第3話 再会
恵介はあっという間にいなくなった母に追いかけて向かっていき、遠い距離をものともせずに母の元へ走って会いに行った。
誰に誘導されることもなく、何かに取りつかれたようにただ夢中で走った。
やっとの思いで母の元にたどり着くと「どこへも行かないよね、僕を一人にさせないよね、いつも一緒だよね」と母にすがりつき話た。
それを聞いた母は「恵介は強い子だろう!お母さんの子だもの、仕打ちの雨に打たれても人に尽くして立派な子になって、人を救える人間になっておくれ」と言い二人抱きしめあって泣き続けた。
しかし、恵介はお母さんを探し続けたことでもう既に精神病患者になっていた。
恵介、12歳の時であった。
今でこそ統合失調症という病名だが、当時は分裂病という恐ろしい病名である。
その中でも恵介は重い病気であったが、お母さんに言われた通り(何が何でも生きてやる)との強い思いがあった。
2年して恵介が退院すると、恵蔵との二人暮らしが始まった。
恵蔵は「小学校も卒業できねぇのかよ」と恵介をののしった。
主治医の先生と三者会談で先生が「恵介君みたいな病気の人たちがいろいろな施設や作業所で活動しているよ」と言われ、話し合いでディーケアに週2回通うことになった。
初めてのディーケアは、自己紹介から始まり和やかな雰囲気で話が進んだ❗友達もできた。
いろいろと悩み等を聞いてくれる友達やケースワーカーさん等もいて良いことも沢山あった。
しかし、恵介の病気が重い病気であった為、後で4回も入院することになったし、2回目の入院の時には母が亡くなった。
恵介も重い病気にかかっていたために死に間際に母に会うことはできなかった。
悲しくて悔しい思いをしたのだった。
恵介は4回目の入院から退院した時に主治医の先生やケースワーカーさんに「このままでは母との約束を果たせない、約束を果たす為にも自分はもっと頑張りたいし自分の人生をこのまま終わらせたくない」ということを強くアピールした。
主治医の先生が別な施設を案内してくれて恵介はそこに行くことになった。
お金のことは障害者年金一級をもらっていたので、大丈夫だった。
恵介にとって初めて父、恵蔵から完全に離れての生活を送ることができた。
新しい生活で嫌な思いもしたけれど、良い思いもいっぱいあった、彼女もできた。
恵介はお母さんとの約束で人の為に働く仕事に就く為に一生懸命に頑張った。
恵介は昔から中の良い和尚様のところへ、実家の方へあるお寺を一人で訪ねて行った。
久しぶりに会った和尚さんと深刻な深い話になった。
恵介は「なんとかして自分を磨き、人の役にたつ仕事に就きたい」と強く希望した。
和尚さんは恵介の魂の年齢が素晴らしい域に達していること、今の恵介だったら十分できることを把握した上で恵介に僧侶になることを勧めた。
恵介は考えた「はい、分かりました、和尚様の希望に応える為にも頑張ります」と答えた。
それは恵介にとって、彼女と別れることにもなり厳しい世界に入って又苦労することにもなることを恵介は重々承知の上だった。
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