第23話 翔の悪巧み


少しの平和が戻っていたように見えたある日。

梨香と早織は麗美に泣きついていました。


「 麗美は何とも思わない?

最近の明日香の変貌とか。

調子乗ってませんか?? 」


「 そうですーー 。

私達も嘗められまくり!

マジでイライラMAXてんこ盛り! 」


田舎のギャル語は都会とは少し違う物でした。


「 んーー 。 あんまり気にしてなかったけど、言われて見ると髪型とか可愛いくしたり、少し気になるわね。

あんた達がそこまで言うなら少し絞める? 」


遂に麗美がいじめに参戦!

少し乗り気ではありませんでしたが、暇潰し程度にやろうかと考えていました。

被害者にはたまったもんではありません。


「 作戦としてはまずは音弥が邪魔ね。

それは翔達に任せてそこの隙に私達が、明日香を少し懲らしめてやろうか? 」


何やら嫌な雲行きに変わりつつありました。

その話を聞いていた翔は立ち上がり、自分の策を話始めました。


「 正直音弥はかなり厄介だ。

元々あいつに喧嘩勝てるヤツはほとんど居ねぇだろうな。

俺でも少し心配になる。

だから少しズルいけど仲間集めて、数でボコってやるしかないな。 」


「 翔…… 程々にしなよ?

かつての一応仲間だったんだからさ。 」


何と。 音弥はこの不良グループと深い絡みがあったのです。

今の優しい音弥からは考えられませんでした。

その作戦は次の学校の放課後に決行される事に。


( 待ってろよ音弥…… 目にもの見せてやるからな?

くっくっくっ。 あーーはっはっは!! )


翔の顔には黙っていても悪い事を考えているのが、手に取るように分かるくらいのにやけ顔でした。


学校の日…… 。 いつものように授業をして、明日香と音弥と麻衣ちゃんは三人でお昼を食べました。

教室では着実に事は進み、クラスの不良の男子や年下から年上の不良も入れて、30人以上が集まりました。

田舎ではこの数は異常でした。

そしてどうやって音弥を一人にするかを考えました。


「 任せろ。 あいつの弱点は簡単だ。 」


頭の悪い翔はいつも使わない頭をフル回転させて、悪巧みを必死に考えていました。


音弥は休み時間にトイレに行き、席に戻ると一つの手紙がありました。

ラブレターかと思いこっそりと中身を確認します。


( 音弥君。 どうしても話したい事があるの。

放課後に河川敷に来てくれない?

この事は誰にも話しちゃダメだよ? )


と書いてありました。

差出人の名前はありませんでした。


( 誰だろう…… 明日香かな?

にしても字が…… 待てよ!

焦って書いたから下手なのかも。

多分明日香だな。 )


少し違和感はありましたが音弥は放課後に河川敷に向かう事に。

翔の罠とも知らずに…… 。


放課後…… 。

音弥は直ぐに河川敷に向かいました。

翔と仲間達も直ぐに後を追いかけて行きました。

明日香は音弥がいつの間にか居なくなり、少し寂しい気持ちになっていました。


( 帰っちゃったのかな?

一言言ってくれれば良いのに…… 。 )


「 あーすか! 一緒に帰ろう。 」


そうです。 もう麻衣ちゃんが居るので寂しくありません。

二人で帰りに寄り道する事にしました。

明日香はどうしても行きたい場所が。

いつもの帰り道には麗美とその仲間達が、明日香をいじめようと待ち伏せしていました。


「 …… 遅い。 梨香!

どうなってんのよ。 音弥は翔がシバいてるのに、何で明日香が現れないのよ!? 」


少し作戦が上手く進行せずに、嫌な雰囲気になってしまっていました。

麗美もイライラが溜まりまくりです。

にしても明日香と麻衣ちゃんは何処へ行ったのでしょうか?


その頃、何も知らずに明日香は麻衣ちゃんに道案内してもらい、行きたい場所があったのです。


「 明日香。 本当に来て良かったの?

あんたに出来る事なんてあるのかな…… 。 」


「 いいの! どうしても来たかったの。 」


そこはいじめられて最近学校へ来ない、俊彦君の家でした。

明日香は俊彦君に会いたかったのです。

少し大きな家でお庭も大きい。

直ぐにピンポンを押しました。


ピーーンポーーン!!


