしまうのは。息が、上がってしまいそうだよ。

 ねえ、やっぱり転がっている肉片って、そうなのかな。

 ここで殺人が起きたんだよね。

 聞きたくて。でも、聞けなくて。

 そうして、わたしはこっそりと気付かれないように、上がっていく口角を自覚して。


 ――恍惚に、瞳を細めた。


 この真っ赤に染まった廊下も。

 転がっている何かも。

 尋常じゃない二人も。

 凶器を蹴り上げ、躊躇いもなく女の腕に投げつけた、このひとも。

 そして、わたしも。


 確かに、何もかも。

 すべてが、普通じゃない――ね。


 わたしの胸中の呟きを知ってか知らずか。

 ただただ雨音が静かに。しかし、着実にその量を増やして、館へ降り注いでいた。


 潜んだ者の、ほくそ笑む声を掻き消すように――

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