第19話 音弥
朝から大変な事に…… 。
ここぞとばかりに先生が入って来る。
ガラガラーッ!
「 みんなぁ。 ホームルーム始めるわよ。 」
そう言われて直ぐに生徒達は席に。
翔は恥をかかされてかなり不機嫌そう。
明日香も直ぐに席に着くと、今まで誰も居なかった席に音弥が座る。
音弥が隣に居るのに違和感が…… 。
「 一個年上じゃなかった? 」
明日香が小声でたずねました。
「 ん? あぁ。 留年してるんよ。 」
この休み方を見ていれば納得。
直ぐに授業が始まりました。
授業を受けながら隣を見ると、すやすやとお昼寝中。
( 久しぶりの学校で疲れたのかな?
んん? 授業を受けないと進級が危ないのでは? )
少し不安が残りつつ時間は過ぎて行く。
明日香は最近は授業中も不安で仕方がありませんでしたが、音弥が隣に居るだけで凄い安心出来ました。
休み時間になると二人は教室を出て行き、鶏小屋で話す事に。
「 びっくりしたよ。 音弥君がいきなり現れるんだから。 」
明日香は興奮して話すと。
「 そうだった?
言っとけば良かったね。
早く来ようと思って、弁当作り忘れたから少し分けてね。
俺は腹ペコだよ。 」
「 急がせてごめんね。
沢山あるから半分個にしようね。 」
二人はニコニコと話していました。
それを遠くから見る陰が…… 。
「 許せない…… 。 どうして今更、音弥が? 」
「 分かんない…… 。 本当にイラつく。 」
早織と梨香が上手くいかなくてイライラしていました。
クラスの女子達の会話は音弥の事へ。
「 音弥君初めて見たーー 。 」
「 翔君よりは身長低いけど凄い大きいね。 」
「 相変わらず格好良くない? 」
「 彼女居るのかな? 」
今の話題の中心。
その話が聞こえて来ると翔もイライラしてくる。
( あの野郎…… もう来ねえんじゃなかったのか?
あの気分屋がどうして一人の女の為に動いた?
おかしい…… 絶対にあの二人は俺が来なくさせてやる。
絶対にな…… 。 )
静かに翔の怒りは燃え盛っていくのでした。
体育の授業…… 。
バスケをする事に。
男子と女子で別れてする事に。
明日香は運動音痴なのでいつも上手くいきません。
すると男子の方から歓声が!
「 さすがは翔だぜ! ダンク!! 」
ズドォーーンッ!!
長身なのに身のこなしが軽く、凄い高くまで飛び上がりダンクを決める!
男子だけではなく、女子も騒ぎ立てる。
「 ヤーー! 翔君格好いい!! 」
翔は軽く汗を拭いガッツポーズをする。
明日香はそれをただ見ていました。
( いじめっこで不良でイケメンで、運動神経抜群とか神様は本当に居るのかなぁ…… 。 )
音弥はあくびをしながらバスケ風景を見ていました。
そしてゆっくりとストレッチしながらコートへ。
「 翔。 相手チームに入っても良いか? 」
ムカっ! いきなりの挑発。
「 良いですよ音弥さん…… 恥かくなよ? 」
そして試合が始まる。
音弥にボールが回ると、凄いスピードで一人、二人と抜いて行く。
長身とは思えないくらいの低い体勢のドリブル。
あっという間にゴール前に。
ゴール前には最強の翔が立ちふさがる。
( 身長は俺の方が勝ってる。
負ける筈はねぇーんだよ。 )
シュートしようとすると、直ぐに反応してジャンプしてブロックする。
それを読んでいた音弥。
「 甘いよ…… 。 」
後ろにジャンプしながらブロック出来ない角度からのシュート。
当然、翔は高く飛んでもボールには後少しで届かない。
バシューーッ!!
ボールはゴールポストに入り点が入る。
「 キャーーーッ!! 」
女の子達の歓声が響き渡る。
翔は息を切らしながら音弥を見上げる。
「 俺は意外にスポーツも出来んよ! 」
また翔を煽ってしまう。
また一対一になる。
時間も後少し…… 。
また早いドリブルでゴール前まで進んでくる。
( あいつはロングシュートが得意みたいだな。
なら…… ゴール下のシュートはない!
それなら!! )
ロングシュートを読み、そう簡単にジャンプせずにブロックしている。
音弥はニヤリと笑う。
直ぐに体勢を低くして脇を抜けていく。
ゴール下へ。
高く高くジャンプして、ボールを片手で持ち上げる。
ズドォーーンッ!!
激しい音を出しながらゴールに入れる。
ダンクを華麗に決めました!
ピーーーッ!
試合終了の笛が鳴る。
「 音弥様ーーっ!! 」
女子達は音弥に夢中に。
( カッコいい…… あのナマケモノさんみたいな音弥君がこんな事出来るなんて…… 。
あれ? 不登校さんだったんだよね?
私何かより充実している気が…… 。 )
音弥は少し汗をかき翔の横を通り過ぎる。
「 おい! 一体お前みたいな逃げ腰野郎が今更何で戻って来たんだよ。
未練でもあったのか? 」
音弥は立ち止まり。
「 止まった時間を動かしに来たんだ。
明日香に会ってから逃げんの止めたのよ。
だからお前が調子に乗るのも今日で最後だ。 」
音弥の宣戦布告。
翔はイラつきボールを思いっきり蹴り飛ばす。
( にゃろう…… 。 嘗めやがって。
あいつは親父に学校行くな! って止められてなかったか?
どうやって許可を得たんだ!? )
さかのぼる事、前日…… 。
父親に電話を掛けていた。
「 親父…… 俺、また学校行かせてくれ。 」
父親は電話越しに怒りをぶちまける。
「 何を今更!! お前は私の面子を汚してばかりで、何一つ良いことをしていない。
学校が嫌だとお前が言ったんだぞ?
だからお前は特別に学校に行かずに卒業出来るように、私が裏で手を引いたと言うのに…… 。 」
音弥は何か嫌な事があって不登校になったようでした。
「 勝手過ぎるけど、俺が行く事で救われる奴も居るんだわ…… 。
親父にはどうでも良くても、俺には価値のある事なんだ。
だから…… お願い…… します。 」
音弥は静かに心を込めて頼みました。
「 …… ふっ。 お前がそんなにも必死とはな。
何かやりたい事があるんだろ?
迷惑だけは勘弁だぞ?
分かったな? 」
親父はやる気に目覚めた息子を嬉しく思ったのです。
今までは何一つ上手くやらず、やる気もなく無気力。
逆らってばかりで反抗期爆発!
なのに電話で話した音弥は、少し大人になった気がして嬉しく思ったのでした。
「 ああ。 任せておけよ。
学校に連絡だけ頼むわ。
ありがとう親父…… 。 」
こうした経緯があったのでした。
音弥は今、変わろうとしていたのです。
自分の為だけではなく、他の誰かの前に立つ為に!
お昼休み。
二人でプール脇でお弁当。
少し崩れてしまったホットドッグを出しました。
「 形結構崩れちゃってるけど…… 食べる? 」
音弥は返答せずに速攻口に運ぶ。
「 みゃあ……む。 もぐもぐ…… うんま!
お父さんの愛情たっぷりだな。
すげぇ美味いよ。 バクバク!! 」
子供のようにむしゃむしゃと食べる。
明日香はクスクスと笑いながら見ている。
明日香ももう一つ余分に持ってきていた、サンドイッチを食べました。
明日香は食べながら、いじめは終わってなくても友達が居ることの大切さを深く噛み締めるのでした。
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