第32話 担任として
先生に呼び出されて学年室へ。
「 明日香さん…… 。
本当にごめんなさい。 」
急に謝られてこっちも慌ててしまいます。
「 えっ? えっ?
いきなりどうしたんですか?
私は何も悪い事されてませんよ。 」
そう言うと先生は明日香を椅子に座ってもらい、理由を話し始めました。
「 あなたがいじめられてるの…… 知ってたの。
それで…… 見ないふりしてたの。
ごめんなさい…… 。 」
明日香はその事実を聞きびっくりしました。
先生の話はその後にも続き。
「 あなたが転校する前にね。
一個上の学年の担任してたの。
でもね。 ある生徒がいじめられてて助けようとしたら、いじめをしてた生徒達にボイコットされてね。
それから凄い毎日が嫌になって、校長に頼んで一個下の学年の担任になったの。
また新しいスタートを切る為に…… 。 」
先生にも色々大変な理由があったのです。
「 でもね? クラスが変わっても何も変わんなかったんだよね。
結局またいじめはあったし、止めようとしても体が震えて動けなくて。
高校生って子供と言っても、ほとんど大人でしょ?
あんな人数にボイコットされたり、反抗されたらしたら耐えられないよ。 」
これが先生が全く助けてくれなかった理由。
先生は自分で話してて情けなくなりました。
保身の為に子供を守る事が出来なかったのですから。
呆れて笑ってしまいました。
「 あなたのお母さんに叱られたの。
いじめは必ずある。
ちゃんと探して下さい。
いじめが失くならないなら何度でも来るって。
あれは…… 凄い響いたの。
親にとっては大切な子供を預けてるんだから、絶対守って欲しいに決まってる。
私って…… 何してんだろ?
って、訳分かんなくなっちゃったんだ。
先生失格だよね? 」
先生は全てをカミングアウトしました。
許されたいから?
そうではありません。
言わないとおかしくなってしまいそうだったからです。
どうにか謝りたかったのと、逃げていたくなかったのでした。
「 私は知ってましたよ…… 先生が見てみぬフリしてたの。 」
先生は当然だと思いながら、下を向きながら顔を見る事が出来ませんでした。
「 前の学校の先生も同じだったから。
先生って言っても同じ人間だから、逃げたくなる事もあるし投げ出す事もあるのかもしれません。
でも逃げないで下さい。
私の事はいいので。
これからいじめられるクラスメイトを、先生の力で守って下さい。
いじめられてる生徒に少しでも声を掛けるだけでも違うので。 」
明日香が話していると、先生は手で顔を隠しながら泣きました。
全く恨んではいなく、他の人の心配ばかりしていました。
そんな明日香を見て、自分は何とも愚かな大人だと恥じて、恥じまくりました。
「 私ね。 先生の事嫌いじゃないですよ?
私の書いた日誌とかに、いつも一言書いてるの凄い嬉しかったんですよ?
本当は見ていてくれるのが良く分かったから。
生意気な事言ってごめんなさい。
じゃあ戻りますね! 」
そう言い学年室を出ていきました。
先生は明日香が言っていた日誌を手に取り、少し腰を掛けて自分の書いた一言を読みました。
( 明日香さん。 いつも黒板綺麗にしてくれてありがとう。 )
( いつもテスト高得点おめでとう!
しっかり話を聞いている証ですね。 )
( 教室がいつも綺麗です。
クラスの為にありがとう! )
明日香へ向けて少しでも自分の気持ちを書いていました。
それを読みながら明日香は全てに目を通していました。
そして、最後の先生への一言に返信が書いてありました。
( 先生へ。 いつも一言コメントありがとう!
凄い力貰っています。
本当にありがとう。 )
先生はその純粋な気持ちを受け止めて、胸が締め付けられるような気持ちでした。
自分を守りたい。
それだけの為に周りを犠牲にしてきた最低な教師。
他の学校にもこんな教師は沢山居るのかもしれません。
その時、先生はどうして教師になろうと思ったのか?
