第三十話 ラブコメ難しすぎ
黒羽燐side
『やっほー燐ちゃん。無事に和解したみたいだね。初音ちゃんから聞いたよ』
『舞花さんのお陰です。ありがとうございます』
『いやいやお姉さんは何もしてないよー。それより恋仲に発展した?』
『してません。相変わらず私の一方的な片思いですよ』
『そっかーガード硬いね出雲君。応援してるよ燐ちゃん』
相変わらずこの人は好奇心旺盛だな。
自分の妹を応援するでしょ普通。
『舞花さんは初音ちゃんを応援してください。実の妹なんですから』
『それは無理だよ燐ちゃん。私は出雲君の心の最深部に足を踏み入れる可能性がある者が誰なのか知りたいんだから。初音ちゃんも燐ちゃんも平等に応援するよ』
『そうですか。それと一つ疑問なんですが何で出雲君に拘るんですか? まさか好きなんですか?』
年下好きというだけではないだろうから何か理由がある筈。
私は舞花さんはいい人だと思うけど、少し警戒心も抱いてしまう。
『それは出雲君が誰よりも面白い存在だからだよ。あんなに面白い子いないよ。ああそれと出雲君を恋愛対象として見てるかは内緒だよ。取り敢えず出雲君のチャンネルチェックしたら?』
『チャンネル?』
『あれ知らないの? てっきり知ってるものだと思ってたけどな』
『出雲君のチャンネルですか?』
『そうそう。中学三年の春頃から動画投稿始めたんだよ。それでうちの初音ちゃん救われたんだよ』
中学三年の春!?
という事は私が転校した後だ。
そうか出雲君いじめられてたから何か希望を見つけるために始めたんだ。
『教えてくれてありがとうございます。チェックしてみます』
『うんうん。チャンネル名はダークキャットだよ』
『分かりました。まあ出雲君には許可取りますが』
『律儀だねえ燐ちゃん。じゃあまた明日ね』
『毎日電話するのやめてください』
『ええーいいじゃん、燐ちゃんのケチー』
『大学生なら勉強してください。工学部ですよね。数学とか物理とか大丈夫なんですか?』
『燐ちゃん。この世にはね便利な友達というものが存在するんだよ』
『何ドヤ声で言ってるんですか。友達を物扱いしないでください』
『冗談だよ。まあ大学の講義は難しいけど何とか単位とれてるから大丈夫。心配してくれるなんて燐ちゃん優しいなー』
この人本当に何考えてるか分からない。
出雲君も『舞花さんには気を付けるように』って言ってたしな。
『取り敢えず締め切り近いんで電話辞めてくださいね。期末考査も近いんで』
『分かってるよ燐ちゃん。勉強教えてほしかったら言ってね。こう見えて意外と成績良かったからね』
『ありがとうございます。考えておきます』
『じゃあねー愛しの燐ちゃん』
そう言って通話が切れた。
「はあ~勉強と原稿書かなきゃ」
私は重い腰を上げてベットから机へと向かった。
◇
「難しすぎる。ラブコメなんかどうやって書けばいいんだ?」
俺はパソコンの前で死にかけていた。
VRモノを書いていた時はキーボードを打つ手が止まらなかったのに、ラブコメになると一文字打つのに長時間かかってしまう。
「何かいいアイデアないかな」
俺は本棚にあるラブコメのラノベを引っ張り出す。
そして読み漁る。
その最中燐とプールに行ったことや、初音と水族館に行ったことを思い出す。
「あれはデートじゃないしな」
そもそも恋愛経験ゼロの俺にラブコメを書けって言うのが残酷な話だ。
全く雨宮苺は鬼だ、鬼。
「そう言えば期末考査終わったら、夏休みだな」
俺はカレンダーを見てそう呟いた。
◇
「と言う事でこれから夏休み企画会議を行います」
