第28話 止まらないいじめ


明日香は毎日いじめられていました。

音弥にいじめた証拠を掴まれないように、巧妙な手口で鞄を踏んだり、ノートを隠したり色々されました。

明日香は音弥や麻衣ちゃん、トッシーも一緒に居るので負けませんが凄い悲しくなっていました。

それを遠くから早織と梨香がニヤニヤして見ている。

麗美は二人がやっている事をただ見ていました。

そしてあの日から麗美は、苦しむ姿を見ると嬉しく感じていたのに、今は罪悪感に襲われていました。

始めたからには止めるのは理由がいる。

その理由が見つからないのです…… 。

最近は放課後、公園で海人に会う毎日ですが罪悪感でいっぱいになっていました。

もし…… 自分が誰かいじめていた事が海人にバレたら…… 。

そう思うと苦しくなりました。

今、いじめているのが海人のお姉ちゃんなんて見当もしませんでした。

運命とは残酷なものでした。


「 麗美。 そろそろ結構効いてますよ。

追い討ちかけていいかなぁ?? 」


「 うん。 仲間が居ても凄い効いてると思う。 」


麗美は二人を遠回しに止めようと思いました。


「 もう…… いいわ。

別に大したことしてないし、もう止めても良いかな。

だからもうやんなくていいから。

先帰るわ…… 。 」


そう言い一人帰りました。

早織と梨香はポカンとして立っていました。


「 早織。 このまま終わりに出来る?

麗美がああ言ってるけど我慢できなくない? 」


「 …… うん。 そうだね。

転校生が来てから色々やりずらくなったし。

私達の怖さ教えてやろ! 」


二人はいじめられる怖さを知らない。

だから平気でこんな事を話せるのです。

痛みは受けた人にしか分かんない…… 。


明日香は新しく買って貰った鞄をみんなに見せていました。


「 良いなぁ。 明日香の鞄、チョー、チョー、可愛くなくなくない? 」


麻衣が興奮して羨ましそうに見ている。


「 なくなくない? って可愛いのか可愛くないのか良く分かんないよ。

お母さんと海人がデパートで選んで買って来てくれたの。

鞄には海人から貰った御守りも付いてるの。 」


嬉しそうに明日香は話しました。

トッシーも羨ましそうに見ている。


「 僕の母さんは鞄なんて買ってくれないよ。

風呂敷で良いだろとか言いそう…… 。 」


あははは! みんなでトッシーの話で笑いが起こる。

トッシーも仲間の一員。

音弥は寝不足でウトウトしながら話を聞いていました。


( 良かったなぁ。 トッシー。

明日香もあんなに楽しそうに。

学校…… 来て良かったな…… 。 ぐぅ。 )


音弥はニッコリしながら幸せそうに眠る。

音弥にとっても幸せな時間だったのです。


それを遠くから見ている梨香と早織。


「 早織ーーっ。 良いこと思いついちゃった。 」


「 なになに?? …… それは。

絶対効果抜群で、泣いちゃうかもね! 」


二人は独断で勝手に作戦を立てるのでした。


放課後…… 明日香の鞄が机の横にかけていたのに、失くなってしまい何処にも見当たりません。

必死に探しましたがありません。


「 ないなぁ…… 何処置いたかな…… 。 」


麻衣ちゃんは直ぐに悟ってしまいました。

あの二人がやったのではないのか?

直ぐに教室を出て廊下とかを探しました。

外は雨が降っていて音が響いていました。


( えっ? もしかしたら…… 。

そこまで酷い事する訳…… ないよね。 )


嫌な予感がして外を少し探しに。

自転車小屋周辺を調べていると…… 。

水浸しの鞄がそこにはあったのでした。

麻衣ちゃんは確認しなくても分かりました。

これは絶対に明日香のだと…… 。

学校に入り必死に自分のタオルで汚れや、水浸しなのを少しでも乾かそうと必死に拭きました。

明日香の悲しむ顔は、もう見たくはなったのです。


「 麻衣ちゃん。 何してるの? 」


乾かす事に必死で近づいて来るのに気が付きませんでした。

直ぐに自分の後ろに鞄を隠しました。

大切な鞄と弟から貰った御守りが泥だらけなのですから。


「 何でもないよ! 」


「 でも何か隠さなかった? 」


そう言い麻衣ちゃんの隠した鞄を見つける。


「 これ…… 。 」


言葉を失い、立っていました。

直ぐに麻衣ちゃんも自分がやった訳ではない事を説明しようとする。

でも、明日香には麻衣ちゃんの仕業ではない事が直ぐに分かりました。

麻衣ちゃんは髪が濡れながらも、必死に大切なタオルを汚しながら乾かす為に拭いていたのでした。

だから麻衣ちゃんは一瞬も疑う事はありませんでした。


「 麻衣ちゃん。 大丈夫。

…… ありがとう。 ぐすっ…… 。 」


明日香は鞄を手に取り走って行きました。

麻衣ちゃんは傷付いた明日香に、何と声を掛ければ良いか分かりませんでした。

一瞬しか見えなかったけど、明日香は泣いているように見えたのでした。


廊下を勢い良く走って帰って行きました。

偶然、トイレから出てきた音弥。


「 腹痛かったぁ…… ん?

