第20話
先生たちと合流して連れて行かれたお店は、おしゃれな雰囲気だった。
「こんなオシャレな所が最初で大丈夫ですか?なんか格好つけている感じしませんか?」
俺は張り切っている感じが恥ずかしいと感じていた。
「良いんだよ。男なんて格好つけてナンボだから。折角のデートなんだ、とびきり頑張った姿を見せてあげても良いだろ。それに学生さんなら、ある程度大人な男性だと感じてもらえる方が好感度が上がるはずだから。」
「そんなもんですかね?」
俺は先生がモテてきたとは思っていなかったので、正直、この手の分野に関しては半信半疑だった。
「その顔は疑っているな。」
「そんなこと無いですよ!」
俺は慌てて否定した。
席に通された俺と先生、それに2人の学生と4人での食事会が始まった。
「じゃあ、今日はヒカルさんと二人きりで来たつもりで。きっと、ヒカルさんは何を頼むかをヒロシに任せてくるだろうから、何を頼むべきかを考えてみよう。」
先生からの無茶振りに俺はテンパった。
「ほら、早く決めないと!優柔不断な男性はモテないぞ。」
「そんなことを言われても。何を頼めば良いのか分からないですよ。だって、俺の夕飯は毎回、サトシが作ってくれていた料理を温めて食べていただけなんで。」
「そうだったのか。じゃあ、ここは女性の意見を聞いてみよう。エリカだったら、このお店来たら何食べたい?」
「私だったら、まずはサラダ食べたいかな。それと、お肉ですね!」
「え?お肉なの?」
俺は想定外の回答に思わず、質問してしまった。
「え?意外ですか?」
「うん、女性がお肉を好んで食べるって印象が無かった。」
「ヒロシさんは女心を全く理解してないですね。若い女性は正直、野菜よりお肉なんですよ。」
「そうなんだ。あとは何食べたい?」
「このお店だったら、私だったら卵焼きも食べたいかも。」
先生はエリカさんと俺とのやりとりを楽しそうに眺めていた。
「今日は勉強ということで、エリカに料理選んでもらおう。タケシも食べたいものあったら、遠慮なく頼んで良いからね。」
「ありがとうございます!」
「飲み物はどうする?ヒロシってお酒飲めるのか?」
「飲んだことないです。」
「え?」
三人は同時に顔を見合わせた。
「じゃあ、今日のリハーサルはやって大正解だな。自分がどれくらい飲めるのか知っておくのは大事だから。」
「デートの時、男性は何を飲むのが普通ですか?」
「何でも良いと思うけど。まぁ無難にビール飲んでおけば良いんじゃないか?女性の意見として、NGの飲み物ってあったりする?」
「いやー、女性からみて男性が飲んでて引くものって特にないですよ。何を飲むかよりも、飲み方や食事の食べ方とか、箸の持ち方とか、そういったことの方が気になりますね。」
「だそうだ。まずはビール飲んでみるか?」
「そうですね。ビールにしてみます。」
一通りの注文を終えると、タケシが何か聞きたそうにしている様子を感じた。
「タケシさん、何か俺に聞きたいことあるの?」
「え?なんでですか?」
「わざわざ俺の為に時間を作ってまで協力してくれるってことは、俺に何か聞きたいことがあるのかなって思ったから。」
タケシさんはエリカさんや先生に目配せをし、何かを確認している様子だった。
「このアカウントってヒロシさんのアカウントですか?」
タケシさんは恐る恐るスマホ画面を俺に見せてきた。
「あー、そうだよ。何か凄い有名人らしいんだよね、俺。」
ヒロシは照れ笑いを浮かべながらスマホをタケシさんに返した。
「そうなんですね。フォロワー2000万人ってヤバいですよね。そんな有名人と知り合いなんて嬉しいです。」
「ありがとう」
「はいはい、もうこの話はその辺にしておこうか。」
先生が話に割り込んで、話題を強制終了させた。
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