誰が殺した 小さな夢を
一華凛≒フェヌグリーク
誰が殺した 小さな夢を
ねえ 君
いい人におなりよ
クラスの雰囲気に馴染めなくって
些細な孤立に耐えかねて
理想を追いかけ続けられずに いなくなった僕のこと
君たちはもう 忘れているみたいだから
連絡先のグループラインから弾かれたね
まあ 仕方がない もう他人なんだから
「Aサン ガ アナタ ヲ 好キ デハナイノ」
「コノ 場所 カラ 出テイッテクレ」
そういや 他人だったね もう
他人だったのに 消し方が分からなかった
惰性で そのままになっていたね ゴメンヨ
今 電車に揺られていたら 君たちは 僕の前に座ったね
ほんの3歩ほどの距離 楽しそうに話しているね
君たちは気付いていないようだったけれど 僕は血の気が引いたよ
もう乗り越えたと思っていたのに 君たち相手だとやっぱり無理だったみたいだ
まあよくも 僕を一人にしたね
よくもまあ 僕に不信を植えてくれたね
よくも 傷をつけてくれたね
そうとも 半分は僕の所為さ
雰囲気に馴染めず 同調の方法を知らなかった 僕の所為さ
そうして 半分はやっぱり君たちの所為さ
生徒の5人に1人がいなくなった
クラスに馴染めず 途絶えていった
さあ 僕らの夢の残骸を 踏み越えていきなよ 君
振り向いてはいけないよ
憐れまれたりしたら 君の首を絞めたくなるから
だからね 君
振り向かずに 行きなさい
見えずに 置き去りにした クラスメイトも
意識して 踏みにじった クラスメイトの夢だって
全部見ないまま 行けばいい
行ってしまえよ 君
僕らの残骸だらけの手で 人を救えばいい
血濡れた欠片だらけの その手で 君は人を救うんだ
僕らが諦めた分 救うんだ
心も 体も 生活も
僕らの誰もを 救わなかった分
他人を存分に救えばいい
そのための手は 君にある
そのための知識が 君にある
授業中 居眠りするのは 心地よかった?
休み時間の陰口は 楽しかったかい?
それでも 知識を 持ったのだから
君は存分に 救えばいい
僕らの心を見捨てた腕で
僕らの心を刻んだ口で
僕らの心を踏んだ足で
僕らに気が付かなかった 両眼を開いて
全部忘れて 救うがいい
僕のことなら 気にするな
とうに朽ちた亡骸だ
こっちも 夢のお墓は立て終えた
クックロビンの葬式も 一人でちゃんとやり遂げた
だからさっさと行ってしまえよ
祝福するから さっさと行け
夢の向こうに行ってしまえ
いい人におなりよ
人を救う大人になりなよ
人を救える職業人になれよ
僕らの夢を殺した両手で 君は人を救うんだ
誰が殺した 小さな夢を 一華凛≒フェヌグリーク @suzumegi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます