第11話 海人だけが知っている


屋上で少し遊んでからプレゼントを買いに行くことに。

お父さんは何が喜んでくれるか?

食べ物が良いのか? それともネクタイとか?

沢山ありすぎて悩んでしまいます。

海人はおもちゃコーナーに行きたくてダダをこねまくってしまい、やっぱり一人で来れば良かったと少し後悔してしまいました。

少し面倒な事もありおもちゃコーナーで待たせる事にしました。


「 海人。 少しだけお姉ちゃんプレゼント探して来るから絶対ここに居るんだよ? 」


「 了解であります! 」


凄い勢いでおもちゃをいじったりしに走って行ってしまいました。


「 まだまだ子供よの…… 何て言ってる暇はない。

早くプレゼント探さいと。 」


紳士服売り場や小物、釣竿やあらゆる趣味の物を見ましたが、これと言う物は見つかりません。


( どうしたものか…… あれ? どれくらい経ったのかな?

海人…… !? )


夢中になると人は時間の流れを感じなくなってしまいます。

急いでおもちゃコーナーに戻りました。

周りを探しても海人は見つかりません。


「 すみません! 小さい男の子見ませんでしたか?」


店員さんに訪ねると。


「 あーっ。 さっきまで居たよ。

どっか急いで行っちゃったけど? 」


明日香は焦って直ぐに走って探しに行きました。


「 アナウンスで探してもらおうか?

…… って聞こえてないか。 大丈夫かな? 」


店員さんも心配そうに見詰めていました。

明日香は行きそうな所をしらみ潰しに探して回りました。

それでも見つかりません…… 。


( はぁ、はぁ、はぁ…… ごめんね。

海人ごめんね…… 寂しかったよね…… 。

心配になって探しに行っちゃったんだよね?

こんなお姉ちゃんでごめんね。 )


心配性な明日香はもしもの事を考え、少し泣きながら必死に探しました。

それにしても海人は何処に行ってしまったのでしょうか?


その頃海人は…… 。


「 ふぅーーっ 。 スッキリしたぁ。 」


トイレにいました。

これは仕方がありませんね。


「 にしても…… お姉ちゃん遅いなぁ。

探しに行こうかな? 」


海人はおもちゃコーナーに戻らずに、行きそうな所を短い歩幅で探しました。

少し今日は歩き過ぎてしまい、海人は直ぐに疲れて椅子に座ってしまいました。


「 お姉ちゃん…… 何処に行っちゃったんだよ。

寂しいよ…… ん? あれは? 」


美味しそうな匂いに釣られて海人は歩き始めました。

鯛焼き屋さんでした。

大量の鯛焼きを同時に焼いていて、蒸気が凄くて匂いも漂うのも納得です。


「 うわぁ…… 凄いなぁ。 」


作っている工程が見えるので、海人は夢中で見とれてしまっていました。

海人は仕事人が大好き。

こう言うのを見ているときは、黙って真剣に待ってられるのも凄い事ですね。

鯛焼き屋のおじさんが海人に気付きました。


( さっきからあの坊主が見てるな…… 。

親でも待ってんのかな?

声かけようか…… でもなぁ…… 。 )


鯛焼き屋さんは無口なシャイボーイでした。

お腹が空いてしまいベンチで海人は座り込んでしまいました。


「 お腹減ったよ。 お姉ちゃんはさっき色々食べてたけど、僕は全然食べてないんだぞ。

死んじゃいそうだよ。 」


鯛焼きを見詰めていました。

するとベンチの隣にチャラチャラとした女の子が座りました。

スマホをいじりながらガムを食べて。

海人はその女の子を隣で見ていました。


「 ちょっと。 ガキんちょ!

