第10話 プレゼント


学校でまた一日が始まりました。

麗美の周りには同類のギャル仲間がいます。

麗美はいつもその2、3人を引き連れて行動しています。

まるで見方によっては不良と変わりません。

威圧感も強いし高級品をじゃらじゃらさせています。


「 ねぇ。 そのお菓子美味そうじゃね?

ちょっと頂戴よ。 」


そう言うとクラスメイトの三咲ちゃんは怯えて直ぐにお菓子を差し出す。


「 うん。 良いよ…… 。

良かったら全部食べて? 」


苦笑いしながらそう言うと麗美は上機嫌になりそのお菓子をもらいました。


「 サンクス! 助かるーーっ!

パクパク…… 美味いんですけどぉー 。 」


そう言いながら仲間に配り皆で喜んでいました。

麗美は欲しい物は必ず手に入れるのです。

麗美は意外にも田舎のお嬢様。

お母さんはPTAの会長をしていて、お父さんは建設現場の社長をしています。

お父さんは現場でたまに指示を出したりして、ほとんどは会社で仕事をしていました。

力仕事は部下達に任せて頭は社長。

ここら辺の工事や大工とかは全てを携わっている大社長なのでした。

麗美がブランド品沢山着けている理由も納得でした。


授業が始まると麗美はメイクしたりとか、周りとペチャクチャお喋り。

先生達も注意はしません。

お母さんの存在が怖いのです。

クラスメイトも麗美に目を付けられたら、両親の報復行動が怖いと思っていました。

一人娘なのでとても可愛がられているので当然でしょう…… 。


「 麗美ー 。 今日帰り駅前行こうぜ? 」


翔が麗美と放課後駅前に行くようです。


「 えっ? あそこ何もないのよね…… 。

まぁ少し飲食店あるから良いよ。 」


この話を聞いて放課後は皆は駅前に行かない事でしょう。

麻衣ちゃんが明日香の席にやってきました。


「 放課後予定ある?? 私行きたいとこあるんだけど。 」


「 うん…… 。 行きたいけど予定があるの。

ごめんね…… また今度でも大丈夫? 」


何と! 明日香は麻衣ちゃんの誘いを断りました。

麻衣ちゃんも少しビックリしています。


「 いいけど…… 今日予定あるの? 」


「 うん。 お父さんの誕生日のプレゼント弟と買いに行くんだぁ。 」


一家の大黒柱の誕生日。

それなら仕方ないと麻衣ちゃんも諦めました。

明日香は直ぐに家に帰り、私服に着替えて準備万端。

後は弟を呼ぶだけ。

外に出て森に大声で叫びました。


「 かーいとくーーんっ!

お出掛け行かないのかーーいっ?? 」


広い森に響き渡るように叫びました。

森の木達が揺れ始めました。

目の前の木から海人が飛び降りて来ました。


ぴょーっん!


「 スタッ! 呼んだかいお姉ちゃん。 」


木に飛び乗ったりして虫探ししていた様子。

ここの森の主のようになりつつあります。


「 あんたは何時からターザンになったんですか?

そろそろ行くわよ。 」


そう言い海人の木屑で汚れた服を着替えさせて、いざ! デパートへ。

今日行く所はバスで30分くらいで着く場所にある、少し大きくて色んな物が揃っています。

お父さんのプレゼントを選ぶならここだ!

と思い前から計画立てていたのです。


バスは二時間に一本。

前までは一時間に一本走っていたらしいですが、あまり需要がない為に二時間に一本になってしまったらしいです。


ブップーーッ!!

見たこともないレトロバスがやって来ました。


( うわっ! ネコバスかと思ったよ…… 。 )


ガシャーーッ!

扉が開き中に乗り整理券を取りました。

中はガラガラ。 明日香姉弟とおばあさん一人。


「 いらっしゃい。 見慣れない顔だね? 」


運転手さんが話しかけて来ました。

正に田舎の場所ならではの親しみ。


「 最近引っ越して来ました。 」


「 おう! 海人って名前だよ。

おじさんはオオクワガタ捕まえた事ある?? 」


相変わらずの海人の社交的な事…… 。

明日香も見習わなければいけませんね。


「 どうだったかな?

確か…… 一度あった気がするよ。 」


海人はビックリしました。


「 うぇーーいっ!? 本当かよぉ?

あのオオクワガタを? おじさんノコギリクワガタと勘違いしてんじゃないのかよ。 」


明日香はまだ敬語を上手く話せない海人の変わりに頭を下げました。

海人は目をキラキラさせておじさんを見ていました。


「 あれは確か…… 俺が17歳くらいの時かな?

