第28話、闇ノ結晶1
◆◇◆5月25日 体育祭翌日
「なんで振替休日じゃないんだろうな」
「体育祭が平日だったからだろ」
『ォ゛弁当ッ、持タ…?』
アパートの部屋の前で何故か待ち構えていた君軸と通学路を共に歩く。
「ともあれ、今日からはモヤシ弁当をついに卒業だ。昼が楽しみだ」
「ナチュラルに貞子が弁当作ってることに突っ込んだ方が良いのか?」
どこにでもある住宅街の小道を歩く二人。何故君軸がここにいるのかが不明だ。
「と、いうか大家さん、どこから材料持ってきたんだろ」
「胸の谷間じゃね?」「ははは、そんなわけないだろ。ファンタジーじゃあるまいし」「存在ファンタジーにだけは言われたくない言葉だな」
そんなこんなで二人は学校に着き、扉を開ける。
「あっ……」
「「?」」
雲雀と君軸が教室に入ると、クラスメイトの視線が一気に集まる。今までにない変化に雲雀は困惑する。
「? おはよう」
だが自らのスタイルを崩さないのは流石と評すべきだろう。雲雀はいつものように挨拶をする。当然、返事は期待しないモノである、が。
「えっ、あ……お、おはよう……」
返事が返ってきた。戸惑いながらも確かに、雲雀の挨拶に一女生徒が返事をしたのだ。
「返事が返ってきた……!? ど、どういうことだ……理解できん、あの毎回関わりたくないと言わんばかりの態度で何処か後ろめたそうに目を逸らすだけだったクラスメイトが!!」
「雲雀何気に空気読めないよな」
何名かが芋虫を噛み潰したような表情を浮かべる中、雲雀はもう一つの異変に気が付いた。
「えっと……僕の机で、何をしてるのですか?」
クラスメイトの一人、最近何故かギャルにイメチェンしたクラス委員の巨乳三つ編み娘だった。
「あ、えと……その、机の……を、消そうと、してて」
彼女の幼馴染は最近失踪していた。原因は幼馴染である彼女をチャラ男先輩に寝取られたショックで
クラス委員の寝取られ巨乳三つ編みギャル娘は何処か暗い印象だったがそんなことはどうでもよかった。
「つく、え……?」
◆◇◆
僕は自分の机へと目を向ける。特に何もない普通の机だ。
「雲雀、どしたー?」
キ゜ィィィィィ――――耳鳴り。酷く不快で、不安な気持ちを駆り立てるヨクワカラナイ音が頭に響く。
「お……?…r……」
次いで頭痛。ダメだ、聞こえない聞こえない。何も耳に届かない、ノイズと音の嵐が五感を狂わせ破壊せんと猛り嘆いていた。
「へ…… っ p …■… だな」
―君、軸……?― 声を絞り出すも、本当に出ていたかもわからない。狂宴のような耳鳴りが織りなす五感破壊。その波に耐えきれない。耐えられない耐えられない、1分1秒でさえこの場にいたくない。
けれど手足も動かない――ああ――限 界……ダ。
気絶する刹那に、視界にはこんな文字が書かれていた。
『犯罪者の息子ww』『学校くんな』『えっちな身体 by君軸』『お尻エロすぎ性別間違えて生まれてきてんじゃねーよ by君軸』『近い内に掘る by君軸』『結婚しろカス by君軸』『シンプルに可愛い by君軸』『俺の嫁の机 by君ジーク』『もうホモでもいい by君軸』『好きだ、掘らせてくれ by君軸』『お尻見せなさいよ by君軸』
◆◇◆
「へえ、やっぱり
君軸は雲雀へと目を向ける。滝のような量の冷や汗を垂らしながら、今にも倒れてしまいそうな表情を浮かべているそれは実に、実に実にそそるが、君軸は渾身の理性を絞ることによって暴発を防いだ。2秒だけ。
「おーす、はよー……ってなんだこりゃ?」
「先生、雲雀が死に掛けてます」「ん? なんかイカ臭くね?」
ガタンっ、という音を立てて雲雀が崩れ落ちる。
「……原因の心当たりは?」「机の落書き。指摘したらこんなでさぁ」
花子は頭をガシガシと搔き、雲雀を抱き上げる。
「とりあえり保健室運ぶか」
「ナチュラルにお姫様抱っこなんすね。俺と代わってください、雲雀の匂い嗅ぎたい」
「ナチュラルに変態ムーブすんな。あまりにも自然過ぎて一瞬渡しそうになったじゃねえか」
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