第27話 麗美の苛立ち
学校の日…… 。
麗美と早織と梨香は学校でお菓子を食べながらバカ笑いしていました。
「 だからそのファッションは都会では流行んないですよ。 」
「 そうそう。
麗美も今月号買ったら良く分かるよ? 」
といつものように話していました。
ガラガラーーッ!
扉が開いて入って来たのは、明日香と音弥と麻衣ちゃんでした。
麗美は空かさずに話をかける。
「 ねぇねぇ。 明日香。
最近、ずっと俊彦の家に通ってるんだっけ?
無理、無理ーーっ。 無駄だっつぅの。
あいつがどれくらいビビりか分かってんの? 」
明日香が負けずに言い返します。
「 …… 無駄じゃないよ。
俊彦君は絶対に来るから。
私の友達だもん。 」
明日香の訴えかける目は、迷いのない透き通った瞳で麗美には目障りでしかありませんでした。
「 そう…… ならなんでまだ来ないのかしら?
そんでもっていつ来るのかしら?
教えてくれない? 」
明日香は言い返せずに黙ってしまいました。
昨日あんなに楽しく話していても、いざ!
学校に行くとなると話は別です。
不登校になるとその一歩を踏み出す事が出来ないのでした。
チャイムが鳴り、先生が入ってきて出席を取りました。
「 今日も俊彦君のお休…… 。 」
ガラガラーーッ!
「 すみません!
色々準備に時間がかかってしまいました。 」
現れたのは俊彦君事、トッシーでした。
クラスのみんなもびっくり。
明日香は声が出そうなくらい喜びました。
「 俊彦君? もう具合は大丈夫かしら。 」
「 はい! 今日から頑張ります。 」
早織と梨香は腹立っている。
当然…… 麗美も同じ反応でした。
「 トッシー! お帰り。 」
音弥がそう言いながら拍手しました。
周りも同調効果により、拍手が起こってトッシーは凄い恥ずかしそうに頭をかきました。
当然、麗美達はいい気分ではありません。
「 麗美。 あいつ…… また来たよ。
どうする? 」
「 本当にしつこいんだからぁ! 」
梨香と早織がそう言うと麗美は凄い苛立っていました。
( 何でまた来んのよ。
今までは少しいじめたら来なくなったじゃん。
転校生が来てからおかしくなったのは…… 。
あいつも未だにいじめられてんのに来てるし。
本当苛立つくんだから。 )
そして歯ぎしりするのでした。
麗美の怒りは溜まるばかり。
翔も役に立たないし、どうするべきか…… 。
麗美の生活は明日香によって、少しずつ変わってきているのを肌で感じるのでした。
一日中麗美はイラついていて、仲間や彼氏とも帰らずに一人自然溢れる公園へ。
( 本当にイラつく…… 。
周りのヤツも使いもんにもなんないし。
明日からどうしようかなぁ。 )
貧乏揺すりしながら考えていると!
ドスーーンッ!
草むらからいきなり男の子がジャンプして飛び出して来ました。
「 うわぁっ!!
何なのよ。 いきなり。 」
「 ふぅーーいっ。 ん?
あれ? お姉ちゃんじゃない? 」
そこに現れたのは自然大好き海人の姿でした。
ニコニコしながら網と虫取カゴを地面に置いて、麗美の隣に座りました。
「 今ねぇ。 デカいクワガタが居たんだよ!
だけど背が低くて全然ダメだったの。
だから木によじ登って捕ろうとしてたんだぁ。 」
一生懸命自分の話をする海人に、麗美はイラついていたので軽く流していました。
「 お姉ちゃんは何してたのぉ? 」
「 関係ないでしょ。
子供なんだから適当に遊んでな! 」
軽くあしらって一人スマホをいじる。
隣を見ると海人の姿はありませんでした。
( そうよ…… ガキのクセに大人に割り込んで来んなよ。
やっと静かになったわ。 )
そう思いながらスマホをいじっていると、少し物足りなさや寂しさが出てきました。
( 帰ったのかしら?
まぁー、あんな対応されたら普通帰るわよね。 )
と少し残念そうにしていると。
「 お姉ちゃーーんっ!
オヤツ買って来たよーー! 」
海人は近くの駄菓子屋さんでお菓子を買いに行っていたのでした。
小さな手提げ袋には、安い駄菓子が大量に入っていました。
「 帰ったんじゃなかったの? 」
「 んん? 違うよ!