泉寧音が俺の家の部屋で声を大にする。
「おい、何で俺の家なんだ?」
「だって猫屋敷君の家、滅茶苦茶広いから」
「だからってな。テスト勉強あるんだよ」
「だからこうやって各々教材を持ち込んで」
現在俺の家で俺、初音、燐、住沢、桜坂、泉の六人がテーブルを囲んでテスト勉強と言う名の夏休みの予定を決める会を行っている。
今日の学校で「放課後猫屋敷君の家で夏休みの計画練るから集合ね」と唐突に言い出した泉。反論しようと思った矢先、「うん行く」と初音が言い出し、桜坂も賛同して俺の反論は口から出る前に終わった。
「ていうか初音。クラスメイトに気づかれたら不味いだろ」
「大丈夫。表では友達として見られてるから」
「表も何も友達だぞ」
「お嫁さんよ」
小声で俺と初音が話す。
未だに初音と呼ぶと頬を赤らめる。
いい加減慣れてくれ。
「で、どこ行く?」
「おい泉。白雪も、黒羽も桜坂も仕事で忙しいんだぞ。先ずは予定聞いてから」
「あ、それもそうだね」
そう言って夏休みの予定を聞く泉寧音。
住沢ナイス。流石親友だ。
ていうか燐もすっかりクラスメイトに馴染んだな。
今度こそ平和で良かった。
「私は結構空いてるよ」
「凛ちゃんはオッケーと」
「残り二人は?」
初音と燐に指を指す泉寧音。
桜坂を凛と呼ぶのやめてくれ。紛らわしい。
「私は打ち合わせ以外は出先で仕事できるから大丈夫かな。ああメディアの取材といくつか撮影はあるけど」
「私も夏休みは空いてる日はあるわ。収録とインタビュー、撮影なんかもあるけど大丈夫だと思う」
「よし。じゃあ全員予定大丈夫だね。計画立てよう」
いや俺まだ予定聞かれてませんが。
俺も原稿で忙しいっての。まあ燐と初音しかこの中だと知らないが。
初音には一応報告した。
凄い喜んでいて興奮していたな。
まあ喜んでくれて嬉しかったが。
「ねえ出雲君?」
「どうした?」
小声で会話してくる燐。
顔が近い。凄いドキドキする。
「チャンネル名ってダークキャットで合ってる?」
「ごほっ」
全員俺に注目する。
「大丈夫か猫屋敷?」
「あ、ああむせただけだ」
俺は再び燐と小声で会話する。
「何で知って?」
「舞花さんから聞いた。知られちゃまずかったかな?」
「いや別にいいんだが。俺の動画見たいのか?」
「許可くれるなら見たい。無理には見ないよ」
「いや見ていいぞ。ただ余り面白くないと思うぞ」
「チャンネル登録者百万人なのに?」
「それは運だな」
「運も実力のうちだよ」
「ま、まあそうだよな」
燐がニコニコしながら俺と会話する。
それを見ていた初音がこちらを睨む。
まるで殺気立った獣だ。
「じゃあ海でけってーい。宿泊先も考えておかないとね」
「は!?」
「話聞いてなかったの猫屋敷君。海で二泊三日の海水浴だよ」
「マジで!?」
「うん。宿泊先はまだだけどね」
そう泉が笑って言った瞬間、部屋の扉が開いた。
「お母さんも行くー。別荘貸すよー」
「な!?」
「泉ちゃんいいよねー」
「余計な事言うな母さん。帰れ」
「ここ私の家だもーん」
そう言って燐の横に座るロリ母こと猫屋敷瑠璃。
「本当ですか!? いいんですか?」
「いいですよ。使ってない別荘がありますから」
「ありがとうございます。帯同者は猫屋敷君のお母さんと言う事で」
「うんうん任せなさい」
はあ~。最悪だ。
母さん何してくれてるの。
「相変わらずのお母さんだね」
「ああ全くだ」
俺は大きくため息をその場でついた。
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