第6話 現実逃避ガール
土曜日の休み…… 。
明日香は新しく買った新品の赤い自転車が、家に届いていました。
「 遂に来たわね…… 私のバイク! 」
大きなカゴが付いていて、新品のベルも付いている。
新品ならではの神々しい輝きを放っていました。
明日香は休みなので自転車に乗り遠出しました。
ペダルを漕いでいる間は何も考えずにただ、何処かへ走るのがとても気持ち良かった。
( 気持ちいいなぁ…… 坂道多いなぁ。
ギアを使えばヘッチャラなの。 )
自転車のギアを変えて、軽くなりすいすいと坂を駆け上がる。
少し疲れてしまい自転車を止めて、草の上で座って休みました。
「 はぁはぁ。 疲れたなぁ。
喉も乾いて死にそう。
ん? 何の音かな? 」
何か音が聞こえて森の中へ入って行きました。
するとそこは、綺麗な川が流れていました。
水は透き通り、小さな魚も沢山います。
大きな岩が沢山あり、そこに立ってびっくりしていました。
疲れていたので試しに川の水を手で救い上げて、飲んでみました。
「 美味しいーっ。 冷たい。 」
水は自然の温度で冷やされていて、とても美味しいかったのです。
沢山ごくごくと飲み、明日香は仰向けになり倒れました。
「 本当に自然って良いなぁ。
嫌な事全部忘れちゃうなぁ。 」
疲れていたのか、風も気持ちよくて眠ってしまいました。
明日香は中々男勝りな一面もあるようですね。
「 ぐぅーっ。 ぐぅーっ。 」
学校のストレスやしがらみに耐えていて、疲れていたのでしょう。
するとおじいさんが川で釣りを始めました。
明日香は少しして起きました。
( ん? また寝ちゃった…… あれ?
あのおじいさん何してるのかな? )
明日香は黙って見ていました。
釣りを見たのは初めてでした。
「 ほっほっほ! そこのお嬢さん。
良ければこの老いぼれの話し相手になってはくれないかい?
釣りと言うのは暇でなぁ。 」
おじいさんは明日香に話掛けてきたのです。
明日香は暇だったので、近付いて話始めました。
「 おじいさんはいつも釣りしてるの? 」
「 そうだね。 趣味みたいなもんだからね。 」
そう言いながら釣りを続けました。
「 ずっと見てるけど全然釣れないね。 」
「 ほっほっほ! お嬢さんはまだまだ青いですなぁ。
ワシくらいの年になると、こんな時間も楽しく感じるのだよ。 」
言葉の意味は分からないが、自分も年を取れば分かるのかも知れないと思いました。
グーーっ!
お腹が減って音が鳴ってしまいました。
「 がっはっは! そろそろお昼だもんな。
待ってなさい。 今作るから。 」
そう言い焚き火の準備をしました。
その手つきは名人のようでした。
あっという間に火を起こして、既に釣ってあった魚を内臓や鱗を取ってから串に刺して焼きました。
塩焼きにしています。
「 この
お昼に食べようと思って持ってきておいたんだ。 」
じわじわと火が通っていい匂いがしてきます。
「 美味しそう。 おじいさん凄いね。 」
するとおじいさんは誇らしげに語りだします。
「 そうだろ、そうだろ!
魚の扱いだけはピカイチだってワシのかみさんの口癖だったのぉ。 」
「 えっ? 奥さんは亡くなってるんですか? 」
明日香は嫌な事を思い出させてしまったと思い、嫌な気持ちになっていました。
「 なぁーに、全然寂しくないぞ。
ワシはな、かみさんが亡くなっても全然寂しくないぞ。
だってワシの中にはいつもアイツとの想い出で溢れている。
死んだらまた一緒になれるしな。 」
笑って語っていました。
「 んーっ難しいなぁ。 」
「 年を取れば分かるさ。
だから死ぬまでかみさんと一緒にいた時と何も変わらない生活をしている。
かみさんは変わらないワシが好きだったからな。
何一つ変えずに釣りしたりとか、料理したりとか洗濯だってするし。
かみさんも頑張って生きてるワシを上から見守ってくれてるよ。 」
おじいさんは全く嫌な顔一つせずに話していました。
明日香はそんなおじいさんが格好良く見えました。
「 ウチのお父さんならお母さん死んだら、寝込んじゃうよ。 」
「 それは甘ったれじゃのお。 わっはっは! 」
二人は笑って話していました。
そして焼き上がった鮎を明日香に手渡します。
「 熱いから気を付けてな。 」
明日香はふーっ。 ふーっ。 と息で冷ましてから、一口かぶりつきました。
「 熱っ…… もぐもぐ…… 凄い美味しい。
鮎ってこんなに美味しいの? 」
「 美味しいんじゃよ。
ほらっ、おにぎりもあるぞい。 」
おじいさんからおにぎりも貰い、一口食べました。
「 美味しい…… むしゃむしゃ!