森で昆虫を追いかけ回っては怪我してな。

木に蜂蜜を塗ったりして時間経ってから見に来たら、そいつが居たんだよ。

あれは忘れられないなぁ…… 。

ノコギリクワガタ何かと訳が違う。 」


何やら運転手さんの心に火を付けてしまった気がしました。

明日香は疲れてたので席に座りました。

海人は運転手さんの隣で必死に話していました。


「 すげぇっ! すげぇーーっ。

僕はねぇ。 まだクワガタとか捕まえた事ないんだよ。

おじさん今度手伝ってくれよぉ。 」


「 甘えるなガキんちょ。

直ぐに甘えるから捕まえられないんだよ。

虫の気持ちになってなぁ…… 。 」


明日香は聞いていられなくなり眠ってしまいました。

また明日香の何処でも寝れちゃう病が出ちゃいましたね。


ビィーーッ!!


「 終電です。 ありがとうございました。 」


ムクッ!!


「 うわっ。 寝過ごした!! 」


運が良くデパートは終電の場所にありホッとしました。


「 おっちゃん。 またね。 カブトムシ捕まえてやるからね。 」


運転手は黙って親指を立てて見送りました。

外に出て椅子に座りました。


「 海人君…… あなたは誰とでも仲良くなれるのね。

お姉ちゃんは尊敬しちゃいます。 」


「 簡単だよ。 話したいから話してるだけだし。 」


そう言い虫のフィギュアで遊んでいます。

手を繋いでデパートに入りました。

都会と比べれば品揃えは良いとは言えません。

ですが野菜は親切、服屋さんやおもちゃ屋さんもとても優しい人情味に溢れている良いデパートです。


「 お姉ちゃん…… 上に行こう。 」


「 ん? 上?? 」


屋上はちょっとした遊具や子供の大好きなゲームや、パンダの乗り物とか沢山あるまるで小さな遊園地のような場所。

明日香も噂では聞いてたけど来るのは初めて。

エレベーターで最上階に上がりました。

二人の目に飛び込ん出来たのは、子供が乗れる機関車の乗り物やガチャガチャや何でもあります。

ソフトクリームや焼きそば。

食べ物は色々売っていました。


( まぁ仕方ない。 海人が喜ぶから少しくらい良いか。

あんまり気は進まないけど、何処にでもある在り来たりなソフトクリームでも食べようかな。 )


海人が列車に乗ってる間にソフトクリームを買いに行きます。


「 おばさま。 ソフトクリームを一つ下さいな。 」


「 はーいっ! 一個200円ね。 」


内心安いと思いました。

業務用のソフトクリームならそんなもんかな?

と思っていました。


「 あんた…… 今、業務用だから安いとか思わなかったかい? 」


ギクッ!

明日香は図星を突かれてビックリしました。


「 いえいえ! そんな事は。 」


明日香は下手な言い訳をしました。


「 ふーーーん…… はいっお待ち! 」


思ったより大きなソフトクリーム。

業務用ならそれぐらいサービスは当然か?

明日香は受け取りおばさんの顔を見ると、食べてみな? と言わんばかりとニヤニヤと見ていました。


( 何よ。 ソフトクリームで威張っちゃって。

ぱくっ! …… ん???? )


「 うまぁーーいっ!! 」


気が弱い明日香とは思えないくらい大きな声が出てしまいました。

あっ! と思いおばさんを見ると、そうだろ? そうだろ?と言わんばかりに笑っている。


「 ウチのソフトクリームはね、近くの農家から特注で朝イチに採れたて牛乳が届くのさ。

だから毎日高水準のソフトクリームが出来るのさ。

しかも農家のバカはアタシの弟での、安く取り下ろしてるから値段も安く出来る。

ここら辺で負けなしのソフトクリームなのさ。 」


天狗もビックリな程鼻は伸びて明日香にぶつかりそうなくらいでした。


「 何かここら辺はこだわり強い人多くないですか?

たこ焼き屋とかもそうですけど。 」


明日香はペロペロ舐めながら世間話をしました。


「 皆大きくなったら都会に行っちまう。

そんな事ばっかりしてたらいずれこの街には、人が居なくなっちまう…… 。

だからこの街に居て良かった!

ずっと居たいなぁ! って思ってもらいたくて、大人は必死に努力してんのかもね。

未来を作るのは子供達だからね。 」


おばさんがしみじみとタバコを吸いながら語りました。


「 そうですね…… おうっ??

ちょっとおばさん! 言ってる側から飲食店の人がタバコ吸うのはマナー違反ですよ。 」


明日香は一瞬騙されそうになりながら注意しました。


「 悪い悪い! また店長さんに怒られちまう。

偉そうな話すると直ぐにしちまうんだ。

ガッハッハッハッ!! 」


怪獣みたいな大きなおばさんだけど、凄い優しそうで明日香は直ぐに大好きになりました。

おや? お父さんのプレゼントは忘れてないでしょうか?

プレゼントを買うのはもう少し先になりそうです。

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