第十八話 初デートその2
水族館を出た後俺と白雪は近くのレストランで昼食を取る。
正直空気は重い。
「何食べる?」
「え、ええそうね。このナポリタンにするわ」
「分かった。俺はハンバーグにするよ」
俺と白雪は料理が来るまで沈黙したままだった。
◇
白雪初音side
出雲君と会ってた人、出雲君の中学生時代の同級生だ。
彼女、出雲君が好きだと言ってた。
でも絶対にあれは本当の好意じゃない。
『姉さん、少し調べて欲しいんだけど』
私は姉さんに連絡した。
出雲君の中学時代を深く知る為に。
姉さんならそう言う探偵みたいな事得意だから。
料理が来る間に返信が来た。
『初音ちゃん何を調べて欲しいのかな?』
『出雲君の中学時代の同級生の事』
『へえー意外だね。急にどうしたの』
『さっき出雲君の中学時代の同級生が出雲君と会ってた。出雲君様子が変だった』
『名前知ってる?』
『ちょっとさり気なく聞いてみるわ』
『オッケー。名前分かったら連絡頂戴』
『うん』
私はスマホを一旦ポケットにしまって、出雲君にさり気なく聞く。
「ねえ出雲君。今日会ってた人の名前分かる?」
「どうした急に」
「いや私も何か聞き覚えのある声だったから」
「白雪がか!?」
「え、ええ勘違いかもしれないけど」
怪しまれたかな。
でも出雲君の中学時代を台無しにした人なんだ。
聞いておかなくちゃ。
「黒羽燐だよ。ただの中学の同級生だよ。何かよくからかってくるんだ」
「そ、そうなんだ。私聞いたことない名前だった」
「そっか。料理冷める前に食べようぜ」
「う、うん」
私は出雲君に見つからないように姉さんに連絡した。
『くろはりんだって。調べておいて』
『オッケー。初音ちゃんの為に奮闘しよう』
『ありがとう姉さん』
『はいよー』
私は頼りになる姉さんに任せてスマホをポケットにしまった。
そしてナポリタンを頂いた。
◇
俺は白雪とその後映画などを楽しんで現在時刻は夕刻。
色々あったからか余り楽しめなかったな。
「今日は楽しかったわ。送ってくれてありがとう出雲君」
「あ、ああ。またデートしような」
「うん。いつだって大歓迎よ。何せ私は出雲君のお嫁さんなんだから」
「ははっ」
俺は白雪が住まう高層マンションの前で白雪初音と別れた。
そして一人帰り道黒羽燐の事を考える。
「偶然だよな」
俺の心臓がバクバクと高鳴る。
この高鳴りは決して楽しい、嬉しいなどの喜から生まれた高鳴りではない。
過去のトラウマが甦る感触の高鳴りだ。
「まあもう二度と出会わないよな」
俺はそう呟いて家へと帰った。
◇
白雪舞花side
「黒羽燐ちゃんね。おっ、出てきた」
私は一人大学の講義中にスマホで彼女を検索した。
するといきなりヒットした。
「うわあ凄い有名人。ラノベ作家なんだ」
私は彼女のSNSを調べる。
本名で作家活動をしているから分かりやすかった。
「ふーん。別に怪しい所はなさそうだね。どうしようかな」
「何がどうしようなんだ?」
「久遠ちゃんには関係ないよ」
「講義は真面目に聞け。単位を落とすぞ」
「分かってるよ。でも今忙しいんだ」
「全く愚か者が」
私の隣で講義を受けている女性は皇久遠。
皇グループの御令嬢である。
私の親友でもある。
銀色の綺麗な長い髪が特徴的な美人だ。
筋金入りの異性嫌いである。
異性の割合が多い工学部に入学する時もギリギリまで迷っていた。
それでも私と一緒ならと工学部に入学した。
「理系なんだから過去問だけじゃ対策できなくなるぞ」
「はいはーい」
私は久遠の言葉を右から左へと受け流しつつ、出雲君の中学時代を調べる。
「ねえ黒羽燐って知ってる?」
「ああ。有名なラノベ作家だろ。アニメ化も複数されてる。それがどうした?」
「彼女に会える方法ないかな」
「知らん。担当編集者にでもアポを取って取材という名目でぐらいしか会えないのではないか」
「私記者じゃないしね」
「一体さっきから何なんだお前は」
「いやあ私の妹の初音ちゃんいるでしょ。その彼氏がピンチでね。どうやら黒羽燐が関わっているらしいんだよね」
「初音に彼氏がいたのか!?」
「まあまだ付き合ってないんだけどね」
「それは彼氏とは言わないだろ」
あの二人の関係複雑なんだよね。
でも相性はいいと思うんだけどな。
まあ初音ちゃんがいらないなら私が貰うけどね。
「まあ何だ。事情は分かった。私も協力できることはしよう」
「ありがとうね久遠ちゃん」
「ふん。昼飯奢れ」
「はいはい」
私は出雲君と初音ちゃんの為に黒羽燐と会うため情報を収集する。
何か面白くなってきちゃったかも。
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