お姉ちゃん元気なかったから、オヤツ買って来たんだよ。
一緒に食べようよ。 」
海人には麗美がイラついてると言うよりも、少し寂しそうに見えたのでした。
だから元気づけようとお菓子を買って来たのです。
当然、麗美は凄い嬉しくなりましたが素直にはなれません。
「 駄菓子なんて安物…… 。 」
少し小腹も空いていたので食べたかったのですが、素直になれずにバカにしてしまいました。
いつもは高級なお菓子を食べたりしてるし、少し品がないかな? とプライドが邪魔してしまうのでした。
「 安いから良いんじゃないか。
バリバリ! バリボリッ!
お姉ちゃんも…… たべてよぉ。
バクバク! 」
全く気にしない海人だからこそ、少し挑戦したくなり一つ手に取る。
「 おっ! それはうまいボウズだよ。
10円で色んな味があるんだぁ。 」
麗美はカルボナーラ味を一口食べる。
「 バリバリ…… 美味しい。
いつも高いお菓子しか食べないから、こんな下品な安いの食べた事ないわ。 」
麗美は物珍しさに、カルチャーショックを受けてバクバクと食べる。
「 お姉ちゃん。 この焼きそば味。
美味しいんだよ。 」
( 焼きそば!? 何て…… 下品なB級グルメ。
そんな物食べるわけには…… 。 )
と思いながら一口食べる。
( あれ? 手が勝手に…… 。
おいひぃ。 バリバリ。 )
麗美はこんなに安いのに美味しい事にびっくりしました。
それと同時に海人の優しさに触れて、イライラしていた心が洗われているように感じるのでした。
隣で口の周りを汚しながら食べる海人を見て、弟が居たらこんな気持ちなのかな?
とか考えてしまいました。
そして何よりも愛おしく感じるのでした。
「 ほら! 口の周りが汚れてるわよ。 」
ハンカチで拭いてあげました。
海人は拭いてもらうとお礼を言って、直ぐにお菓子を食べ続けました。
麗美はいつもと違い、柔らかな表情になっていました。
「 海人のお姉さんやお母さんは大変ね。 」
クスクスと笑いながら話しました。
「 僕のお姉ちゃん…… 今、色々大変なんだ。
学校って難しいんだってさ…… 。 」
少し悲しそうな顔しながら話しました。
「 海人のお姉ちゃんどうしたの? 」
麗美は心配になり相談に乗ろうとします。
「 なんかね…… いじめっこが居るんだって。
僕の学校にも居るけど、ケンカとかしたら直ぐに仲直りしたりして友達になったりするの。
でも大きくなると、そうはいかないみたいなんだってさ。
難しいよね…… 。 」
麗美は少し黙ってしまいました。
何故なら自分はいじめている側なので、間接的にですが罪悪感を感じるのでした。
「 そうかぁ…… 大人になるって難しいね。 」
そう言うと海人は急に立ち上がりました。
「 僕は男の子だ!
だからお姉ちゃんを守るんだ!
お姉ちゃんをいじめるヤツは許さないぞぉ! 」
そう言いながらへなちょこパンチをしていました。
麗美はその姿を見て何か可愛く感じました。
「 そうだよ。 男なんだから守んないとね。 」
そう言いながら頭を撫でました。
「 そうさ。 僕は強いんだ!
お姉ちゃんは昔から気が弱くて、前の学校でも凄いいじめられてたんだ。
だから今度は僕が守るんだ!
大切なお姉ちゃんなんだぁ。 」
そう言いながらニッコリ笑いました。
麗美は笑い返しましたが、心が痛かった…… 。
今まで考えた事もありませんでした。
被害者はどう思っているのか?
その家族の気持ちとかも。
少し麗美の心には穴が空いた気持ちになりました。
いじめて楽しかったのか?
気分良くなっていたのか?
分からなくなっていました。
そのまま二人は沢山お話して帰りました。
麗美はすっかり海人の友達になっていました。
「 バイバイ! お姉ちゃん。
今度は柿の種持ってくるからね! 」
「 知ってるわよ! それくらい。
気を付けて帰るんだよ。 」
麗美の心はほっこりしていたのでした。
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