第14話 勇気の手


次の日…… 学校に行くと麻衣ちゃんの姿はまだありませんでした。

明日香は席でゆっくりと本を読んでいました。

すると、梨香達がやって来ました。

一番後ろには麻衣ちゃんの姿が…… 。


( 麻衣っ!? 何で一緒に? )


そんなに仲良くもない筈なのに、昨日の放課後に何があったのでしょうか?

直ぐにホームルームが始まり話す事が出来ませんでした。

休み時間に直ぐに麻衣ちゃんの元へ。


「 麻衣ちゃん…… おはよう。

昨日は大丈夫だった? 」


麻衣ちゃんのいつもの元気はなく、凄いオシャレさんでメイクもしっかりしてたのに、今日はあまりメイクもしていませんでした。


「 大丈夫…… ちょっと付き合わされただけだから。

心配しなくて良いから。 」


そう言い次の授業の準備をして、教室を出ていってしまいました。

明日香は確信しました。

色々酷い事されたり、服従しなければ居場所が失くなる事が…… 。

麻衣ちゃんは恥ずかしいのか明日香に助けを求めません。

明日香が怖がりなのを知っていて、迷惑かけたくなかったのかも知れません。

麗美も登校してきました。


「 あんた達、麻衣ちゃんに何してんの? 」


麗美がそう言うと、梨香達はストレス発散したいのでどうにか言い訳をします。


「 少し仲良くしてるだけだよ。

ねぇー 早織。 」


「 そうそう。 この前の麗美にやった事を反省させてんの。 」


麗美はそこまではいじめに関与した事はありません。

面倒で時間の無駄だと思っているからです。

でも仲間達は違います。


「 そう…… 程々にね。 」


そう言い、席でファッション雑誌を読み始めました。

仲間達はお許しを貰ったと思い、またいじめを続行しようと考えました。


「 麻衣! 反省してんでしょ?

なら飲み物とパン買って来てよ!

今から学校の下の売店行ってきて。 」


授業が始まりそうなのに何と言う身勝手…… 。


「 えっ…… それは…… 。

わかっ…… 。 」


麻衣ちゃんはつい、返事をしてしまいそうになりました。

いじめが激しくなるのを恐れて…… 。

その時!


「 やっ…… めてください。

自分…… で買いに行って貰えますか?

麻衣ちゃんが…… 困ってるから。 」


声は小さくおどおどしながら必死に訴えかけてきた明日香。

周りの生徒達もビックリする。

いじめに逆らえばどうなるか…… 。

次の標的にされるかも知れないのに…… 。


「 明日香…… 。 」


「 麻衣ちゃん。 あっちに行こう! 」


そして強引に手を引っ張り教室から出ていきました。

梨香と早織はビックリして返答出来ませんでした。

それは初めての事だったのです。


「 早織…… あいつ…… 。 」


「 うん。 ウザすぎ…… 何なの? 」


二人のイライラは明日香に向いていました。

麗美は気にせず雑誌を見ていました。


屋上に二人は逃げて来ました。


「 はぁはぁはぁ。 あんた何してんのよ?

何で助けたりしたの? あのまま言うこと聞いてたら、いつかは飽きたかも知れないのに。

明日香は関係ないでしょ!? 」


麻衣ちゃんは必死に訴え掛けて来ました。

明日香に迷惑かけたくなかったのです。


「 はぁ…… はぁ…… 関係あるよ?

だって、…… 私達親友だもん。

ほっとけなかったの。 」


明日香はそう言うと麻衣ちゃんはホっとしてしまいました。


「 明日香みたいなビビりがあんな事して…… 。

私じゃなくてあんたがいじめられるかもよ?

…… 私はそれが怖いの。 」


麻衣ちゃんはそう言いうつ向いてしまいます。


「 大丈夫だよ。 私は後悔してないから。

だって麻衣ちゃんが傷つくのほっとけなかったんだもん。

仕方ないよ。 」


そう言いニッコリしました。


「 私は…… あんたみたいに助けられないよ。

いじめられるの怖いし…… 。

良いの? 皆は…… 私も…… もしいじめられても助けられないよ??

