第33話 文化祭まで後二週間…… 。


あっという間に秋が訪れる。

クラスではいじめが収まり、静かな学校生活が訪れていました。

明日香は相変わらず友達は、音弥と麻衣ちゃんとトッシー。

一度溝が出来ると周りとは上手く仲良くなれませんでした。

相手も同じ気持ちでした。

いじめっこ達も消化不良になっていましたが、やめてみると以外に普通に過ごせていました。

ごく一部を除いては…… 。


「 転校生…… あいつさえいなけりゃ。

麗美とは距離を置こうと言われ、俺はどうすりゃいいのか分からん…… 。

後少しで文化祭かぁ。

何かやってやろうかな? 」


翔はまた悪巧みしていました。


少し変わった事は…… 麗美が一人ぼっちになっている事でした。

前のグループから抜けて、一人で居る事が多くなりました。

明日香が誘っても簡単には来ません。

明日香への申し訳なさや、あっちが嫌になったから次はこっちに! 何て簡単には出来なかったのです。

麗美は一人静かに本を読む事が多くなりました。

明日香はどうしてもほっとけなくて、彼女を見続けてしまうのでした。


田舎の文化祭はしょうもないくらい小さなもん。

いえ! その逆です。

近くの人達が沢山押し寄せて来ます。

おじいちゃんからおばあちゃん。

小さな坊やから可愛い反抗期のお嬢さんまで。

幅広い年代で賑わうのです。

文化祭はお祭りと言っても良い程の規模になるとの事。

明日香は今からドキドキしていました。


明日香達は屋台でたこ焼きを売る事に。

毎日放課後はお客さんの舌を唸らせる為に、日々鍛錬するのみ!

梨香と早織達はオシャレなメイド喫茶を開きます。


麗美はと言うと…… 一人クレープ屋を開きます。

麗美は孤独になっていましたが、葵との約束で文化祭を頑張る。 と約束したので、来ないと思いますが来ても大丈夫なように一生懸命放課後に、家庭科室で一人練習していました。


ガシャッ!!


「 またこぼした…… 。

焼いても焦げちゃうし、もちもちに出来ないよ。

はぁ〜 …… どうすんだか。 」


麗美は顔が小麦粉だらけになりながら、上手くいかなくなっていました。

そこへ…… 。


「 おい! まだ意地張ってんのかよ。 」


音弥が心配で来てくれました。


「 うっさいわね。 出来てるから引っ込ん出て。 」


音弥はお皿に出来てあったクレープを食べる。


「 これは出来てるとは……

ちょっと言いにくいわよね? 」


焦げ焦げのパサパサクレープを食べて、ちょっと皮肉を言いました。

麗美は当然の反応にため息をつく。

それでもまた生地をかき混ぜる。


「 んな別に無理する必要ないんじゃないか?

一人で抱え込み過ぎんなよ。 」


かき混ぜるのを止めて、音弥に自分の怒りをぶつける。


「 はぁ? 何言ってんのよ。

こんな風にしたのは自分のせいだから。

あんたには本当に関係ないわ。

ほっといてよ。 」


そう言いながらまた、ゆっくりとかき混ぜ始めました。

材料のゴミや汚れたお皿を見ると、直ぐに頑張ってやっている事が分かりました。


「 んじゃあ、俺の料理の先生紹介してやるよ。

文化祭に間に合わせたいんだろ? 」


麗美も上手く出来ない訳にはいきません。

なのでその言葉に甘えて、音弥と一緒に料理の先生の所へ向かいました。

学校からしばらく歩き、まだ着きません。

少し汗をかきつつもクレープの為を思えば、こんな距離へっちゃらでした。


「 ねぇ。 あんたの料理の先生て誰なのよ?

熊とか言う大男じゃないでしょうね?

怖い奴は嫌だかんね。 」


そのまま歩いていると、少し見に覚えのある道を進んでいました。

そしてその予感は的中してしまう。


…… 明日香の家でした。

直ぐに麗美は帰ろうとする。


「 ちょい待てよ。

明日香のお母さんに頼んだんよ。

もう待ってんだわ。 」


必死に止めると麗美は嫌がる。

いじめた相手の親に会うのはかなり気まずいものです。


「 頼めるはずないでしょ?

私いじめてんだよ?

どんな顔して会えば…… 。 」


そこへ?


