疎まれた転生者

「お主が望む世界に、転生させてやろう」


 気づいたら広い空間にいた。目の前には白い服を着た老人がおり、そう語りかけてくる。


「……本当に?」


「もちろん本当だ。どんな世界がいいんだ?」


 理解が追いつかないが、どうやら夢とかではなさそうだ。僕は、昔から夢見ていたことをそのまま言うことにした。


「魔法がある、ファンタジーな世界に行きたい!」


「ならそうしよう。他に何か望みはあるか?」


 うーん、何かあるだろうか。

 病気とかは怖いな。異世界の疫病にかかって苦しむのは嫌だ。


「不衛生だったり、病気が流行っているのは嫌だな。衛生観念が高い世界がいい」


「わかった。望み通りの世界に送ってやろう……」




 次の瞬間には、僕は石造りの道の上にいた。   

 本当に異世界に来たのか。周りを見渡せば、地球には存在しないであろう奇妙な植物や、独特な衣装を纏う村人が目に入る。

 とりあえず話しかけてみようとしたが、村人は僕を見ると驚き、逃げていってしまった。僕は地球の服を着ているから、それが良くなかったのかもしれないな。

 とりあえず、向こうに見える街まで歩いてみよう。




 10分ほど歩き続け、街の入口が近づいてきた時。

 街から、馬に乗って全身を防具で包んだ集団が飛び出してくるのが見えた。


「いたぞ!捕まえろ!」


 集団はこちらに近づいてくる。まさか、僕を捕らえようとしているのか?

 そう悠長に考えているうちに、僕は取り囲まれてしまった。この人数差ではどうすることもできない。


「何で僕を捕まえるんですか?」


 その問いにも答えず、彼らは僕を拘束して、街の近くに建つ施設へと運びこんでいった。




 僕は今、地下牢のような場所に幽閉されている。周囲に人は誰もいない。

 僕の周りは半透明の障壁で覆われており、逃げ出すのは厳しそうだ。この壁は魔法なんだろうか。初めて魔法を見たが、この状況ではそれに感動するどころではない。


 なんで僕は捕らえられたんだろうか。

 先程の集団は、みな同じ装備を身に纏っていて、正規の兵隊のように見えた。この牢獄もしっかりとした造りだ。おそらくこの街かこの国か、そういった公的な機関に囚われているんだろう。

 もしかすれば、この仕打ちは国の陰謀かもしれない。国にとって転生者が邪魔な存在だから、秘密裏に消そうとしているんだろう。それならば、なんて酷い国なんだ。


 そう考えていると、監視役らしき女性が歩いてきた。僕は思ったままに尋ねる。


「なんで僕を閉じ込めるんだ。そんなに僕がこの国にとって邪魔なのか?」


「はい、そうです」


 彼女はそう答えた。そのあまりに率直な返答に、僕は面食らってしまう。


「……なんで邪魔なんだ?僕は何も悪いことをしていない。この国に不利益な行動を起こす可能性があるからか?」


 その問いに対し、彼女は無機質に答えた。




「違いますよ。あなたが外来種だからです」


「外来種?」


「はい。

あなたは異世界からの外来種です。

こちらの世界にはない、伝染病を持っている可能性があります。疫病を防ぐために隔離するのは、当然のことでしょう」

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