第43話 エピソードオブ翔
翔達は何をしているのでしょうか?
詐欺紛いのくじ屋は体育教師の活躍により撲滅され、仕方なく靴磨き屋をやる事になっていました。
「 おいっ! しっかり磨けよ!
この靴高いんだからな? 」
ブランドに身を包んだ男が翔のお店で靴を磨かせていました。
土や泥で汚れた靴を専用の溶剤とかでピカピカに磨かされていました。
一人約30分前後。 とても地味でハードな仕事。
一回500円…… ご覧の通り割に合いません。
そして成金達の勘違いの罵声の数々…… 。
( 嘗めてんじゃねぇーー よ…… 。
ぶん殴りてぇ…… ぶん殴りてぇ…… 。 )
「 はい…… 。
しっかりやらせて頂きます…… 。 」
学年主任達にしごかれて、この文化祭しっかりやらなければ赤点の補修も行って貰えない事になっていました。
なので逆らう事が出来ずにペコペコするのでした。
仕事とは凄く大変な事です。
交代制にしても意外にも人気で、体力の減りが酷くて肩や首こり、腰の痛みが止まりません。
素人なのでこの仕事がとても辛かったのです。
自分達の体はなれない作業でこりまくりでした。
「 ちょっと休憩するわ。 」
一人翔は休憩して飲み物飲みながら、原っぱに寝転がりました。
「 つまんねぇ…… 本当につまん…… 。
そうだ…… そうだったな。 」
何かを思い出しました。
そしてニヤニヤと薄気味悪く笑う。
「 そうだった。 あいつの店…… 。
めちゃくちゃにしてやる…… 。
あいつが来てから全部おかしくなったんだ。
麗美にはフラれるし、屋台の仕事も最低だし。
目にもの見せてくれるわ! 」
翔はポケットから薬を取り出す。
下剤でした。
明日香への復讐劇。
この下剤をたこ焼きの種に入れたら、お客さんが大変な事になりお店どころではありません。
翔は復讐のタイミングをここに絞っていました。
そして静かに歩き出す…… 。
翔はたこ焼き屋に着くと、凄い行列になっていました。
沢山の人に驚いてしまう。
そしてゆっくりと調理場へ近付く。
音弥とトッシーが疲れて飲み物飲みながら座っている。
調理途中の種が見つかりました。
( ウッシッシ! 甘いのぉ〜 。
甘くて糖尿病になっちまうくらいにな。 )
「 絶対にもう人をいじめたりしないで? 」
麗美との別れの言葉を思い出す。
その言葉と顔が焼き付いて離れなくなっていた。
( うれせぇ…… うるせぇ…… 。
止まんないんだよ。 イライラして。
あいつみたいな偽善者。
見てると腹立つんだよ!! )
翔は腹がたって仕方なくなっていました。
全ての苛立ちを明日香へぶつけようとしていました。
「 翔くん? たこ焼き食べに来たの? 」
明日香が翔を見つけてしまう。
( やべっ! 見つかった…… 。 )
翔は明日香に見つかり放心状態に。
「 待っててね。 今持ってくるから! 」
明日香は直ぐにたこ焼きを持って来ました。
翔は何をしているのか良く分かりませんでした。
「 はい! これ凄い美味しいんだよ。
お金は大丈夫。 来てくれてありがとう。 」
明日香は焼きたてのたこ焼きを渡して直ぐに店へ戻りました。
翔は何も話せませんでした。
「 …… なんだこれ? 」
翔は明日香が何故自分なんかにたこ焼きをくれたのか分かりませんでした。
「 翔。 もう良いんじゃねぇの?
こんなつまんないことすんの。 」
音弥がゆっくり歩いてきました。
音弥は翔に気付いていたのです。
「 音弥…… あいつ。
何なんだよ!? すげぇーいじめたんだぞ?
何日も何日も。 すげぇ勢いでな!
なのに…… 何であいつ…… 。 」
翔は自分の仲間以外に優しくされたことはありません。
力で全て手に入れて来ました。
嫌う者は多かったのです。
周りを全て敵に回して力でねじ伏せて来ました。
仲間が増えて気分が良かった…… 。
一人ではなくなったからです。
「 あいつは騙され上手なんだわ。
直ぐに騙されちゃうんだ。 」
音弥はそう言いながら笑う。
「 はぁ? 何言ってんだか。
お前みたいにヘラヘラすんの嫌なんだよ。
ガキかっての…… 。 」
翔は音弥の話が良く分からなかったのです。
「 あいつはお前の事も許そうとしてるぞ?
