第十二話 白雪加恋
昨日白雪家で起こった出来事の顛末を語ろうではないか。
昨日――
「こればれたらお姉ちゃん不味いよね♪」
「け、消しなさい加恋。そんな悪戯やめなさい」
白雪初音が慌ててる。俺が見たこともない表情で焦り妹の白雪加恋とスマホの奪い合いをしている。
ていうか俺も見てる場合じゃないぞ。この写真消させないと。
一ファンとして白雪の評判が落ちることは絶対に避けなければならない。
例え俺がどうなろうと。
「写真消してくれないかな?」
「えー何でですか?」
「そりゃこんなことが万が一世間に流出したら白雪の立場が危うくなるからだよ」
「へえ~自分の保身の為じゃないんですね」
「俺はどうでもいいんだよ。大事なのは白雪の人生だ」
俺の言葉に意外な表情を見せる白雪加恋と頬を朱く染めている白雪初音。
俺は今本音で白雪加恋と話している。その思いが伝わったのかもしれない。
「じゃあ交換条件です」
「交換条件?」
「出雲さんの連絡先教えてくださーい」
「いい――」
俺が肯定の言葉を口に出そうとした時、白雪が俺の口を細い白い綺麗な両手で押さえてきた。体が密着して鼻腔をくすぐるいい匂いが俺の嗅覚を刺激する。
「駄目よ。加恋は何を企んでるか分からないわ。出雲君の連絡先は教えられないわ」
「じゃあお姉ちゃんと出雲さんのこの写真ネットにアップしちゃおっかなー♪」
「な!? やめなさい加恋」
「じゃあ出雲さんの連絡先教えて。お姉ちゃん、出雲さんのこんな画像が校内に出回ったら出雲さん学校退学になるかもよ。いいの?」
「うっ、そ、それは」
「よくないよね。じゃあ交換条件成立」
こうして俺は白雪加恋と連絡先を交換したのだった。
そして現在――
机に向かって柄でもなく数学の参考書を開いている。
今は日課のラノベを読む気にならなかった。
だから敢えて難しい参考書で現実逃避を繰り広げている。
我ながら駄目な奴だ。
『出雲さん私に勉強教えてください』
一通のGINEが俺のスマホに届く。
早速来たな小悪魔め。
『勉強できないの?』
『お姉ちゃんたちと違って勉強苦手なんですよ。特に数学が。だから教えてくださいよ。私来年高校受験ですよ』
『難しい高校狙ってるのか?』
『お姉ちゃんと同じ私立鳳桜学園を狙ってます』
『偏差値は?』
『60ないですね』
『教えないと駄目?』
『実は私お姉ちゃんのシャワーシーンの画像持ってて』
『分かった教える。だからそういうの消せ』
『冗談ですよ。興奮しましたか?』
くそこの小悪魔系女子め。
因みに白雪加恋は凄く美少女だ。
まあ白雪家なのだから当然なのだが。
黒髪の艶が入ったツインテール。黒く大きく輝く瞳、整った睫毛、くっきりした眉毛の形。鼻筋も通っていて高級シャンプーのようないい香りも放っている。制服もとても似合っており、絶対中学では人気があるだろう。胸は白雪初音よりやや劣る大きさだ。
『興奮してない。それよりいつだ?』
『教えてくれるんですね。じゃあ早速明日の放課後とかどうですか?』
『いいけど何処で勉強するんだ?』
『出雲さんのお家で』
マジか。でも白雪家よりはいいよな。
仕方ないここは要求を呑もう。
『俺の家の住所送るわ。絶対に秘密にしろよ』
『はーい。でもどうせなら一緒に帰りませんか? 私の中学と出雲さんの高校近いですよね』
『噂になるぞ』
『私は構いませんよ。出雲さん自己評価低すぎないですかwww』
『悪かったな低くて』
『じゃあ鳳桜学園の校門で待ってますね』
そう言ってチャットは終わった。
はあ~凄いストレスだ。
もう静かにオタクとして人生を謳歌させてくれ。
◇
その日の夜俺は自棄からか一週間ぶりの生配信を行った。
今回の題目は新作ラノベ感想会だ。
「で、以上が俺のおすすめ新作ラノベでした」
俺が新作ラノベを紹介する生配信を終えると、多数のコメントが寄せられた。
『凄い参考になりました。良かったです』
『絶対に買います。将来は作家も目指してます』
『チャンネル登録者百万人おめでとうございます。顔出しなしでこれは快挙ですね』
ああそう言えばチャンネル登録者百万人超えたっけ。全然意識してなかった。
ああ事務所に所属してないから確定申告自分でしなきゃ。面倒だな。
ていうかこのチャンネルも大きくなりすぎたよな。これ以上目立つのは避けるべきなのかな。
「ありがとうございます。じゃあまた次の動画や生配信で」
そう言って俺は生配信を終えた。
切り忘れてないか入念にチェックして。
「さてこの部屋どうするか」
俺の人生はどんどん波乱に満ちていく。
明日来ないで欲しいな。胃が痛い。
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