「 音弥君遅いわよ。

麗美さんいらっしゃい。

さぁ! 入って。 入って。 」


明日香のお母さんが玄関で待っていて、ここで帰ると気まずいので入るしかありませんでした。

中に入りリビングのソファに腰をかける。

明日香ママは飲み物を用意しに台所へ。


「 ねぇ? 何でメガネちゃんの親と仲良いのよ?

普通は友達の親と仲良くなるなんて変わってるわよ。」


麗美は音弥の明日香ママとの仲良さに、不思議そうな顔で見るのでした。


「 ん? ママさんは優しいんよ。

明日香そっくりでね。

連絡先も交換してるし、今度服一緒に買いに行くんだわ。 」


これは仲良くなりすぎでした。

明日香ママが紅茶を持ってきてくれました。

二人はクッキーと一緒にいただく事に。


「 もぐもぐ…… うまいっ!!

ママさん。 このクッキーは手作りですか? 」


音弥は明日香ママのクッキーを絶賛して食べまくる。

紅茶も匂いも最高で癒される。


「 分かる? 頑張ったのよ。

麗美さんは食べないの?

もしかしてクッキーは嫌いかしら? 」


「 いいえ…… 全然大好きです。

いただきます。 もぐもぐ…… 。

…… 美味しい。 」


麗美は高級なクッキーや流行りのスイーツは網羅している。

この中でもクッキーは凄くこだわりが強い。

お世辞抜きでこのクッキーはサクサクで、チョコチップがアクセントになりとても美味しい。

店で売っていたら箱で買いたいくらいに。

そう思ってしまう麗美。


「 喜んでもらえて良かったぁ。

口に合うか心配だったのよ。 」


明日香ママは一安心して落ち着きました。

すると階段をかけ降りて来るチビ恐竜の足音が聞こえてくる。


ガタガタ! ドンドンドンッ!!


「 お母さーーん。 クッキー焼いたの?

んん? お兄ちゃん! 良く来たね。

むむむっ!? お姉ちゃんも!

いらっしゃい! 僕に会いに来たのかな? 」


チビ恐竜海人の登場です。


「 おお! 来たな少年よ。

そうだよ。 海人と遊びに来たんだぞ。 」


「 わっはぁーーいっ!

僕の部屋に行こうよ。

お姉ちゃんに買って貰ったばかりの、歩け! 恐竜は直ぐそこだ! って図鑑があるんだ。

見よう見よう! 」


そう言いながら音弥の手を引っ張りました。

二人は直ぐに二階に行きました。


「 お姉ちゃんも早くね! 」


「 …… うん。 ちょっとしたらね。 」


麗美は今気がつきました。

明日香ママと二人きりになった事を…… 。

麗美は汗をかきながらソワソワしてしまう。


「 麗美さん。 少しずつ作りましょうか。 」


「 はい…… 。 宜しくお願いします。 」


台所に行き二人でクレープ作りに。

材料は麗美の調べた量で問題はないようです。

作る順番とスピードに問題があるようで、そこを重点的に直せば飛躍的にクレープの味と質が上昇するようでした。


「 こうやって空気を入れるようにして、早く力強くかき混ぜるのよ。 」


カチャカチャカチャカチャ!!


かき混ぜる音は料理人のようでした。

麗美は同じようにかき混ぜる。

それでもあの良い音にはなりません。

何度も何度もかき混ぜる。


「 お菓子作りってね、見た目と違ってハードなのよね。

その分出来た時の美味しさも段違いなのよ。

上手くなってきたわよ。 その調子! 」


優しく手取り足取り教えてくれる。

優しくされればされる程、罪悪感で心が締め付けられました。

麗美は隠し事が好きではありません。

勇気を振り絞り想いをぶつけました。


「 おばさん…… 優しくしてくれてありがとう。

でも…… どうして?

どうして優しくしてくれるんですか? 」


手を止めて麗美は訴えかけました。

少し明日香ママは考えました。


「 ん〜〜お菓子作り好きだから教えるの全然苦痛じゃないのよ。

気にしないで。 」


そう言いながら笑うと麗美は直ぐにまた問いかける。


「 違います! 私は明日香さんをいじめてたんですよ?

普通、怒るとか嫌悪感とか色々ありますよね?

罵倒してくれても良いし。

それだけの事したんですから…… 。 」


麗美は全てぶつけました。

明日香のママの反応は!?

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