第三話 新たな繋がり

 今日は休日なので休みだ。そう言えばもう少しで中間テストだっけ。

 勉強しないとな。俺が机に向かうとスマホが鳴り始める。

 

 「また悪夢が」


 そんな事を呟きながら俺はスマホを恐る恐る開く。

 しかしそこには予想外な人物からのメッセージだった。


 『これ猫屋敷君のウィッターでいいのかな?』

 

 え、誰? 何で俺の本名知って!?

 俺はDMを送って来たユーザーアカウントを調べる。

 すると何とその人物は声優だった。


 「本物の声優だ。まだデビューしたての若手だけど本物だ」


 俺は驚きと感激のあまり少しの時間フリーズする。

 しかし何故有名人が一般人にDMを?


 『合ってますが何のご用件でしょうか?』


 よしこれでいい。緊張して文字を打つのに数分かかったぞ。

 しかしニックネームでウイッターやってるのに、何故俺の本名を知っている?

 少し怖いんだが。いや少しどころかかなり怖い。


 『私立鳳桜学園の一年A組だよね?』


 怖すぎる。もしかしてストーカーされてる?

 いやいや俺なんかにストーカーする女子、しかも声優が居る筈がない。


 『何で本名と学校名を知って?』

 『初音ちゃんから聞いたんだ。このウイッター猫屋敷君のアカウントだって』


 白雪が!? 待て、何故俺のウイッターを知っている。

 アカウントなど教えた事一度もなかったが。

 あいつどこまで俺の情報握って。


 『それで用件は?』

 『うんとね実は私も同じ高校なの知ってる?』

 

 マジで!? それは知らなかった。

 声優については結構詳しいが、流石にデビューしたての子までは把握してなかった。


 『知らなかった。本名で活動してるの?』

 『うーんとね本名だよ。名前は桜坂凛。初音ちゃんとは中学生時代からの友達で、一緒に声優目指してた仲なんだ。まあ初音ちゃんの方がデビュー早かったけどねww』

 

 桜坂凛か。全然覚えがない。

 ていうか基本俺は熱中してるもの以外に全く興味が無い。

 クラスメイトの名前すら半数以上覚えてない。


 『それで桜坂さん。俺に一体何の用ですか?』

 『単刀直入に言うね。初音ちゃんと結婚予定なんだよね?』

 

 はい!? 何を言っているんだこの子。

 まさか白雪が吹聴したのか?

 あいつまさか他のクラスメイトにも言ってないよな?

 まあ流石に恋愛NGの事務所に所属してるんだから、言ってはないとは思うけど。

 親しい人には言っているとか? めっちゃ困るんだが。


 『いや違うよ。誰から聞いたの?』

 『え!? 違うの。初音ちゃんからどや顔で聞かされたんだけど』

 『違う。大体高校生で結婚予定なんてあり得る訳ねえだろ。どこの少女漫画だよ』

 『じゃあ初音ちゃんが嘘ついてるってこと?』

 『嘘っていうか一方的に好意を持たれてる。恐ろしいくらいの好意を』

 『じゃあ付き合ってはいるよね?』

 『いないよ。だから俺は白雪初音のファンであって、恋愛対象としては見てないからな』


 やばい。何かどんどん誤解されたまま話が広がって言ってる気がする。

 ちゃんとしっかり白雪に断らないとやばい。


 『じゃあ今すぐ初音ちゃんと付き合って。お願い』

 『いやいや事務所的にも恋愛NGなんだよね』

 『そうだけど、初音ちゃんがあんなに笑顔になるのは猫屋敷君との時だけなの』

 

 そうなのか。それは知らなかった。

 いつも楽しそうにクラスメイトと話してるけどな。

 声優活動でも充実してるって雑誌のインタビューに答えてたけど。


 『猫屋敷君は初音ちゃんの事嫌いなの?』

 『いや嫌いじゃない。寧ろ好きだ』

 『だよね、だったら――』

 『だがそれは一ファンとしてであって。一人の人間として好きかと言われると答えようがない』


 俺がそう答えると、桜坂凛は数分間チャットを寄越さなくなった。

 機嫌を損ねてしまっただろうか。

 しかし事実なんだから仕方が無い。ここで変に自分に嘘を付いて答えるより余程紳士的だろう。


 『取り敢えず連絡先教えて。私と猫屋敷君で初音ちゃんの事を話し合う必要があるから』

 『嫌だと言ったら?』

 『初音ちゃんから聞くもん』

 『どっちにしろ連絡先知られるじゃねえか』

 『じゃあ観念して』

 『はい』


 俺はこうして二人目の有名人と連絡先を交換した。

 はあ~俺はただオタクでいたいだけなのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る