第5話 動き出した歯車


教室はいつも悪さくなっていました。

前に紹介したヤンキーの翔と仲間達は最近学校を休んでいる。

麻衣ちゃん曰く、結構良くあるんだそうです。

だから静かでもありません。

男子のリーダー格が翔ならば、女子のリーダーは

伊集院麗美いじゅういんれみ

見た目は金髪に近く、髪はギャル雑誌を見て真似した巻き巻きヘアー。

基本誰に対してもタメ口。

だらだら喋りで態度もデカい!

クラスのギャル仲間は麗美にいつも付いて回っている。


「 て言うか、マジあの教師せんこうウザくない?

いい加減観念しろっての。

髪型とかも自由だろって。 」


皆はうんうんとうなづいていました。

明日香とは到底無縁な人だな? と思うのでした。

麻衣ちゃんはしっかり者でもあるし、誰にでも優しいので友達は多い。

明日香と喋ってないときは、違う人と喋っていました。

まさに人気者の称号をあげたいくらいに。

そんな人気者も明日香が大好きなので、いつも一人で寂しそうにしていると、直ぐに近付いて来て面白い話をしてくれます。

明日香も麻衣ちゃんが大好きでした。


明日香の席は一番後ろで、麻衣ちゃんは一番前なので、休み時間以外はあまり話す事が出来ません。

明日香の隣には空席があります。

噂によると不登校だとか。

男子らしいけど、いつからか全然来てないらしい。

このままだと留年か退学か?

少し可哀想ですが、本人の意思なので仕方がありませんでした。


そしてお昼休みが終わろうとしている時…… 。


ガラガラーーッ!!


「 おぉーーいっ! 来たぞぉ! 」


ヤンキー軍団の登場です。

クラスの空気が一気に変わりました。

みんなは目をつけられたくなくて、静かに会話したりとしていました。


「 翔今頃の登校? ウケんね! 」


麗美がゲラゲラと笑いました。

明日香は内心、殺される…… っと思うと。


「 仕方ねぇだろ? 他校とドンパチやってたんだからよ。

なぁ? 麗美。 」


翔は麗美に近付いて髪を触りました。


( えっーーっ? 付き合ってんのかい! )


明日香は一人びっくりしていました。

まさかのリーダー同士のカップル。

これはどちらにも目をつけられたくないと思うのでした。


授業が終わり下校に。

皆準備して帰ろうとすると。

弱気な身長も低い本田俊彦ほんだとしひこ君が走って帰ろうとする。


ドンっ!!

教室には凄い鈍い音が鳴り響いた。


「 痛えっなぁ…… 。 」


翔に本田君がぶつかってしまったのでした。

本田君は急いでいたので、不注意でぶつかったのでしょう。

怯えながら必死に謝りました。


「 ごごご…… ごめんなさい…… 。

間違えて…… ぶつかって。 」


するとデカい巨人でもある身長の持ち主の翔は、本田君の肩にそっと手を乗せました。


「 気にすんなよ。 本田君。 」


そしてニッコリ笑いました。

本田君も許してもらえたと思い、苦笑いをしました。

次の瞬間!!


ズドォーーンッ!!

翔の上段裏回し蹴りが炸裂!

気を抜いていた本田君のお腹に命中。

凄い勢いでぶっ飛んで行きました。

壁にぶつかって止まりました。


「 げほっ! げほっ!

…… ごめんなさい。 もうしません。 」


泣きながら謝っていました。

明日香は叫びたくなる程酷い光景でした。

見ていられなくて助けようと一歩踏み出しました。

足はぶるぶる。

体も震えが止まりません。

でも…… 助けたくて仕方がなかったのです。


「 ダメだよ。 やめとこう? 」


麻衣ちゃんが明日香を止めました。


「 どうして? だって…… あんなにも痛そうなのに。

みんなで助けないと。 」


麻衣ちゃんは凄い言いにくそうにしていました。


「 翔は特別なの。 喧嘩も凄い強いし、仲間も凄い多いしね。

目をつけられたらもう助けられないの。

苦しいけど…… 諦めるしかないよ。

それが学校で生き抜く方法なの。 」


その事実を聞いて驚愕しました。

だってそれは都会の学校のいじめとかと、何一つ変わらなかったのですから。

明日香も苦しみながらも見てみぬふりするしかありませんでした。

いじめられない為に仕方がないのですから…… 。

そのまま二人は気まずい中帰りました。

明日香は公園で一人寄り道をしていました。


( 酷い…… 酷すぎる。

どうして? 何でみんなで助けないのよ。

怖いから仕方ないのかな…… 。 )


