第4話 再会
ある朝、恵介はまだ夜も明けない真っ暗いうちから、今まで世話になった施設の玄関口に行き、施設の職員や仲間、特に彼女には長々と綴った置き手紙を置いて深々と頭を下げた。
皆さんには感謝の気持ちでいっぱいであること、彼女には(別れることになる。今まで楽しい思い出をありがとうございました。
君には君らしい人生を送ってもらう為にも、俺のこと等忘れて幸せになっておくれ)等の意味合いの文章だった。
カギ当番の職員がその置き手紙を見つけ、朝の朝礼でこのことを皆さんに告げた。
皆さんも込み上げる感情を抑え切れなかったが、一番哀しいのは彼女だと理解した。
彼女は恵介の跡を追いかけようとしたが、職員からますます重い病気になるだけだと、無理やり跡を追いかけようとする彼女を必死でくい止めた。
彼女は涙ながらも旅たった恵介に「恵介さん、私は待ちます、いつまでも待ちます、生きている限りいつまでも待ちます、どんなに年をとってもお婆さんになっても私は恵介さんを待ち続けます」と誓ったのであった。
また、恵介も心に刻んで誓っていた、修行中を終えて立派な僧侶になったら、必ず彼女を迎えに行くと…。
恵介は修行に励んだ、最初は統合失調症を患っていたので仲間の皆さんに追い付いて行くことができずに途方にくれもしたが、恵介は諦めなかった。
俺が負けたら彼女はどうなる。どんなことがあっても立派な僧侶にならなければいけない。
その思いが強く恵介にはあった。
和尚様はいつもは恵介に優しかったが、修行ともなると厳しかった。
あまりの厳しさに恵介は和尚様を恨んだりした、その時の和尚様の気持ちを恵介は悟ることができなかったからだ。
恵介の良いところはいつも仏様を敬い、いつでも祈りを身に留め仏様と対話する時間を毎日持って願っていた。
時には自問自答して仏法の教えを自分なりに長い時間をかけて導くこともしばしばあった。
決して欲を出さず、仏様に自分の未来を託していた。
そんな恵介だったからこそ、ピンチに助けを仏様に求めた時には、必ず仏様が救ってくれた。
(仏様は決して自分を見放さない、仏様は私に最善の良い方向を示してくれる、有難いお偉いである)と恵介は信じ切って、いつも拝んでいた。
和尚様も恵介の粘り強さにはかっぷくしていたし、立派な善き優しい心の持ち主だと認めていた。
こんな善き弟子を持てたことに仏様にいつも感謝している程であった。
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