ただの塩むすびなのに。 どうして? 」
「 ほっほっほ! 水が違うからな。
どんどん食べなさい。 」
おじいさんはニッコリしながら見ていました。
「 いつも一人だったから話し相手が居て嬉しいな。
また暇な時はいつでも来てな?
大歓迎じゃよ。 」
「 うん。 ありがとう。
おじいさん。 私、明日香って言うの。 」
「 明日香ちゃんだね。
ワシは森野って言うから、森じいさんとでも呼んでおくれ。 」
森じいさんと友達になりました。
年の離れたお友達。
明日香は凄い気分が落ち着いていました。
川のせせらぎ、とても落ち着いてしまう。
「 森じいさん。 今日はありがとう。
私色々悩んでて凄い落ち着いたよ。 」
「 川は人を癒す力があるからな。 」
釣り竿はピクリとも動きません。
「 おいっ! いつになったら釣れるだよ!
魚達もいい加減にしろよっ! 」
我慢の限界で森じいさんは騒ぎまくりました。
明日香は思いっきり笑いました。
「 あっはっはっは! 全然おじいさんになっても落ち着いてないじゃない。
わっはっは! 」
明日香は涙が出るくらい笑いました。
「 おっほん! 少し気を取り乱したな。
まだまだワシも若いのぉ。 」
少し日が暮れて明日香は自転車に乗り帰りました。
それを見えなくなるまで手を振って見送っていました。
「 本当に良い子だのぉ。
また会いたいもんじゃの。 」
森じいさんもゆっくり帰って行きました。
明日香はまた明日から頑張ろうと思いました。
絶対に嫌な事もあっても、もう逃げないと誓いました。
もう…… 絶対にあの頃には戻らないと心に誓うのでした。
家に帰ると家族が待っていました。
「 明日香お帰りなさい。 」
「 お母さんただいまぁ。 」
そう言い家に入りました。
中ではお父さんがすき焼きを準備していました。
「 明日香ちゃん。 今日はすき焼きだぞ?
俺が大黒柱だから肉や野菜の管理をする!
良いなぁ? お前達! 」
相変わらずふざけたお父さん。
「 了解です。 隊長!! 」
海人はノリノリでお父さんに続く。
お母さんは遠くから野菜を切りながら笑っていました。
明日香も笑って仕方なくそのノリに乗るのでした。
「 イエッサーッ! 隊長。
沢山お肉を入れるであります! 」
明日香はいじめを少しの間忘れて、家族団欒を楽しみました。
お肉を食べて海人は踊り、負けず劣らずお父さんも踊りました。
お父さんはリズム感が無く直ぐに転んでしまう。
「 あっはっは! お父さんったら。
本当におどじなんだから。 」
明日香は笑っていました。
お母さんはお父さんに駆け寄り起こしてあげていました。
「 お父さん。 もう年なんだから無理しないでね。」
「 何言ってる! 俺は一家の大黒柱だぞ?
無理なんて蹴っ飛ばしてやるさ。 」
お父さんはまたお肉を食べ始めました。
そんなに高いお肉ではありませんでしたが、そのすき焼きは高級なお肉にも負けないくらい美味しいすき焼きでした。
明日香は食べ終わりお風呂に入りました。
そしてベッドで爆睡してしまいました。
「 むにゃむにゃ…… 隊長。
白瀧の追加をお願いするでありま…… むにゃむにゃ。」
明日香はこの休みは凄いリフレッシュになっていたのかもしれません。
ぐっすりと夢の中へ入っていました。
そして次の日がまたやって来るのです…… 。
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