第83話 とても、ありふれた話。1/5
「——なぜ、レネスに敵を任せた」
その問いを放った
「何の話だ? 二分の一が外れた事がそんなに不満か?」
そして白々しくと息を吐き、彼は表情を一つ変えぬままに目線だけを逸らして己が左腕で抱えている鎧兜の女に
「
すると鎧兜の女がその問いを無機質に指摘で叩き伏せる。質問を質問で返す事に嫌悪を示しながら、男が白々しい素知らぬ黒幕の如き面構えの奧を見透して。
空に広がり始めている不吉な暗雲、やがて太陽は隠されて昼の恩恵は
「……ま、デュエラが指示通りに抜け道を正確に作ってたなら三箇所。俺達の居る西か、リエンシエールさん達が戦う東、そしてレネスさん待機してた北」
そんな風体で太陽が視界に入らなくなったことを確認したからなのか、仕方なしと諦めて少し首を堕とすように
「リエンシエールさん達の東は大規模な戦闘に巻き込まれる可能性が高いから、
「となれば、西か北。どちらも可能性が低いわけでもないし、賭け以外の何物でもない——と言ってやりたい所だが」
てくてくと森を歩き始め、木の根や森の茂みを踏み確かめつつ、一歩一歩と確実に森を進み論理を筋道立てても行くのだ。
「人は
「……」
「レネスさんが、敵に出会って誘われた森が北の森である以上、そこに意味が無いと考えるのは俺には出来なかった」
「アイツは北の森で何かの準備をしていたと考えるのが
ダラダラと、やがて森の出口に足を踏み出し、平原へと足を踏み入れ、遠くに見えるロナスの街に目線を贈る男。
森の外を出ても尚、陽の少ない暗い
「……退路の確保であろう、回りくどく語るでない。馬鹿にしておるのか」
左腕に抱えられる鎧兜の女が、その
「ちっ、驚かせ
「ふん。我が聞きたいのは
「
「戦いの経験とか色々なものを含めて、今後の為になると期待してる訳だ」
やはり昼前にも
「くだらぬ打算よ。あのレネスが貴様の言う焦げガスに真っ向から
「——無駄足で歩いてんのは俺だっての。ま……一見すると、あの
彼らは同時に先んじて、ロナスの街から北の森へと目を向けて——とある事象が起こる前から、その光景を眺めているようであった。
「やっぱり爆発系の能力は使えるんだな。
「急ぐぞ……一応、可能性は
しかし、やはり——
「……さっさと我らで
「——デュエラ、向こうの準備だ。こっちも、そろそろ終わりにする」
『了解なのです‼ イミト様、クレア様‼』
いよいよと
***
一方——、同じく北の森の爆発の衝撃を耳に残し、
「——今の爆発も想定の
ロナスの街の東の地の上空で戦いを続けていたリエンシエールは、戦いの交錯の後の小休止——対峙する相手から目を逸らすことなく、問い詰める。
「……少なくとも、アナタが心配する必要が無い事は確か」
それに対し、敵とされる覆面の魔女は空飛ぶ箒の上で、魔力を放出する銃に似た魔道具の調整をしながらに無機質に言葉を返し、覆面による独特の呼吸音を溜息の如く静かに響かせる。
『私の許可なく動きを止めてんじゃないピョン、耳長女‼ 【
更に直後、リエンシエールの頭上から別の声の怒号が響き渡り、空から無数の
「くっ——‼」
リエンシエールの背後で紋章を描くように光輝く緑の魔力から伸びる樹木の魔法が
「——そろそろ時間だと思うんだけど」
「まだです‼」
そして武器の調整が終わり、再びと向けられた覆面の魔女の銃口に、リエンシエールは真剣な顔色で歯を噛んだ。
だが——ここからが更に、彼女にとっての苦境。
「いや、こっちの話では無くて。あ——」
その時、覆面の魔女は——あの悪辣な男イミトが描いた未来予想図の中にある、平行線を
『ワタクシサマも——参戦なのですよ‼』
「なっ——ぐぅ——⁉」
唐突に背後から、黒い顔布で顔を隠す彼女が現れる。
「おっ‼ 素晴らしい防御なのですね、流石はリエンシエール様なのですよ。他の方様とは違うので御座います‼」
盛大な声で存在を主張する少女の
「デュ、デュエラ殿……
「問題ない。ちゃんと防御も受け身も取れてる。それよりイミトの伝言は?」
「はい‼ 作戦の変更は無し。このまま三人で状況が変わるまでリエンシエール様たちの相手をしておいてとの事です」
ここからは三対一。勝利という結果が——容易に予期できる状況に
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