第37話 文化祭開催!


遂に待ちに待った文化祭の日。

周りには高校があまりなく、ここら辺の人達はお祭りのような感覚で、子供から大人からおじいちゃんおばあちゃんまで来てくれる。

なのでこの文化祭は盛大に行われるのです。

朝から花火を打ち上げて音で、今日文化祭がやると言う事を伝える。

その日まで忘れていた人も、その音で思い出して来る人も多い。


大まかな説明をすると、基本屋台や出し物をやりつつ後半には、目玉の歌姫決定戦が行われる。

かつての歌姫様達も見に来るくらいの、盛り上がりを魅せる大会なのです。

明日香もエントリー済みですが、麗美もエントリーしていました。

梨香と早織も。 三人はカラオケで鍛え上げた歌声を披露するには最高の舞台。

恐ろしいライバル達…… 。


そして特に恐ろしいのは、三年生の合唱部の

「 シャーロット・峯島。 」

ふざけている訳ではありません。

フランスと日本のハーフさん。

中学までは本場フランスで生活し、日本人の旦那さんの仕事の都合で日本で暮らす事に。

ブロンドで青い瞳をした彼女は、歌声だけではなく見た目でも魅了してしまうくらいに凄い…… 。

優勝間違いなしのプレイヤーである。


まだ大会までは時間もあり、音弥は大会までに三階にあるオルガンを一階の体育館に移動させる事に。

明日香だけは音弥の演奏で歌を披露するので、少し手間と労力がかかってしまいます。

優勝する為なら仕方ない事ですが。


朝早くから屋台の準備をして、明日香達は無事にたこ焼き屋が開けそうでした。

たこ焼きは簡単そうに見えますが、逆に辛い部分もあるのです。

それはみんなたこ焼きが好きだと言う事です。

たこ焼きが好きで普段美味しいお店とかで食べていれば、舌も肥えてしまい屋台のたこ焼きを食べてくれなかったり、自称ミシュラン気取りのレビューマン達に、「 文化祭ならこの程度か。 」

なんてTwitterなどで呟かれてしまう…… 。

そうならない為にも、毎日。 毎日練習したのでした。

さぁ。 どうなるでしょうか?


ガステーブルと鉄板の準備が終わり、全ての鉄板で焼けば同時に50個も焼く事が出来る。

焼くのは男のお仕事。

トッシーと音弥の通算500個以上費やした腕前を披露する時が来たのです。

トッシー何かは動画とかで勉強し過ぎて、夢にまで出るくらい頭に焼き付けてきました。


明日香と麻衣ちゃんは大量に用意された材料を、直ぐに出せるように調理する係。

タコさんもお客さんが来るのを楽しみにしているでしょう。

ガステーブルは熊さんの知り合いから借りてもらい、かなり本格的なたこ焼きを作る事が出来ます。

熊さんに色々技術を教えてもらったので、多分上手くいく事間違いなし!

熊さんも後でお客さんとして来る予定です。


麗美も朝からガスコンロと鉄板を準備して、いつでも作れるようにスタンバイ。

材料も多めに切り、出来るだけ目立つようにして待つのみ。

周りを見てみると旗や看板の装飾がされていて、麗美の店より目立つようになっていました。

人員が足りていれば作っていたのですが、そこまでの時間がなかったのです。

この周りとの差は何処まで影響するのでしょうか?


文化祭が始まり、一般の人達が学校へ入って来ました。

明日香はエプロンにバンダナをしながらその光景を見て驚きました。

その人数は計りきれない程に…… 。

子連れのお母さんや暇過ぎて遊びに来たおじいちゃん。

入って来るなり散策を開始する。

一番目立っていたお店の7色わたあめ屋があっという間に列が出来ました。

三年生のお店は掴みも取れていて完璧!


明日香達はじわじわと作戦通りにたこ焼きを焼き始めました。

出来上がると特製ソースをかける…… 。

その匂いは学校内に広がっていきます。


「 出来たですよぉ〜 。

たこ焼きはいかがですか?? 」


明日香が声を出して呼び込みをします。

麻衣ちゃんも負けずに大きな声で。


「 いらっしゃい、いらっしゃい!

大きなタコが入ったたこ焼きですよ。

八個入って400円です。 」


匂いとそのかけ声により、食いしん坊達が一気に振り返る!


