お隣さん

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、いっでぇ…」

「あの〜、大丈夫?」

「大丈夫じゃないけど大丈夫…」

「それどっちなの…?」



自己紹介してから席に案内され、今は休み時間。

席はお決まりの転入生席(窓際の一番後ろ)だ。

席につき、後頭部をさすっていると隣の席の女子に心配された。


正直なところ全然大丈夫じゃない。

ただあそこで寝てた自分が悪いのだから仕方ない、と思うしかない晴一である。

あそこで反抗してたら喰われる。

物理的に。

そして曲がりなりにも大丈夫って言っておかないとこの心配してくれてる隣の女子はいつまでも不安になってしまうだろう。

多少なりとも気遣いはできる男なのだ、俺。



「君もありがとうね新参者の俺を心配してくれて…」

「なんもだよ。あ、私は相田美空あいだみそらっていうの。よろしくね草薙くん!」

「よ、よろしく…」


ニコッと微笑む美空にたじろぐ晴一。

挨拶がてらチラッと美空の方を見る。

明るい赤茶の髪をボブカットにした少女で、制服の上からでもわかるようにお胸様おっぱいがデカい、デカすぎる…!!

机に乗り上げているお胸様おっぱいに見惚れてばかりでは気づかないがお尻から太ももにかけての肉付きも良い…!!

ここはなんという楽園パラダイスだろうか…。


「(いい子だなこの子…。おっぱいでかいし優しいしおっぱいでかいしスタイルいいしおっぱいでかいしお尻でかいしおっぱいでかいし…絶対モテるに違いない)」


もはやおっぱいに脳が侵食されている晴一である。

彼はまだ知らない。

彼女、相田美空の微笑みは見るもの全て(男女問わず)魅了し、過激なファンクラブだってあることを。

ちなみに言えばファンクラブがあることを美空本人は知らない。



「美空、転入生ともう仲良くなった?」

「うおっ!?」

「あ、出雲ちゃんおはよう」

「うん、おはよう。というか朝も挨拶した」

「もう、いいでしょ」

「(近付いてたの全く気づかなかった…)」


いきなり現れた少女は美空の膝の上に座り、包まれるように美空の腕に抱かれる。

これを見て男子は「いきなり出たぞ、天使による愛の抱擁が…!!」「はあぁ、尊すぎる…」「俺今日死んでもいい…」などと声が挙がる。

このクラス大丈夫か?


「はふぅ、美空のおっぱい枕はなんとも心地が良い…」

「「「(((羨ましい…!!)))」」」

「もう出雲ちゃんってば、恥ずかしいからやめてよ〜」

「「「(((天使が照れてる可愛い…!!)))」」」

「私はこのまま天国に行きたい」

「「「(((とてもよくわかる…!!)))」」」

「ええ!?こんなところで死なないで!?」

「「「(((慌ててる天使も可愛い…!!)))」」」

「(こいつらアホしかいないんだろうか)」


いきなり起こった目の前の出来事についていけないが、周りの人間が何を考えているかはなんとなく理解した春一であった。


「あ、ごめん、置いてけぼりにしちゃって」

「いや全然いいよ。見てて心が穏やかになるし」

「草薙くんまで!?」

「そっか、ありがとう。私は神代出雲かみしろいずも。草薙はいいやつ。私たちはきっと良い同志になれる」

「今のどこでどういいやつと判断したのかは知らないけどとりあえずありがとう」


もはやどう突っ込んでいいかわからないので、晴一は考えるのをやめた。

そこでチャイムが鳴り、先生がやってきたのでみんな席に戻る。


「草薙くん、出雲ちゃんがごめんね…。」

「いや、いいよ。仲良しなんだな」

「うん、一年生の頃から友達なの。色々難しいところもあるけどいい子なんだよ」


出雲はなかなかマイペースな子でよく振り回されてそうだが、仲が良いことはよくわかる。

この子もなかなかお人好しだな…

いい子なのはよくわかった。


「あ、でも出雲ちゃんが男の子と仲良くいっぱい話してたの初めてなんだよ。草薙くんってすごいね」

「あれで!?」


前言撤回。

やっぱりよくわからない。

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