その原点を忘れていました。
この一言コメントの意味も…… 。
先生がまだ中学生の時。
体が弱く休みがちだった先生の家に、休む度に毎回担任の男の先生が一日のプリントを持ってきてくれました。
今日は何処を勉強したのか?
色々書き記してあるプリントも一緒に。
そのプリントの最後にはいつも先生へのメッセージが書いてありました。
( 先生は早くさやかが風邪が良くなるのを祈ってるよ。
周りより少し遅れても大丈夫!
体が良くなったら先生と二人で追い付こう。 )
先生はいつもこの担任の先生のメッセージに救われていました。
それと同時にこんな優しく、格好いい大人になりたい。
そう想い教師になりました。
その事を、少し忘れてしまっていました。
明日香の事で自分の原点を思い出しました。
教室で休み時間に騒いでる声が聞こえてくる。
賑やかでそんでもって少し騒がしい。
早織と梨香が麗美が少し自分たちから距離を置いて、何だかつまらなくなっていました。
すると、クラス一の弱々しくてヒョロヒョロな勘太郎君が梨香の机にぶつかってしまいました。
ここぞとばかりに。
「 おいっ! ぶつかって終わりかよ? 」
梨香が強く叱り着ける。
勘太郎君がびくびくしながら謝りましたが、謝罪が欲しいのではない。
ただのストレス発散の為にからかいたかったのです。
「 勘太郎。 前から思ってたんだけど、勉強出来るからって偉そうじゃね? 」
早織もうんうん。 と頷く。
「 い、 い…… や。 助けてぇーーっ! 」
怖くなりすぎてデカい声で叫びました。
二人は笑ってしまいます。
「 何が助けてぇだよ。
ウケるんだわ。 あははは。 」
「 そうよ。 男のくせして。 」
二人のいじりがエスカレートしていき、麗美もさすがに黙ってはいられなくて、近付いてい来ます。
ガラガラーーッ!!
「 ふ…… 二人共!!
友達をからかうのはやめなさいッ!!」
いきなりの大声に教室は静まり帰る。
二人もびっくりして見ると、その姿はいつもは弱々しい先生の姿でした。
「 先生? いきなり大声出して。
勘ちゃんと少し遊んでただけですよ?
ただの冗談じゃ。 」
直ぐに話を
「 言い訳はなしよ!
ずっと見ていたんだから。
私のクラスでいじめなんて、もう…… 絶対に許しません。 」
先生はいつもとは違って激しく話していました。
二人は突然の事に動揺してしまいます。
「 先生は今まではダメダメだったわ。
でも、もう違うからね?
どんなに反感を買おうと、いじめなんて絶対にさせないからね。
学校にいじめなんてあっては…… いけないんだから! 」
先生が大きな声で叫ぶと、二人は下を向いてしょんぼりしていました。
明日香はそんな先生を見て、先生の事がもっと好きになりました。
その勇気ある行動により、学校は少しずつですが変わって行くのでしょう。
先生として守るのは当然なのかもしれません。
子供と言っても大人数で反発してきたら、大人だって怖いに決まっています。
先生は決心して、子供達を守る為に一生懸命に動くのでした。
音弥は先生に絶望していて全く信じていません。
先生の今回の行動を見て、少し嬉しくなりました。
声には出しませんが先生をもう一度信じてみたくなりました。
信じて欲しいと言うなら、まずは信じる事から始めよう。
音弥はまた少し大人になっていくのでした。
それを遠くから見詰める影が!!
「 つまんねぇなぁ。
音弥にしろ麗美しろ…… 。
あのセンコー《先生》もあんなに態度が変わるなんて。
あの女が来てからだ。
転校生め…… 見てろよ…… 。 」
一人執念を燃やし続ける翔が廊下から見ているのでした。
そして、文化祭の日が少しずつですが近付いて来る今日この頃。
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