「 はい。 どちら様でしょうか? 」


女性の声でした。

俊彦君のお母さんでしょう。


「 あの、私は俊彦君の同級生の持田明日香です。

俊彦君居ますか? 」


少し返答が無く、何か考えているようでした。


「 俊彦…… 今は具合悪くて。

ごめんなさいね…… 。 」


「 いいえ。 いきなり来たのが悪いので。

休んでいる間に溜まってたプリント、ポストに入れて置きますね。

それではまた来ます。 」


そう言い二人は帰って行きました。

俊彦君のお母さんは直ぐにポストに入ったプリント類を回収して、俊彦君の部屋まで持っていきました。


「 俊彦。 今ね…… クラスメイトが来てたわよ。」


俊彦君はベッドに横になりながら話を聞いていました。


「 先生に言われて来たんだろ?

気にしなくていいよ。

もうあんな学校行くもんか…… 。 」


そう言いながら布団を被ってしまいました。

お母さんはため息をつきながらプリントを見ていると。


「 俊彦。 これあんたにだって。 」


そう言いながら一枚のメモ用紙を置いて部屋を出ていきました。

俊彦君は恐る恐るメモを見てみると。


( 俊彦君へ。 具合は大丈夫ですか?

まだあまり話した事ないけど、凄い心配しています。

もっと話してお友達になりたいです。

また来ます。 明日香より。 )


あまり長くない手紙でしたが、俊彦君は少しその手紙を眺めていました。


「 何だよ…… 関係ないだろ。

そんなつもりないくせに。

もう来ないだろうな…… 。 」


そう言いながら手紙をゴミ箱へ捨ててしまいました。


明日香と麻衣ちゃんは二人で帰っていると。


「 ねぇー? やっぱり意味無かったでしょ?

トッシーはメンタル弱いから、一度休んだら絶対出てこないわよ。

もう分かったでしょ? 」


明日香は首を横に振りながら。


「 んーん。 全然諦めないよ。

私だったら何度でも来て欲しいと思ってるの。

だから何回でも来るつもりだよ。 」


そう言いながらニッコリしました。

麻衣ちゃんはその時思いました。


( この子…… 誰よりも人の痛みに敏感なんだ。

相手の気持ちを凄い自分のように考えてる。

初めて会った時から気になってたんだ。

明日香は私の知ってる誰よりも優しくて、気は弱いくせに諦めない強さがある。

だから大好きなんだ…… 。 )


麻衣ちゃんはそう思いながら明日香に抱き付きました。


むぎゅーーっ!


「 そうこなくちゃ!

私も付き合うわよ。 トッシー友達だもん。

後、明日香の大親友だもん。

いつも一緒よ! 」


明日香は麻衣ちゃんのその言葉が嬉しくてたまりませんでした。


「 麻衣ちゃん…… ありがとう。

じゃあねぇ、明日の放課後なんてどう? 」


「 えっ…… ? 」


あまりにもやる気まんまんの明日香に、麻衣ちゃんはいつまでついてこれるのでしょうか?


その頃、河川敷に着いた音弥は少しドキドキしながら待っていました。


( 何でこんなにドキドキしてんだろ?

ただの相談なのかもしれないし。

でもワクワクすんなぁ。 )


そわそわしながら周りをキョロキョロしていると、隠れている人陰を見つけました。

音弥が気付いた事が分かり、隠れていた不良達が姿を現すのでした。


「 えっ…… まさか!?

あのバカにハメられたのか? 」


翔や仲間達合わせて、ざっと32人が勢揃い。

翔の先輩や後輩。

他校の仲間にも連絡して、音弥を絶対に叩きのめす計画になっていたのです。


「 うぉーーいっ! 音弥。

デケぇ面してくれてったってしてくれちゃって。

どう落とし前つけんだ? あーーん!? 」


少し噛んではいたが、怒りだけは伝わって来ます。

ここの連中は全て翔に負けた家来のようなもんです。

なので音弥は絶対絶命に。


「 ほうほう。 こんな数揃えて勝てるつもりかい?

空手緑帯を嘗めんなよ? 」


翔少し考えています。


「 緑って…… 思ったより最初の階級の方だぞ?

一瞬だけ階級が良く分かんなくなったわ。

んな事どうでもいい訳よ!

やんのか? それとも詫び入れんのか?

あの転校生は俺の彼女が気にくわなくてな。

二度と助けないなら、今回だけは俺に免じて許してやらん事もないわ。 」


周りは囲まれて逃げ場はありません。

冷や汗をかきながら絶対絶命に。

どうなってしまうのでしょうか?

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