怖いから…… それでも良いの? 」


残酷ですが仕方がありません。

いじめを止めたり、助けたりするのは勇気が必要で生半可では出来ません。

敵が強ければ尚更です。


「 大丈夫だよ。 私も凄い怖いけど…… 。

全然後悔してないよ。 その時は全然気にしないでね。

私は負けないから。 」


そう言い麻衣ちゃんの手を握りました。

麻衣ちゃんはその健気な姿を見て、心が痛くなり泣いてしまいました。

凄い追い詰められていたから、明日香の差しのべた手が何よりも温かかったのです。

そして教室へ戻りました。


授業を行いながら明日香は心臓バクバク。


( うわぁ…… やっちゃったよ。

取り返しつかないよー 。 どうしよう…… 。 )


悩みまくっているのでした。

でも後悔はしていません。

伸ばした手は絶対に必要だったと思いました。

もし自分が同じ立場だったら…… 。


当然、梨香達は明日香にターゲットを変えていました。

イラついたり目障りな奴を狙う終世なのです。


( 許さない…… 明日香。

どうしてやろうか…… 。 )


梨香はずっとどういじめるか計画立てていました。

少しずつ動き出すのでした。


休み時間…… 。

明日香は席に着いていると、通りすぎようとする早織に足を踏まれてしまいます。


「 痛ーっ! 」


「 あらごめんなさい。 わざとじゃないのよ?

許してくれる? 」


やっぱり来てしまいました。

明日香は絶対わざとだと思いましたが、相手にしてはいけないと思いました。


「 全然気にしないで。

ちょっと足が席からはみ出てたかも知れないし。 」


「 あらありがとう。」


クスクス笑い離れていきました。

明日香はため息を吐きました。


「 はぁ〜 。 怖いなぁ…… 。 」


「 本当にあんたってバカなんだから。

だからほっとけっていったのに…… 。 」


麻衣ちゃんが駆け寄ってきました。


「 だけど…… 嬉しかったよ。

ありがとうね。 明日香。 」


麻衣ちゃんは照れ臭そうに外を向きながら言いました。

明日香は凄く嬉しかったのです。

誰かの力に少しでもなれた事が。


「 んー ん。 良いの!

私は気にしてくれる麻衣ちゃんが居ればそれで満足だよ。

ありがとうー 。 」


そう言い二人で笑いました。


昼休み。 明日香が廊下を歩いていると。


「 明日香さん。 学校には慣れたかな? 」


担任の先生です。

宮川緑みやがわみどり。 30歳でまだまだ若くて、頼りない先生。


「 大丈夫ですよ。 皆優しいので。 」


「 なら良かった。 今日のニワトリ小屋の掃除は明日香さんなのね。

頑張ってね。 」


そう言い歩いて行きました。


( んん? ニワトリ小屋の掃除?? )


全く心当たりありませんでした。

ここの学校は誰か生徒が、ニワトリ小屋を掃除するようになっていました。

廊下の掲示板にニワトリ当番の名前が、何故か明日香になっていたのです。


( うわぁ〜〜 。 出たぁ。

これは地味に嫌だなぁ…… 。 )


また大きなタメ息を吐きました。

放課後になり仕方なく掃除に行きます。

ニワトリの餌箱や床の掃除。

匂いも独特…… 。 海人なら喜んでそうです。


「 おえーーっ! これは想像の三倍キツイぞ。

負けるかぁ! 」


そう言いながらブラシをかけたり頑張ります。


「 あんたダメダメじゃない。

貸してみなよ? 」


麻衣ちゃんが手伝いに来てくれたのです。

麻衣ちゃんは動物に慣れていて、すらすらと仕事をこなしてしまいます。


「 ありがとう。 すごーーいっ! 」


「 あんたが出来なさ過ぎんのよ。 」


そう言い笑われてしまいました。

明日香も歯を見せながら笑います。

それを遠くから見詰める二人の姿が…… 。


「 へぇー 。 結構耐えるわね。

どうする梨香? 次は。 」


「 簡単よ。 ああいうのが一番崩すのが簡単なのよ。

あいつにとって一番のかけ替えの無いもんを奪えば良いのよ。 」


そう言い不適な笑みをする梨香。

何も知らずに明日香達は嫌な掃除を楽しそうにしていました。

また梨香達の魔の手が忍び寄るのでした…… 。

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