おっ。 明日香! 雨降ってるけど帰りに…… 。 」


明日香は下を向いて顔を隠しながら走って行きました。

音弥もいつもと違う明日香に直ぐに気付きました。

止めようとしましたが早くて止められませんでした。

音弥は黙って明日香が帰るのを見ていました。

直ぐに教室に戻り、麻衣ちゃんの所へ。

麻衣ちゃんが泣いていたので直ぐに理由を把握しました。


「 麻衣。 明日香どうしたんだ?

また…… 麗美達の仕業なのか? 」


「 分かんない…… でも、大事な鞄が外に出されてて水浸しだったの…… 。 」


当然、麗美達の仕業でした。

だけど証拠がありません…… 。


雨の中家まで走って帰って来た明日香。

びしょびしょになりながら、直ぐに二階の自分の部屋へ。

お母さんが出迎えようとする前に部屋へ行ってしまいました。

明日香は服を脱ぎ捨て部屋着に着替えて布団の中へ。

お母さんが様子を見に来ると、鞄の状態を見て直ぐに察するのでした。

まだいじめが終わっていない事が良く分かりました。


その後何時間か経ち、音弥がやってきました。

学校であった事を説明しました。

お母さんはその話を聞き。


「 ありがとうね。 音弥君。

あの子ね、今は一生懸命頑張ってるけど前まではこんなに頑張れなかったの。

音弥君や麻衣ちゃんが友達になってからは、毎日笑顔で学校に行ってるのよ。

だから…… 嬉しくて。 」


少し瞳がうるうるしながら話しました。

音弥は黙って聞いている。


「 お母さん。 俺がいじめてる麗美に強く言ってやるので、安心して下さい。

もうあんな目にあわせないので…… 。 」


音弥が話すとお母さんは一安心しました。

その話を廊下で聞く、小さなスパイの姿が。


( お姉ちゃんをいじめてるのはレミってヤツだな。

待ってろよ…… 僕がやっつけてやるからな…… 。 )


そこには闘志を燃やす、小さな勇気を持った男の子が居ました。

海人は何やら良からぬ事を考えていました。

そして、ゆっくりと部屋へ戻って行きました。


夜になっても下には降りて来ない明日香。

お母さんが部屋へやってきました。


「 明日香。 大丈夫? 」


布団にくるまりながらもごもごしている。


「 うん…… 。 大丈夫。 」


「 明日香? もし学校に行きたくないなら、それでも良いんだからね?

私は、明日香の味方だよ。

どんな結果になろうと絶対に味方だから。

だからいつまでもそんなにめそめそするんじゃないよ。

鞄…… 大切だったのは分かるけど、全然気にする事なんてないわよ。

また何度でも買ってあげるし、拭いたりしたら元通りになったわよ。

だから、あなたが暗くなる必要はありません! 」


明日香はその言葉が嬉しかった。

お母さんはいつも味方で居てくれる。

布団から出てきて抱きつきました。


「 ありがとう…… ありがとうお母さん! 」


「 当たり前じゃない。 親なんですもん。

さぁ、下でご飯食べるわよ。

温かいビーフシチューよ。 」


明日香は泣くのを止めて、下へ降りて行きました。

すると騒ぎ声が。


「 お兄ちゃん! 凄い食べるね!! 」


「 当然だろ? もう大人だからな!

お母さん。 おかわり! 」


音弥がまた図々しく家でご飯を食べていました。

明日香はまたあまりにも溶け込んでいて、少し足を踏み外しそうになる。


「 もう〜、 また音弥君人んちでご飯食べて。

また図々しくおかわりまで。 」


「 美味しいんだから良いだろう?

もう大丈夫かい? 」


やっぱり心配で居てくれたのです。


「 ありがとう…… うん。

大丈夫。 もう大丈夫なんだから。

私も食べよう! 」


楽しくみんなでご飯を食べました。

いじめられてるときに支えてあげる、これが家族の有り方なのでしょう。

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