一人寂しそうに湖を見ていました。

やりきれない気持ちを湖に思いっきり石を投げたした。


「 えいっ!! はぁはぁはぁ…… 。 」


全然気持ちが晴れる事はありません。


「 ねぇ? 石投げんのやめてくれるかな? 」


急に声を掛けられてびっくりしてしまいます。


「 あっ! ごめんなさい…… 。 」


「 そこに魚沢山居るんだよね。

八つ当たりは他でやってくれよ。 」


いつものベンチで寝ていた青年は、前のパーカーを貸してくれた青年でした。


「 本当にごめんなさい…… 。

そこまで気にしてなくて。 」


明日香は恥ずかしくなり帰ろうとします。


「 どうしたの?

元気ないじゃない?

少し話すれば楽になるんじゃない? 」


青年がそう言うと明日香は誰かに聞いて貰いたかったのか、ベンチに座り話始めました。


「 私ね…… 都会から引っ越して来たの。

前の学校でいじめられて逃げて来たの。 」


青年は黙って聞いてくれていました。


「 田舎ならみんなが優しい。

助け合って生きてる…… そんな憧れがあったのかもしれないね。

でも現実は違ったの…… 。

やっぱり同じ人間だもん。

いじめはあるし、見てみぬふりする人もほとんどだしね。

それに…… 私もその一人だしね。

笑っちゃうね…… 。 」


しょんぼりしながら話しました。

青年はベンチから立ち上がり話始めました。


「 良いんじゃないの別に。

キミも同じ人間なんだし、怖いんだから逃げて良いんだよ。

関わる必要ないと思うなぁ。

流すしかないよ。 」


青年は爽やかにそう話した。

明日香も納得してしまいました。


「 うん。 そうなのかな。 」


納得しなくてもそうするしかありませんでした。


「 ここってね。 夜はすげぇ暗いんだよ。

街灯とかほとんどないから真っ暗なんだ。

ちょっと時間ある? 」


そう言いながら明日香を連れて何処かへ案内してくれました。

そこから坂を少し登って高い場所へ。

明日香もそこまで来たのは初めてでした。

頑張って付いていきました。

登り終わり、高い所から景色を見ました。


「 すげぇ高いだろ? 夕方でほとんど見えない。

だけどね…… 3、2、1…… はいっ! 」


その次の瞬間、何も見えなかった道路や街の街灯が光り輝きます。


「 うわぁ…… 綺麗。 」


「 市町がぼんくらでね、全部の街灯が一緒の時間にしか光らないんだよね。

しかも性能悪くて、暗さとかに関係なく5時にしか光らないんだ。

でも光る瞬間が一緒って綺麗じゃない? 」


本当に綺麗でした。

都会のイルミネーション顔負けでした。


「 俺はこの街があんまり好きじゃないんだ。

でもね、この景色は都会に負けてないって思うんだよね。

そう思わない? 」


そう言いながら明日香を見ると、明日香は声を出さずに泣いていました。

青年は明日香を気にしてゆっくり立ち上がりました。


「 ここ気に入ったならいつでも使っていいよ。

キミも色々大変そうだからね。 」


そう言いながらゆっくり帰りました。


「 あ…… ありがとう。

あの、名前聞いても…… 。 」


声は届かずに帰ってしまいました。


( うっ…… うっ。 本当に綺麗……。

綺麗だなぁ…… 。 )


明日香は静かに座って泣きながら眺めていました。

その景色を見ている間は心が少し洗われた気がしていました。

明日香は少し休んでから家に帰りました。

少し誰かに話を聞いて貰えて元気になっていました。

次の日もまた頑張ろう! って思いながら家まで歩いて帰りました。

辛い現実が立ち塞がるかもしれません。

でも逃げる訳にはいきません。

それが学生の務めなのですから…… 。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る