第47話 地下に潜む怪物。5/5
「——……?」
眉を潜ませ、疑念を
「たまたま暇を持て余したクレアが近くまで来たから動きを変えたけど、別にお前らを倒す為にここで一人お寂しく待ってたわけじゃないからな」
「——……では、久しぶりに妹の顔でも見る為ですか」
イミトの言い分に対し、白い槍を消失させて腕を組む
「それも……まぁ違うな。おっと、連絡が来た……出ても良いか?」
すると更なる
「ご自由に」
恐らくはそれが、彼が
そして——、ルーゼンビフォアらを尻目に、彼らの通話は始まった。
「どうしたセティス。何か異常があったか?」
『イミト。和平調印式の準備が始まる。もうすぐ街に
「ああ。クジャリアース王子の呪いは解けたんだな、こっちはもう少し掛かりそうだから一応、式には俺の代わりに出席しといてくれ」
『……地下の方で、魔素の激しい気配があったけど、もしかしてまだ戦ってるの?』
「——まぁな。でも、もう終わった感じだ。結構な体力と魔力を削ってやったから和平調印式を表立って襲撃する気力は残って無いだろうさ。少し休んでから戻るって姫様とかに伝えといてくれ」
それで——彼女は気付いたのだろう。
「——……‼」
彼がこの場に居た、本当の目的とその狙いを。
『了解。気を付けて——』
「……てな感じだ。解かったか?」
魔通石での通話を終えて、
普段通りの彼らしい顔。争いには決して染まらぬ、元よりの暗黒。
「——。万が一に備えての
苛立ち混じりに
「そうそう、クレアに泣きべそかかされて、八つ当たりに和平調印式を妨害されても困るからな……ここに俺が一人でいるって話を聞けば、お前らはこっちに来るだろ」
「俺達を殺す事を目的にしてるお前らと、和平調印式を成功させようとする俺達との価値観の違いだな」
楽しげに正解の解説、つまらぬ手品の種明かしをする奇術師の顔には——もはや地下水道を訪れた際に見た魔人の威圧は無く、
「ここで俺がヤル事は、時間稼ぎとお前らの戦力を少しでも
「因みに魔力補充用の魔石が残り一個だって言うのは嘘だ」
更に男は己など、信じるに足る人物では無いと、お
無論——、彼が引っ
「今からでも、特攻に行くか? 瞬間移動や空間転移で昨日から結構な魔力を
「……腹立たしい。本当に、全てはアナタの
もはや完敗であったのだ。量に限界がある魔力を使っているのはルーゼンビフォアも同じ——
「イキり倒してると思って傲慢だと思ってくれて何よりだよ」
「……何故そこまでのリスクを。アナタにこの世界の和平など関係は無いでしょう。義憤に駆られ、アナタがお好きなライトノベルの主人公にでも
しかし彼女は、それを
すると男は頭を掻き、考えを巡らすような顔をしながら答えゆく。
「別に……漫画やラノベは料理の待ち時間に
「ただ、自分の足で歩いて悪戦苦闘しながら美味い飯を作りたい。俺自身が飯を食う事、生きる事に意義なんて感じたことも無いけどな、出来る限り楽しく生きたいし、楽しませてやりたい奴にも会えちまった」
「……」
更に彼は軽く頬を掻きながら、居心地悪そうに言葉を並べ、そして——
「それに……綺麗事は嫌いでも、それが綺麗な事だって事くらい俺にだって伝わるんだよ」
「だがまぁ——そういう事を色々とほざいてみても、俺はいつだって命を捨てる理由を探してるだけなんだよな、きっとよ」
「だから何も——まだ何も変われちゃいないんだろうさ、神様よ」
和平の
——いつか、そんな世界が見てみたいな、と。
率先して行った
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