何見てんのよ? 何か用なの? 」


その女子高生は高圧的に海人に問い詰めました。

なんとも大人げない。


「 お姉ちゃんがスマホで忙しそうにしてるから気になっただけだよ。

そんなに楽しいの?? 」


海人はギャルを見たことがなく、スマホとかに興味津々になってしまいました。


「 忙しいですよ〜 。 あんたはじっとしてなさいよ。

だからガキんちょなのよ。 」


面倒なので海人を突き放しました。


「 お姉ちゃんはウチのお姉ちゃんと全然違うんだね。

髪は染めてて香水も付けてて大人っぽい。 」


ニコニコしながら海人は話をかけ続けました。

ギャルは無視してスマホをいじっています。


「 ウチのお姉ちゃんはねぇ。

おっちょこちょいさんでねダメダメなとことか、おどおどしてること多いんだよ。

だからね、僕がお姉ちゃんを守ってあげるんだ。

男の子なんだもん! 」


海人は一方的に話していました。

ギャルもチラッと少し見る程度で相手にしません。

ギャルはさっき買った鯛焼きを食べながらスマホをいじりました。


「 ほわぁ〜っ! 鯛焼き君…… ゴクッ! 」


美味しいそうで唾を飲み込んでしまいました。

ギャルは気にせず鯛焼きを食べ続けました。


( たく…… うっとうしいわね。

さっきからなんなの? しつけがなってないな。

だから子供って嫌い。 )


ギャルは少しイラつきながら鯛焼きを食べ終わりました。


「 僕ね。 お姉ちゃんが大好きなんだ。

いつも僕と遊んでくれるし、絶対に僕を見つけてくれる。

だから大好きなの。 」


海人はずっと話続けました。


「 お姉ちゃん鯛焼き美味しかった?

どうだった? 外側パリパリ? 」


海人のどうして病です。

何でも聞きたくなってしまいます。


「 うっさいわね。 普通よ。

どうやったら静かに出来んの? 」


ギャルが怒鳴ると、グーーーッ!! とお腹がなってしまいました。


( 仕方ないわね…… 。 )


ギャルはクリーム鯛焼きを買いに行きました。


「 クリーム鯛焼き二つ。

それと…… 出来るだけ出来立ての。 」


「 …… あいよ。 」


店長さんは無愛想に返事をしました。

ギャルは待ってる間、海人を見ました。

純粋で何一つ偽りのない透き通った性格。

ギャルはいつの間にかイラつきはなくなっていました。


「 ほら! これ食べて黙ってな。 」


「 えっ? 良いの??

でも迷惑なんじゃ…… 。 」


海人はヨダレを垂らしながら遠慮しました。


「 いらないならいいよ。 」


「 いただきまぁ〜〜す!

もぐもぐ…… 美味しいし、絶対これ出来立てだよ。

お姉ちゃんありがとう。 」


必死に頬張り、口の周りをクリームだらけにしながら食べていました。


「 世話やかすなぁ。 ほら。 」


口の周りをハンカチで拭いてあげました。

海人はニコニコして会釈して食べ続けました。


「 バクバクっ! 僕の名前は海人。

お姉ちゃんは?? 」


「 アタシは麗美。 」


ギャルの正体はいじめっこのワガママギャルの麗美でした。

まさかあの麗美がこんな事をするとは誰も思いません。


「 お姉ちゃんは優しいね。

最初は無視するからどうかな? って思ってたけど凄い良い人だね! 」


海人はそう言い微笑ました。

麗美は照れて直ぐに目をそらしました。


( 何なのよコイツ…… 弟って居たらこんな感じなのかなぁ? )


麗美は少しだけ弟が欲しくなりました。

そしてスマホから着信音が鳴りました。


「 もしもし? 分かった。 直ぐに行く。 」


待ち合わせの人が来たみたいです。


「 そろそろ行くけど海人は大丈夫?

誰か迎えに来るの? 」


「 お姉ちゃんが探してる。

絶対来るから大丈夫だよ。 」


少し安心して麗美は行くことに。


「 お姉ちゃん鯛焼きありがとう!! 」


海人はずっと手を振っていました。

麗美は感謝された事があまりなくて、ちょっと嬉しい気持ちになっていました。

そしてデパートがら出る前にサービスセンターに寄りました。


「 すみません…… あそこのベンチに居る少年迷子みたいなので、頼んでも良いですか? 」


「 分かりました。 ありがとうございます。 」


そして店員さんが海人の所に行きました。

麗美は少しだけ微笑み、デパートを出ていきました。

直ぐに店内アナウンスされて海人は無事に明日香と会う事が出来ました。

明日香はおんぶしながら帰りました。


「 海人ごめんね…… 。

泣いてなかったけど何してたのかな?

クリームの匂い? 本当に何してた事やら。 」


そして前よりも少し重くなった海人を感じながら家に歩いて帰りました。

プレゼントは一応二人で選んで買いました。

今日は色々あった日になりました。

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