第十話 フレンド申請

 中間テストが始まった。

 そして三日間に及ぶ死闘の末俺は赤点に大きく勝利した。

 結果は平均点越え。もう満足だ。

 

 「猫屋敷どうだった?」

 「平均点は超えたかな。まあ満点ではないけど」

 「おおやったじゃん。因みに俺も満点じゃない」

 「へえ~意外だな」

 「俺は完璧超人じゃないぞ」


 住沢は完璧超人にどうしても見えてしまう。

 俺が見てきた住沢晴彦とはそういう人物だったからだ。


 「晴彦、猫屋敷君どうだった?」

 「平均点は超えたぞ。泉こそどうなんだ?」

 「うっ。ま、まあ赤点は回避できたよ、赤点は」

 「その顔ギリギリだな」

 「ま、まあね。でもいいの赤点さえ回避できれば」


 いや良くないだろ。今のうちから基礎固めておかないと大学受験で後悔するだろ。推薦だって評定が大きく関わるんだし。


 「因みに初音ちゃんはほぼ満点だよ」

 「泉が何で自慢げなんだ」

 「うっ、痛い所を突くね猫屋敷君」

 「いや、ごめん。だけどつい突っ込んでしまって」

 「いやいいよ。私そういうノリ好きだし、大歓迎」

 「そ、そうか」


 どうやら泉は意外とノリがいいらしい。

 こんな陰キャな俺の突っ込みも大歓迎なようだ。

 それにしても白雪、声優活動で忙しいだろうにほぼ満点は凄いな。勉強会でも教える側だったしな。流石大人気声優アイドル。

 白雪が俺をチラチラ見てくるがここでは褒めては上げられない。

 いや褒める理由なんてないのだが。

 

 そして俺は無事に中間テストを終えた。

 はあ~赤点なくて良かった。


             ◇

「あれ、フレンド申請来てる」


俺は中間テストを終えてスマホでゲームをしていた。

今流行りのMMORPGレッドタートル。

巨大な赤い亀の上がマップになっている新作MMORPGだ。

制作会社はレディアントと呼ばれる巨大企業だ。


「承認っと」


俺がフレンド申請を許可して承認する。

すると早速相手側から一件の新着メッセージが飛んできた。


『初めましてダークキャットさん。YUIです。宜しくお願いします』

 『此方こそ宜しくお願いしますYUIさん』

  

 俺はフレンド申請してきた相手と挨拶を交わす。

 因みに俺のネトゲでのユーザーネームはダークキャット。

 我ながら中二病かと思われるが、当時は余りいい名前を思いつかなかったのだ。

 因みに由来は猫屋敷の猫を英語にして、その前に偶々好きなアニメの主人公の名前がダークインだったのでダークを借りた。

 生配信のユーザーネームと同じだが身バレする事は無いだろう。


 『ダークキャットさん、早速なんですけど一緒に狩りしませんか?』

 『いいですよ。何処のエリア向かいます?』

 『最初の町から近い狩場でお願いします』

 『分かりました。じゃあ最初の町の巨大な泉の前で待ち合わせしましょうか』

 『はい』


 こうして俺ことダークキャットとYUIさんはMMORPGレッドタートルを楽しむことに。因みに白雪が見たら絶対浮気だと思うよな。言わないでおこう。


 その後モンスターを沢山狩ってレベルを上げた。

 装備も整えて強くなった。


 『あの今日はありがとうございました。もしよろしければまた一緒に遊びませんか?』

 『いいですよ』

 『じゃあメールアドレス教えますね。後ウイッターも』

 『え、ああうん』


 今日会っていきなりメールアドレスとウイッターを教えるのは不味いのではないだろうか。まだ完全に信頼できる関係ではないのに。

 これは俺が陰キャだから考えてしまう事なのだろうか。


 『じゃあまた』

 『あ、ああうん』


 俺はこうして顔も名前も知らないYUIのメールアドレスとウイッターを手に入れた。

 そんな時少しだけ生配信の過去を思い出す。


 『君の声は素晴らしいと思うよ。声優とかいいんじゃないかな』

 『ほ、本当に? 私なんかが』

 『自信もっていいと思うけど。俺はそれで救われた』

 『じゃあ私――』


 あれ? 中学の頃誰かの人生相談乗ってたよな。

 誰のだっけ?


 「まあいいか」


 俺はベッドに寝転がりながらスマホを弄る。

 早速YUIさんからメールが届いていた。


 『ダークキャットさん。私のウイッター見てくれましたか?』

 『いやまだだけど』

 『是非見ておいてくださいね。それからゲームするときはDM宜しくお願いします』

 『あ、ああうん』


 はあ~仕方ない。YUIさんのウイッター見てみるか。

 そして俺はYUIさんのウイッターを見て驚愕した。


 「V、VTuberだと!?」


 俺の人生はここから更に波乱の幕開けが行われる。

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