第18話 いじめのエスカレート


一時間くらいして音弥が目覚めると、そこにはただのショートだった髪型の明日香ではなく、絶対が軽くなり毛先にウェーブがかかった、ふんわり女子に変身していました。

前髪もただのパッつんではなく、ふんわりさせている。

髪の長さはほとんど変えずに、ここまで変えられるのが理容師の凄さなのかも知れません。


「 おぉ…… これはこれは。 」


音弥は言葉を失い、見とれてしまいました。


「 そんなに変かな…… ? 」


「 嫌…… 凄い良いよ!

これで学校一の美女だよ。

これでいじめる奴なんて居たら、ただのひがみだね。 」


音弥は自分の作品のように誇っていました。

ママも納得の出来でした。


「 あたしもあんたみたいに元が良ければなぁ。

男がほっとかないのに! 」


ママは難いが良くて、180センチもある。

肩幅も広くてハンガーを入れているみたいな程。

明日香の完成度に嫉妬してしまう。

そう思うくらいに素晴らしい出来でした。


「 よぉーし! これで完璧だ。

鏡を見てごらん?

明日香は前までの下向きな明日香じゃない。

べっぴんさんなんだからさ! 」


明日香も鏡を見て別人に見えました。

少しだけ化粧もして、大人な雰囲気も出ている。

化粧とか髪型が女の鎧と言うのも納得してしまう。


「 ありがとう。 マリアさん。

何か元気でました。 」


明日香は立ち上がり鏡を夢中で見ていました。


「 何かあったらいつでもおいで。

あたしは明日香の味方なんだからさ。 」


そう言いながらタバコをぷかぷか!


( ゲホッ! ゲホッ! どんな接客態度なんだか。

でも…… マリアさんも凄い優しい。

私は一人じゃないんだ。 )


明日香は少し自信がつきました。

音弥はそれは嬉しそうに見詰めていました。

二人はその後少し話してから、ゆっくりと帰っていきました。

帰り道…… 音弥の後ろを歩いていました。

音弥にどうしても言いたい事が…… 。


「 音弥君…… 今日は…… ありがとう。

凄い元気出たよ。 」


恥ずかしながらもこれだけはどうしても言いたかったのです。


「 ん? 大した事してないよ。

ただ俺がしたいと思ったからやったんよ?

だから感謝なんていらないよ。 」


そう言いながら歩いていました。


「 そうなの?

でも私は凄く嬉しかったんだよ?

だからありがとう。 」


明日香は感謝しきれなかったのです。

それぐらいに嬉しかったのでした。

家まで送って貰い、音弥はゆっくり歩いて帰っていきました。

夜空を見ながら音弥は何か考えている。

スマホを取り出して何処かにかける。


「 …… 親父? 俺…… 。

実は少し話があるんよ。 」


音弥はお父さんに電話をかけていた。

一体どんな用だったのでしょうか?


次の日…… 明日香は髪を整えて、少しだけママから教えてもらったメイクをしていざ!

学校へ!


( 怖いなぁ…… コンタクトにもしたし、凄い雰囲気違うからドキドキする。 )


家族からは昨日大絶賛!

身内の票は何も当てにはなりません。

ゆっくり教室の扉を開ける…… 。


ガラガラーーッ!

教室に入るとクラスの皆の目線は明日香へ…… 。

明日香もその目線に直ぐに気付く。


「 あの…… みんな。 おっ……おはよう! 」


直ぐにみんなは目をそらして、友達同士の会話をしました。

相変わらずの無視のようです…… 。


( そりゃそうか…… 何にも変わんないよね。

良いもん! 自分が変わればそれで。 )


明日香は慣れないコンタクトがずれたので、トイレに行きました。

直ぐにみんなの会話は明日香の事に。


「 今の見た?? 明日香凄い可愛くない?

メガネ取ったらあんな風になんだな。 」


「 本当、本当。 すげぇタイプ! 」


「 髪型可愛くない? 何処で覚えたのかな? 」


みんなの話題は明日香に。

男子は明日香に好意を寄せる者や、女子は明日香のメイクや髪型が羨ましくなる者も。

ごく一部を除いては…… 。


「 うぜぇなぁ…… 明日香の野郎。 」


いじめに屈しない明日香に腹を立てる早織。

梨香も一緒にイライラしていた。


「 早織。 翔君に頼まない?

そうすりゃ、あいつおしまいだよ?

ねぇ? 」


「 そうだね。 そうしよう。 」


遂に翔に頼みいじめて貰う事に。

直ぐに頼みに行きました。

翔は机に足を乗せて少し不機嫌そう。

麗美はまだ学校に来ていません。


「 翔君。 少し頼みが…… 。 」


「 あっ? 何の用だよ? 」


相変わらず少し睨まれただけでも怖い。

直ぐに訳を話して、麗美の仕返しの為にもっといじめをエスカレートさせて、学校に来れなくさせたい事を伝える。


「 何だ。 お前らそんな事してたのかよ。

つまんねぇ事してんな?

まぁー 良いよ。 力貸してやるよ。 」


そして翔は動き出す…… 。

明日香は教室に戻ると異様な空気が流れている。


( ヤバい…… どうしたんだろ? )


すると目の前に翔が立ちふさがる。


「 おい! お前…… 調子乗ってんな? 」


ビクッ!! 凄い怖い顔で睨まれてしまう。

明日香は目が合わせられない…… 。

180も超えてる長身に威嚇されれば誰でも怖いでしょう。


「 調子になんて…… 乗ってないよ…… ? 」


翔はその言葉にイラつき明日香の机を蹴飛ばしました。


ズドーーンッ!!


机はひっくり返り、教科書や筆記用具が散らばる。

明日香はびっくりして目をつぶってしまいます。


「 おめぇの何処が調子乗ってないんだぁ!?

あぁっ!!? 」


胸ぐら掴まれて軽く持ち上げる。


「 苦し…… いっ。 ごめんなさい。

ごめんなさい…… 。 」


明日香は怖くて謝り続けました。

周りのみんなはあまりにも酷い光景に、目を背ける人もいました。


「 おめぇは嫌われてんのにいつまでこの学校に来るつもりだよ?

まだわかんねぇのか?

誰もお前なんて必要じゃねぇーんだよ。

だからもう来んな。 分かったか? 」


明日香は泣きながらも顔を横に振りました。

絶対に負けない…… 。

こんなに綺麗にしてもらったのに…… 。

お父さんやお母さんを悲しませたくない…… 。

ちゃんと学校を卒業するんだ。

もう絶対逃げないんだと思いながら、決して屈したりしませんでした。


「 泣いてる癖に往生際が悪いな…… 。 」


近くに明日香の鞄がひっくり返りって、中身が散らばり中からラップに包まれた、大きなホットドッグが落ちてしまっていました。

直ぐに気付き翔が拾う。


「 何だこのイビツなホットドッグは? 」


「 それは!! 」


明日香は今朝の事を思い出す。


学校の事が気になり、朝早くにトイレに。

台所から少し明かりが廊下に射し込んでいました。

こっそり覗くと、そこにはお父さんとお母さんが。


「 お父さん。 私がやるわよ?

だからゆっくり休んで? 」


「 大丈夫! 大丈夫!

明日香が頑張ってるんだから、少しでも元気になるお弁当作りたいんだ。

だからやらせておくれよ。 」


そう言いながら疲れているのに、早起きして一生懸命ホットドッグを作っていました。

手作りのジャンボソーセージも入れて。

凄いイビツではありましたが、絶対に美味しいお父さんの自信作。

明日香は声が出そうなのを我慢して泣いていました。

お父さんとお母さんからの沢山の愛情を感じて…… 。


「 返して! それは…… イビツかもしれないけど、私のお父さんが頑張って作ったの!

大切なお弁当なの。 」


翔はそれを聞き、ニヤっとしました。


「 そうかぁ…… じゃあこうしてやるか!! 」


地面にホットドッグを叩きつけ、上から足で踏み潰そうとする。


「 お願い!! それだけは…… 私の……。

そんな事されたら、私、壊れちゃう!! 」


明日香は必死にホットドッグに手を伸ばします。

間に合いそうにありません。


( お願い…… 止めて。 止めて…… 。

誰か…… 誰か助けて…… 。 )


明日香は泣きながら手を伸ばす!

教室の外では、先生が廊下に立って聞いていました。


( お願い…… 早く終わって。

お願いだから私を巻き込まないで。 )


何と、先生は明日香がいじめられていた事に気付いていたのです。

でも巻き込まれるのが怖くて見てみぬふりをしていたのです。

すると、そこに誰か歩いて来ました。


「 えっ…… あなたは? 」


「 どけ! 元々お前には頼ってない…… 。 」


そう言い先生を押して自分が代わりに教室へ。


ガラガラーー!!


入った瞬間映った光景に直ぐに反応する。

走って翔の襟を掴み、思いっきり投げました。


ズドーーーン!!


凄い音と共に思いっきり吹っ飛びました。


「 イヤァーー!! 」


クラスの女子達はびっくりして立ち上がってしまう。


明日香は状況が掴めません。

膝を付いていて、上を見上げて見ると。

そこには…… 。


「 大丈夫か? 遅くなったな。

制服がカビ臭くて洗って乾かしてたら、時間掛かってさぁ。 」


そう言いながらニッコリ笑う。


「 お…… おっ…… 音弥君!? 」


そうなのです。

そこに颯爽と登場したのは、生乾きの制服を着た音弥の姿でした。

翔は壁に頭をぶつけて痛そうにしている。


「 イテテテ、ん? お前は…… 音弥!!

何でお前が!? 」


翔も知っているようでした。


「 ん? クラスメイトなんだから来て当然だろ? 」


何と!! 音弥はこのクラスの不登校の生徒だったのです。

明日香は驚いてしまう。


「 ホットドッグが汚れちゃったな。

後で一緒に食べような。 」


そう言いながら手でホコリを払う。


「 どうして…… どうして…… ? 」


明日香は涙を流しながら問いかけます。


「 俺には聞こえたよ?

だから助けに来たんよ?

良く一人で耐えたな。

偉いぞ。 俺ももう逃げないよ。

見てみぬフリすんのはもう止めたんよ。 」


そう言いながら明日香の頭を撫でる。


「 にしても翔。 お前も堕ちたな。

男の癖に女いじめて…… ここのクラスのみんなも同じだろ? 」


そう言うと早織が言い返します。


「 ただふざけてただけだし…… 。 」


音弥は凄い剣幕で睨み付ける。


「 ふざけて? それはお前らの解釈だろ?

彼女は凄い傷ついてる…… 。

痛がってる…… こんな事も分からないのか? 」


クラスのみんなはその言葉に圧倒されてしまう。


「 まぁー もう良いけどね。

俺が来たからもう大丈夫だ。

ゲームってのは駒が多くないと楽しくない。

ここからはクイーンを助けるナイトの当時だ。

もう勝手な真似はさせない! 」


いきなりの急展開!

ここから流れが変わっていく…… 。

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