第83話 とても、ありふれた話。2/5
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何故ならば、彼女達は知っていたからだ。
敗北という結果が、ここから訪れるという事を。
「はぁ……はぁ……三対一、ですか。少し、手厳しいですね」
林の木々に囲まれて、大の字に仰向けで倒れて息を切らすリエンシエール。
気品あふれる服が乱れ、汚れる余裕なき圧倒的な不利な状況。
それでも彼女は起き上がり、勝利を手にする。
「ですが、私は私の役目を全うせねば——はああああ‼」
命燃える限り、緑の魔力を
『『——その魔法、使わせてもらう』』
「⁉ アナタ方は‼」
二本の剣が
それが、己らを敗北という結果に導く事をなる事を——彼女達は既に知っている。
——全ては台本書きの如き茶番、お遊び、人々の心掴む為の演劇に過ぎぬ。
されども、だ。
「——来る。気を引き締めて」
上辺だけの白々しい芝居では、分厚い人類の歴史に爪痕の一つすら残せぬのだろう。
よって、真に迫る勢いの気配を彼女らも身に宿らせて。
「ギルティア叔父様……それと昨夜の執事殿……本当に予定通りですね」
空中下、下方から猛烈な勢いで己らに向けて伸びてくる二つの巨大な
「ん。あの方たちも……強いです——ね‼」
その影の正体の名を呟く仮面の騎士の傍らで、本能で生き
「——ラディオッタ殿‼ 素手の少女は頼みます」
「全く——矢継ぎ早に、この老体へ若さの波が染みる思いで御座います——‼」
空中から跳ねるが如く縦横無尽に跳び出した少女、それに対しロナスの砦の城主ギルティア・バーニディッシュは共に
そして——それに呼応する様相で老紳士風の執事も右手に持っていた
「——‼」
「……首無しの死に神よりは御しやすそうな可愛らしい御令嬢ではありますが」
「——ふふっ、
一方——、
『なんだか知らんけど、これも想定内ピョンでしょ‼ 【
「待てユカリ、あの人は——‼」
リエンシエールが魔法にて操る巨大な蔓の魔法の上に残されたもう一人に、二人で一つの身体を扱う仮面の騎士が片割れの蒼い瞳の制止も効かぬままに赤い眼光を滾らせ、複数の氷柱の尖端を突き動かして襲い掛からせる。
——数は多く、あらゆる角度から、それぞれが殺意に近しい紛れもない憎悪の冷酷さを帯びた手加減など一切感じさせない氷の
しかし、
「……半魔か。訳の分からぬ下品な声で鳴くものだ」
『「——⁉」』
一度と蔓から降りて鞘より抜かれた刃は、あまりにも厳格に、公平に、一つとして残すことも無く速度を衰えさせずに次々と刃の軌道にあるものを砕き斬り、襲い来る氷柱の群れを小さな
——ギルティア・バーニディッシュ。
ツアレスト王国の騎士にして、まさしくとロナスの砦と評される人間。
「言葉は要らぬ。ここからは、互いの剣で語ろうでは無いか。魔に堕ちた愚かな騎士よ」
空歩と呼ばれる空中歩法術を、当たり前の如く使いこなして空に
『強いピョンね、このオッサン……ガチ目の敵ピョン……ん?』
そんな佇まいと恐ろしい程に磨かれ抜かれた
「……ユカリ、ここから任せてもらう。手を出さないで貰うと有難い」
『あー、なるほど。これでも空気は読めるピョンからね』
言葉通じずともと、見つめ合う蒼い瞳の何かしらの因縁に赤い瞳は
そして——二人の人物を運んだ巨大な蔓の成長が止まり、
「じゃあ……、私がリエンシエールさんの相手か。もう武器に溜めてた魔力も使い切りそうなんだけど」
最後の最後に周りの喧騒に取り残された覆面の魔女は、溜息の如く独特の呼吸音を世界に漏らし地上から再び浮かび上がってくる一人の気品に満ちた女性にガラス製の眼部を動かす。
「——これも想定の範囲内ですか。丁度、三対三……いえ、もっと増援が来るようですけれど」
「うん。少なくとも、アナタが心配する必要が無いのは確か【
それから余り者同士、仲良くでもしようじゃないかと感情の起伏の
「「「では——始めよう」」」
「「「……」」」
猛烈怒涛の急展開、近々終わる予定の線引き前に激しさを増す衝突。
これからの意気を吐いた三人の駒を前に、同じく敵側の駒である彼女たちも漸くと、これまでの息を吐く。
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