「 美味しそうね。 一つ買おうかしら? 」

「 ママぁ。 たこ焼き買ってぇ?? 」

「 たこ焼きの匂いってつい、買っちゃうのよね。」

「 学生のたこ焼きなんてたかが知れてるけど、一応食べておくかね。 」


あらゆる人達の目に止まり、たこ焼き屋の前に列が出来る。


「 たこ焼き下さいな! 」


一人の少年が最初のお客さん。


「 はい。 400円もらうね!

ありがとう。 熱いから気をつけてね? 」


明日香が少年に熱々のたこ焼きを渡して、少年は近くのベンチに座り直ぐに食べようとしている。


( 凄い緊張するなぁ…… 。

美味しいかな? 火傷しないかな? )


明日香はドキドキしながら見守る事に。


パクっ!! フーフーッ。

もぐもぐ…… 。


「 このたこ焼きうんめぇーーっ!

母ちゃんから貰った小遣いまだあるから、もっと買おうっと!

本当にうめぇなぁ!! 」


その少年は美味しそうに口の周りをソースだらけにしながら食べまくる。

その様子を見て明日香達は。


「 やったね! 」


明日香と麻衣ちゃんは嬉しくてハイタッチをする。


パチンッ!! 二人はニッコリと笑いながら努力が報われて一安心。

音弥とトッシーも追加のたこ焼きを焼きながら、静かにガッツポーズをする。

二人、三人とどんどんたこ焼きが売れていく。

近くで食べるお客さん達は、美味しそうにみんな笑顔になっていました。

明日香は飲食業で働く楽しさが少し分かった瞬間でした。


すると眼鏡をかけた中年の男性が来る。

いかにも食べ歩きが大好きそうな男性でした。

リュックサックに片手にはグルメ雑誌。

その男性を見た麻衣ちゃんはびっくりする。


「 あーーっ! あなたは岩手の食べ歩きの神。

食べ歩キングだ!!

Twitterや動画とかの人気の人だ。」


直ぐにその麻衣ちゃんの指摘に周りがざわつき始めました。


「 おいおい。 あまり騒がないでおくれよ?

仕方ないなぁ…… 食べ歩…… キングっ!! 」


格好つけながらポーズを決める。

周りからは歓声が起きる。


「 麻衣ちゃん知ってるの? 」


明日香は全く知らない。

明日香は情報や流行には滅法弱い。


「 凄い人気なんだよ?

神の舌だとか言ったりとか、俺を唸らせる奴は居ないのか?

とか言ってるけど、食べ歩きしてるだけで凄い偉そうなのよね。

それで副業とかにしてお金稼いでるの。

ただのタレント気取りって感じ! 」


凄い毒舌に麻衣ちゃんは説明してくれました。


「 おぉーーいっ! 聞こえてんぞ!

タレント気取りとは失礼だね。

こんな文化祭の屋台なんて食べるに値しないけど、仕方なく動画のネタにしてやろうと思ってな。

なぁ? カメラマン森山? 」


そう言うとカメラマン森山を明日香達は発見する。

本当にタレント気取りしているように見えました。


「 そんな事どうでも良いんですけど、たこ焼き買うんですか?

買わないんですか? 」


グサッ!! 食べ歩キングの胸に何かが突き刺さる。


「 おっ…… そうだったね。

一つ頂こうかね。 」


恥ずかしながら一つ注文する。

明日香は直ぐに出来立てのたこ焼きを手渡しました。

たこ焼きを持って足を組みながらベンチに座る。

周りの目は食べ歩キングに釘付け。

そしてカメラを回しながら食べようとする。


「 どーーもーー! 食べ歩キングでぇ〜す。

今日は小さな文化祭に来ているぜ!

庶民的なたこ焼きの屋台があったから、今から点数つけてくぜ?

いただきマウス。 チューーッ!! 」


動画を録り始めるとテンションが変わり、ハイテンションでレビューしていく。

あまり裏側と言うのは見たくないものだ…… 。

しかも謎のテンションの高さに少し寒い。


( さっきはあの女…… 良くも恥かかせてくれたな?

目にもの見せてくれるわ。 )


何やら良からぬ事を考えている…… 。


「 もぐもぐ…… これは…… 。

ドッグフードの味ぃ〜〜っ!! 」


周りのお客さんはその評価にびっくりしてしまう。

明日香達もその評価を聞いて驚愕する。

どうなる? たこ焼き屋!?

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