今はまだまだ怖がってるけどな。 」
翔はその言葉にびっくりする。
「 俺は、俺は反省なんてしてねぇぞ?
何で謝ってないのに許そうとしてんだよ?
なぁ? あんな偽善者…… 。 」
翔は怒りを音弥にぶつけました。
当たる場所が分からなくなっていたからです。
「 あいつは前の学校のときからいじめられてたのって知ってるか?
それで転校してきたの知ってるか? 」
翔は初耳で衝撃が起こる。
まさか前でもいじめられていて、ここに来てからも自分がいじめていたのだから。
「 あいつは友達が欲しかったんだ。
あいつん家にさぁ。 すげぇーゲームとかボードゲームとかあんだぜ?
いつ友達が来ても良いようにって買ってたんだってさ!
弟から聞いたんだ。 」
翔はその苦しみが少し分かりました。
孤独は誰でも怖いのは当然です。
「 あいつは言ってたんだ…… 。 」
ある日の放課後…… 。
「 翔くんって凄い怖いよね…… 。
でもいつかは友達になりたいなぁ!
おっきくてみんなに慕われていて。
本当は凄い良い人なんだよ! 」
明日香はそう言いながら笑っていました。
ずっと一人で居たので友達に憧れていました。
「 あっはっはっは!!
本当に明日香はおもしれーーなっ。 」
音弥は凄い笑いました。
恨んで当然なのに友達になりたいなんて、普通はそんな事思う人はほとんど居ません。
音弥は明日香の事がもっと好きになっていました。
音弥はそんな明日香だからこそ、力になりたくて変わろうと思ったのかも知れません。
その話を翔に話しました。
翔は話を聞いてから黙って帰りました。
その言葉をどう受け止めたのか?
音弥には分かりませんでした。
ですが翔には少しだけ思いが届いた気がしました。
友達だったからなんとなく分かるのです。
田舎だからずっと一緒だった幼なじみなのだから。
一人になり少し考えました。
自分がもしいじめられたら?
転校していじめられたら?
ケンカが強いので力でねじ伏せればいい。
翔には妹が居る。
三年生の妹がもし同じ立場にだったら?
妹の事を思い、心が痛むであろう。
( そんな理由で転校してきたのかよ…… 。
ならそう言えよ…… 。
そんなんだったらしてねぇよ。 )
翔は後悔しました。
自分の数々のしてきた過ちを、思い出せば思い出すほどに深く落ち込みました。
謝るのは恥ずかしいし絶対にしたくない…… 。
番長のメンツにも関わってきます。
ならどうすれば良いのか?
草むらの上で寝転がりながら一人虚しく考えました。
「 おい! またあぶらうってんな?
本当にしょうもないやつだなぁ。 」
体育教師が竹刀を持って近寄って来ました。
こんな不細工な大木のような男でも、一人で考えるよりマシかな?
と思い、心の内を話しました。
明日香の事ややってきた事を全て…… 。
そして優しくされて罪悪感が凄かった事も。
「 って訳だよ。 んでも謝りたくないんだ。
恥ずかしいから…… 今更だし。
謝るのあんまし上手くないしな。 」
先生は脳まで筋肉で出来ていますが、わずかに残っている脳をフル回転させて答えを出す。
「 本当にお前って奴は…… 。
おめぇの店の仕事一生懸命やれ! 」
翔は全く答えになってなくて腹立ってしまう。
「 ざけんな! 答えになってねぇぞ?
俺が聞きてぇーのは。 」
「 何にも行動してねぇ奴が許されるかよ。
まずは与えられている仕事をこなせ!
おめぇみてぇなバカは頭使うんじゃねぇ!
行動で示せ! もう違うんだってな。 」
先生がそう言うとその通りだと思いました。
自己満足かもしれませんが、自分にはその道しか思いつきませんでした。
「 サンキュー…… 先生。 」
そう言い残し店に戻りました。
先生は少し照れ臭くなっていました。
「 ったくよ。 だから悪ガキも可愛いんだよな。
っしゃーー 。 見回りにでも行くかな。 」
先生も照れ隠しの為、仕事に戻って行きました。
翔はその後に靴磨きを頑張りました。
みんなが休憩しているときも、次々と磨きました。
そして仕事合間にたこ焼きを食べました。
「 …… うめぇな。 本当に…… 。
後で何かお礼ぐらい持ってこうかな? 」
少し冷めてもたこ焼きは、翔にとってもの凄く美味しかったのでした。
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