第57話 不倶戴天。4/4
——。
ガタンゴトンと馬車は
しかしながら、彼の話もせねばなるまい。
或いは終わりの始まりを語るべきなのだろう。
不規則に渦を巻く蒼白く
「じ……
その傍らで彼を補佐するように一冊の本を腕に抱え、古めかしい御下がりのような魔女のトンガリ帽子を被る少女は不安げな瞳を持ち上げて、彼の横顔に向ける。
「いつもと変わらない……クズが死ぬまで殺すだけだ」
そんな少女に、素っ気なく顔の向きを変えぬままに瞼を閉じて言葉を返すバンデット・ラック。
発光する蒼と白の織り交ざる
「こ……今回の標的は、ラムレット様の資料によると際立った神の恩恵を得ては居ないものの強大な魔物と手を組み、力を得ているタイプの異世界転生、者との事です。え……えっと生存時間は一月か二月程との事で……その」
やがて迫って来る時に不安げな少女はその弱気な素振りで慌てて持っていた本のページを
「どのみち気に入らないゴミカスだろ。チートの無効と魔法無力化で終わりだ……タイムリープ系の能力は?」
しかしそれでもバンデットは素っ気なく、辟易とあくまでも業務上の質問の
「そ、存在しないものかと。しかし腕の立つ仲間が数名……その中にもう一名、魔物に転生し、人の体に封じられている者が居ると事前の調査で判明してます」
「二人か……まずは最初の方から殺る。アンタ……リヴィだったか……結界術は、ラムレットとどの
「あ、えっと……目標地点……討伐対象者の付近に通路が開いてから数秒と言った所……です。すみません……」
淡々と蒼の異空で同じ方向を向きつつ、交わされていく業務連絡。短い会議。
「いや、十分だ。俺が突撃して相手の気を引いている内にやってくれ」
「わ、わかりました……」
リヴィと呼ばれた古めかしいトンガリ帽の少女は、
「——アンタ、今回の戦いに勝てば神様になるんだろ? そんなんで大丈夫かよ」
そこで彼は見かねた感情を横目の瞳孔に映して見下げるが如く僅かに緊迫の糸を
「……だ、大丈夫です、私を推薦してくれたラムレット様の為にも神の座を勝ち取って、ラック様の悲願でもある異世界転生者の根絶を果たさなければ」
珍しく殺人鬼バンデット・ラックが魅せしめる
「——……ああ。俺には俺の理由があるけど、出来る限りの協力はしてやるよ」
まるで装飾の施された聖典の如きレヴィが抱える本に目を配りつつ、足が動かずとも進んでいる蒼の異空の進行方向を見据えるバンデット。
その先に存在する巨悪の姿を夢想し、彼は目の鋭さと眼力を強める。
「そろそろ現地に到着します……戦闘の御用意を」
「俺やアンタにとっても一番重要な敵か——。一気に奇襲を掛けて、分断して先手を取る。そのつもりで居ろ」
そして背中にそびえる武骨な大剣の血も滲む包帯がグルグル巻かれた柄を肩を上げて掴み、覚悟と用意を口にした。
「はい。では——到着します。三、二、一……」
——その壮絶な過去が生んだ覚悟と執着が——
——その先に居る魔人を倒すには足らぬと知らぬままに——
蒼の異空のトンネルを抜けて溢れた異界の光は白く、そして刹那の広がり。
『
「「——⁉」」
吸い込まれそうな漆黒の黒。
それが彼らの正面から真っ向と
やがて聞こえてくる衝突音の向こう側。
首の無い馬が
「——……まさか、ここまでのアホだとは予想外にも程があるだろ」
足を止める馬車からヒョンと跳び降りて、バシャリと
草原に無造作に伸びゆく草たちを撫でる爽快に心地いい風の吹く音に揺れた白黒の髪。
「こんにちは。ウェルカム・トゥ・異世界——どんなチートをお持ちですか、お客様」
「奇襲をお望みなら、生まれる場所を間違えておりましたので来世でどうぞ」
その下に浮かぶ
「……アレが、ここの異世界転生者か」
「は……背後にある馬車に私の狙いである討伐対象の魔物も確認出来ました」
「仲間は全員、顔を隠してやがるな……気味の悪い連中だ」
そしてその背後に控える——異世界転生者の特有と言ってもいい仲間たちの姿を見通し、
「はは、
「この……イキり陰キャが‼」
優先すべき
——こうして
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます