第17話 イメチェン


明日香はゆっくり起きました。


「 ん…… あれ? ここは家?

ありゃ! また寝ちゃった!!

んで何で家に!? 」


直ぐに一階に下りていく。


「 お母さん! お母さん!

昨日はどうやって私…… 。 」


急いでお母さんに聞きに下りて行きました。


「 それ本当に? ウフフフっ! 」


「 それが本当なんですよお母さん。

猪の肉って以外に獣臭くないんですよ。 」


呑気にリビングで音弥とお母さんがくつろいでいました。

明日香は当たり前のように居る音弥にびっくりして、転んでしまいます。


「 えっ?? 何で居るの?

昨日どうしたんだっけ? 」


「 はしたないわよ明日香。

ごめんなさいね。 ウチの娘が迷惑かけて。 」


お母さんが音弥にそう言うと。


「 良いんですよお母さん。

昨日は泊めてもらって、しかも沢山ご飯まで頂いちゃって。 」


昨日は運んで来てそのまま泊まったのでした。


「 えーーっ!? 二回ご飯食べたの?

しかも泊まったの?

そんな事お父さんに知られたら…… 。 」


ガチャッ!


「 音弥君。 良かったら一緒にベーコン作らないか? 」


「 喜んでお父さん! 」


二人は直ぐに台所に。


「 えっ? お父さん?

さっきから凄い馴れ馴れしくない?

少し寝てる間に何が…… 。

凄いコミュニケーション力。 」


明日香は娘思いのお父さんが、初対面の男にこんなに仲良くなるのが異例な事にびっくりする。

二人は朝からベーコンを作りながら、笑ってサンドイッチを作っていました。


「 本当に良い子よね。

昨日あんたをここまで運んで来たんだから。

家に入れて少しお話したら、面白くて直ぐにみんな音弥君の虜よ。

お父さんなんか、お酒沢山飲んじゃって。 」


寝てる間に色々あったのだと分かりました。


ガタガタガタガタ!

階段をかけ下りて来る音が。


「 ヤバい! 海人だ。

何て説明すれば…… 。 」


走って台所へ!


「 兄ちゃん! 今日は虫取手伝ってくれよ。 」


「 おうよ。 兄ちゃんに任せろ! 」


そう言いながら肩車している。


「 あぁ…… もう仲良しなのね…… 。 」


明日香はゆっくりお風呂に入り、その後に朝食を皆とする事に。

テーブルにはお父さんと音弥が作った、ベーコン入りの目玉焼きとサラダとお味噌汁。

明日香がお風呂に入ってる間に、さらに家族に溶け込んでいました。


「 音弥君。 中々良い手付きだね。

良かったら作りすぎた燻製とか持って帰ってくれよ。 」


「 本当にお構い無く。

遠慮なく頂きますよ。 」


家族に笑いが起こっている。

何故か明日香は納得いきません。


「 ねぇ! 何で音弥君こんなに溶け込んでるのよ?」


「 明日香! 音弥君に失礼だぞ?

音弥君。 ご飯おかわりするかい? 」


お父さんは完全に音弥を家族入りさせているように感じました。


「 本当にお気になさらずに。

それでは山盛りで! 」


「 はぁーい。 本当に山盛り食べる男は男前ねぇ。 ねぇ、お父さん。 」


お母さんも音弥に優し過ぎる。


「 バクバク…… 僕もおかわり! 」


海人も音弥に触発されて沢山食べている。

明日香は音弥の事が好きですが、ここまで家族に溶け込むとモヤモヤする気持ちもありました。

明日香は環境の変化に対応するのが苦手なのでした。


今日は休みなので明日香は、一人で気分転換に川に出掛けました。

音弥は朝食の後片付けをしたりして、一宿一飯の恩を返していました。

すると、お父さんが近付いて来ました。


「 音弥君。 本当に明日香の事ありがとう。 」


「 何にもしてませんよ。 俺は。 」


音弥はそう言うとお父さんは、少し暗い表情で話し始めました。


「 キミも知っている通り、明日香は今いじめられていると思うんだ…… 。

明日香の口からは聞かないけど、友達の話しを一切しなくなった。

帰って来るといつも元気がない。

口数もぐっと減ったんだ…… 。

だけど今日の朝の明日香には少しだけど、明るくなっていた気がする。

多分、キミの影響だと思う。

本当にありがとう…… 。 」


深々と頭を下げました。


「 …… 本当になにもしてませんよ。 」


するとお母さんも聞いていて、話に入って来ました。


「 明日香は私達に迷惑掛けなくなくて、多分黙ってると思うの…… 。

だから私達も聞こうと思っても聞けないのよ。

不憫で仕方ないの…… 。

あなたと話している明日香は、凄く楽しそうに見えたわ。

本当にありがとう。 」


音弥は凄く申し訳なく感じてしまいました。

まだ何にもしたとは思っていないのだから。

両親の気持ちが知れて良かった気持ちになりました。


「 一つ秘密にしている事がありまして。

…… 実は。 」


音弥の口からある秘密が話されました。

二人はその話を聞き。


「 そうだったのか…… 。 それは大変だったね。

明日香の事、もし何かあったら助けて貰えるかい?」


音弥は深く頷きました。

どんな秘密があるのでしょうか?


明日香は一人川で魚釣りをしていました。

何故か趣味の一つになっているのでした。


「 はぁーー …… 。 落ち着く。 」


明日香には釣りの才能もなく、全く釣れる気配はなかったのです。

そこに音弥が来ました。


「 居たなぁ。 現実逃避少女め! 」


何しに来たのでしょうか?


「 こんな事してないで俺に付き合えよ? 」


またまた強引に引っ張られて何処かへ連れてかれそうになる。


「 ちょっと…… あっ! 引いてる、引いてる! 」


やっと釣りざおに魚が掛かりました。


「 んなの良いんだよ。

ほら行くよ。 」


ちゃんと引かなかったから、あっという間に糸が切れて逃げられてしまいました。

一体何処に連れてかれるのでしょうか?


歩いて30分…… 。

ちょっとした床屋でした。


「 えっ!? 床屋? 」


そして店内へ。


「 いらっしゃ…… あっ!

音弥ちゃんじゃないのよ。 いらっしゃい! 」


それは完全なオカマの店長の姿がそこにはありました。

頭はモコモコのアフロで、化粧で完璧に整えている。

でもどう見ても男その者。

完全な男!!


「 ママ。 今日は俺じゃないんだわ。

こっちの髪やってくれる? 」


「 ん? 誰よこの子は??

彼女とかなの? 」


凄い剣幕で明日香を睨み付ける。


「 違います…… ただの友達です。

明日香って言います…… 。 」


「 なら良かったわぁ!

私はここのママのまことって言うのよ。

みんなにはマリアって言われるの。

宜しくね。 」


誠でマリア? …… 全然意味が分からない。

何故か席に座らされて、髪をいじられそうになっている。


「 ママ。 今日はその子の髪の毛先をパーマかけてくれる?

後は絶対的に軽くして、ふんわりな髪型にしたいんだよね。

かなりそれで可愛いくなると思う。 」


何やら指示を出している。


「 そうねぇ。 似合いそうね。

任せてよ。 音弥ちゃんの為だもん! 」


ママは音弥がお気に入りのようでした。

音弥はニコニコしながら遠くで眺めている。


「 大丈夫よ。 元はそんなに悪くないから。

絶対可愛くなるから任せなさい! 」


ママには明日香の動揺や不安が手に取るように分かっていたのです。

さすがは床屋さん。


「 私…… 別に可愛くないですし、わざわざ可愛くなりたくないんです。 」


言葉には少し震えに自信のなさもありました。


「 あんた、そう言う所が不細工なのよ!

私達女は、まずは化粧とか髪とか正装するのよ。

髪型と化粧は女の鎧なんだから。 」


明日香は少し納得してしまう反面、あなたは男なのでは? と言う気持ちになりました。

でもママを見ていると、オカマだと言う事を気にする素振りは微塵も感じません。

むしろ、誇りに思ってるくらいに!


「 マリアさんって凄いです…… 。

私は全然自分に自信なんてなくて。

何でマリアさんはそんなに強いんですか? 」


髪を切りながら鏡越しに明日香を見ながら。


「 オカマは半端な覚悟じゃ出来ないわよ。

男でもあり、女でもあるって最強じゃない?

だからオカマは強いのよ! 」


そのママの表情を見ていると凄く癒されました。

自分だけが大変だとか最悪だとか考えていたけれど、世界にはもっと大変だったりする人も居るのかも知れないと思いました。

少しだけ視野が広くなった気持ちになりました。


「 あんたは幸せもんよ?

あんたにはあんな信頼出来る友達が居るんだもの。

だからもっと前を向きなさい。

そして笑うのよ! 」


そう言われて音弥を見ました。

音弥は疲れて眠ってしまっていました。


( そうだ…… 私は一人じゃないんだ。 )


明日香は音弥の存在がとても温かく感じました。

友達が居るのが何よりも幸せだと噛み締めるのでした。

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