第十一話 白雪初音と二人きり
放課後白雪に旧校舎の教室に呼び出された。
理由は全く以て不明である。
まさかYUIさんとの事がばれたとか。
いやいやあり得ない。何せ俺は誰にもYUIさんの事喋ってないからな。
「遅いわよ出雲君。五分の遅刻よ」
またストップウォッチで測ってるのか。恐ろしい美少女である。
「遠いんだよこの指定された教室」
「仕方が無いでしょ。誰かに見られると不味いし」
「まあそうだけど」
まあ確かに誰かに見られるのは不味いよな。
特に陰キャの俺なんかと一緒に居るのを目撃されるのは。
「それで何の用件だよ」
「今から私の家に来れる?」
「は!? 何故?」
「露骨に嫌そうにするわね。まさか浮気?」
「何でも浮気に結び付けるな。それに嫌ではない。ただ驚いただけだ」
「なら早速行きましょう」
「いやまだいいとは――」
俺の言葉を遮るように怖い笑顔で白雪は俺を脅す。
俺は渋々頷き白雪の家に行く。
はあ~今日は帰ってゲームしたいのに。
◇
俺は白雪初音に連れられ白雪家にお邪魔する。
どうやら高層マンションに暮らしているようだ。
家賃高そうだな。完全オートロック式だし。
「出雲君見せたいものがあるの」
「見せたいもの?」
そう言って俺をリビングで待たせて白雪は何処かへ行ってしまう。
大型テレビに高価そうなテーブル、豪華なソファ、観葉植物などTHE金持ちって感じの部屋だな。
まあ俺の家も一般家庭と比較したら遥かに大きいけど。
「お待たせ、どうかしら?」
「それって!?」
白雪が次のライブ用の衣装を着て俺の前に恥ずかしがりながら立つ。
透明感のある真っ白い魔法少女リルカのワンポイントデザインが入ったTシャツ。
そしてフリフリのピンク色の短いスカート。星の飾りが付いている。
正直凄く似合っていた。俺の心臓が高鳴る。
「ど、どうかしら」
白雪は頬を朱く染めながら聞いてくる。
凄い可愛いな。普段のクールな白雪初音からは想像できない。
俺だけが見れる特別ステージだ。
「凄い似合ってる。俺ライブ申し込みしたし。ま、まあ当選するかは分からないけど」
「それなら平気よ。私のコネで当選させてあげるから」
「いやそれは不味いだろ。他のファンに申し訳ない」
「真正面の席にするわね」
「人の話聞いてる白雪?」
「似合ってると言ってくれて嬉しいわ。流石私の旦那さんね。本当はこの衣装は出雲君だけに見せたいわ。でも仕事だから仕方が無いの」
駄目だこいつ全然話聞いてない。
まあいいか。ライブは見たいし。
「これを見せるために今日家に呼んだのか?」
「そ、それもあるけど……」
白雪が凄く頬を朱く染めてモジモジと可愛らしい仕草を目の前でしている。
正直今すぐ抱きしめたいぐらいだ。
まあしないんだが。そんな勇気ないしな。
それにやっぱり外側から応援したい。
「そろそろ夫婦としてき、キスぐらいは」
「え!? は!? はあああああああああああああ!」
俺は驚きの余り声を大にしてしまった。このマンション防音だろうか、大丈夫だろうか。
「だ、だってお嫁さんと旦那さんならキス位普通なんでしょ?」
白雪は俺に上目遣いで瞳を麗し輝かせながら聞いてくる。
正直ずるいぞ、こんな美少女に上目遣いされて断れる奴はいない。
だがそれでも俺は――
「先ず俺と白雪は夫婦ではない。そして恋人ですらない。一人気アイドル声優と一ファンだ」
「まだそれを言うのね」
俺の言葉にキリっとした瞳を向けてくる。どうやら怒っているようだ。
「あの日約束したじゃない」
「もしかして俺の生配信が関係してるとか?」
「そ、そうよ。お、思い出したのね」
俺の生配信という言葉に嬉しさを隠せないのか、俺に抱き着いてくる。
そしてソファーに二人して倒れ込んだ。
「し、白雪。ち、ちょっと待て。まだ思い出せてない」
「そ、そう。で、でも少しずつ思い出せたのね」
「ま、まあな」
顔が近い。俺が仰向けで下になっている。
そして白雪が俺に乗っかる形で覆いかぶさっている。
やばい理性が保てなさそう。
「い、出雲君」
「し、白雪」
二人の唇が重なろうかとした時、後ろから誰かの視線と声が聞こえた。
「何してるのお姉ちゃん?」
「え!?」
「こんな誰もいない時に男連れ込んで、し、しかもリビングで」
いや誤解なんですが。勝手に押し倒されたんですけど。
白雪反論を頼む。
「彼は男ではなくて旦那様よ」
駄目だこいつ頭がショートしてる。
頬を真っ赤に染め上げながら、白雪は自身の妹に言う。
「ていうかそれが噂の猫屋敷出雲君?」
「そ、そうよ。加恋には渡さないわよ」
「ふーん、いい事思いついた」
「え!?」
妹の白雪加恋がスマホで俺達の事を写真にとる。
いやいや何やってるんですか妹さん。
「こればれたら不味いよねお姉ちゃん♪」
そう言って俺達を脅す小悪魔系女子白雪加恋。
もうやだこの家族。怖すぎる。
ていうかどいてくれる白雪さん。
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