第61話 序章の幕は閉じられて。1/4
——まるで、根が張りそうだと椅子から腰を離し、旅の始まりと手に持っていた
「さて——本の回収が終わり次第、今日はこの辺で
「あら、そんな勘違いをさせてしまったのかしら。出さなかっただけなのだけど」
たった二人と言うべきか分からぬ
先んじて会場を去ろうと
「それを分かった上で言っているのよ。理解が遅くて嫌になるわね、貴女との会話ってホント」
そんなミリスへ、辟易と鼻息を突くラムレット。椅子に座ったままの彼女を見据えるトンガリ帽から垂れた宝石越しに垣間見える彼女の瞳の奧は、呆れというよりは嫌悪に近い冷酷。
殺してしまえる
されど、
「それに——まだ終わっていないでしょう? 貴女の可愛い天使が終わってしまう一番面白い所を見逃してもいいのかしらね、ラムレット」
そのような殺気を感じつつも全く意にも介さぬ様子で、平然と瞼を閉じる余裕ぶり。指を鳴らし、これ以上の観覧は不粋だと合図を送って消失する眼前の巨大なモニター画面。
音も光も無いが、それでも白に染まる世界にて、神は意味深に
「……何を言っているのか、分からないわねミリス。レヴィは彼らから逃げたでしょう……それにあの子は、あの
神ミリスが放つその言葉の意図する所を、同じ神の立場に頂く者とは言えど直ぐには理解出来なかったラムレットは殺意から一転、
そして思考する、その意味を。
けれど、その問答の解にまで思考が導かれるまでそう時間が掛からない。
「——もう一人、居るのを忘れているのね。哀れな事」
愚か者を
「……——まさか‼」
そして気付く。思わず開くラムレットの瞳孔。
——何故に、己たちが様々な思惑を持ちより、
「彼女も、彼を知っているのよ。少し前に手酷く痛い目に合わされて、とてもお勉強をした様子だったわ。いじけて部屋に引き
その気付き、その驚きに、母の如き微笑み。
神ミリスは——再び指を鳴らし、先ほどのモニター画面に映っていたモノとは違う情景が、窓の外のような高解像度で映される。
——そこは、森であった。とても深い森の中。
落ち葉、所々に黄色の斑が見え隠れする様々な深緑の地。
その中にあって滴り堕つる赤の樹液。
否——、血潮は少女が片手で抑えつけている
『……はぁ、はぁ、あの役立たずの人形‼ 一人も殺せずに、なにをアッサリ死んでくれちゃってんのよクソ‼ こんなんじゃラムレット様に顔向けできないじゃない‼ クソ、クソ‼』
森の獣道のそびえる樹木に背中を預け、八つ当たりに幾度も
『ちゃんと脚本通りに仲良くなってから切り捨てて、絶望しきった顔をラムレット様に見せたかったのに、何で何でイキナリこっちの奇襲がバレてたり、デュラハン以外の連中まで化け物みたいに強かったりしたのよ、あんなの聞いて無い‼』
脳裏に思い浮かべていた未来予想図が血に
まるで絶対的な神が描いた筋書きを、事前に聞いていたように。
敷かれたレールが進行中に突如として引っ繰り返されたような衝撃が、彼女の言葉を荒く衝動的に駆り立てるのだろう。
——神々に見られているという事も忘れて。
「あら、本性の方が可愛らしい子なのね。今回の争奪戦、早々に脱落してしまうのが残念なくらい」
「……」
遠く、近く、その
未だ、半信半疑の表情険しく。
***
そして——それは現れた。
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