第44話 怒れる兎と泣く女。1/4
場面は変わり、城塞都市ミュールズの外——林と草原の
ここでもまた、
「はっはっは、どうした‼ 神の力とは、その程度か‼」
「くっ——、
豪気な黒鎧を纏う
眼鏡の裏にある瞳は
「まだ魔法も使えるであろう。使ってみよ、使える
しかし着地した矢先、クレアの頭部を抱える骸骨騎士の猛烈な突進は間近に迫り、敵の眼球に塩を
ルーゼンビフォアは、酷く歯を噛んだ。
「……調子に、乗るな半端者のゴミクズが‼」
「
そして不本意に後方へと飛び
真っ直ぐに、突進を終えた骸骨騎士へと槍のような形状で、数本の炎の槍が猛烈に突き飛んでいく。
だが、対するクレアと骸骨騎士——、
「
持ち前の剛腕で、魔力を一切と
「……ふむ。互いに本調子では無いな、折角の
「本当に——吐き気を
——
そして、頭部しかない彼女は告げる。
「時に……右には気を付けよ」
「……右には何の気配も感じません。気を逸らす小細工だとし——たら⁉」
くだらぬ児戯に対する苛立ちに眼鏡を指で整え直した白髪の彼女を他所に、真実を告げたのであった。
「ああ、すまんすまん。真上に近い右斜め上の事だ」
「——……爆撃⁉ いや、アナタは‼ バルドッサ‼」
唐突に上空から飛来したそれは、石の
「くっ……くそっ……」
そしてそれは野太い男の声で言葉を漏らし、クレーターのような状態になった地面から起き上がる。その正体は、ルーゼンビフォアが共に戦場へと連れてきた宗教家のような身なりの男。
しかし顔を隠していた白い布が取れた彼の顔の半分は、
——彼と戦っていた相手は誰だっただろうか。
「すみませんなのですクレア様‼ 邪魔をしてしまいましたですか⁉」
遅ればせながら黒い顔布をたなびかせ、宗教家の男と同じ空から降りてきた純朴な声色の少女こそが、敵の男を地面に叩きつけた少女なのである。
名は、デュエラ・マール・メデュニカ。
「構わぬ。それよりもデュエラ、その顔布は外さぬか……ここに居る者に貴様の石化の呪いが
彼女の特技でもある空中に自在に着地できる魔法を魅せた早々、予期せぬ出来事について
「あ、そうでしたのです。今すぐに外すのですよ」
「それで、どうだ。そっちの敵は」
そしてデュエラが顔を
「やはりイミト様やクレア様の
「動き自体は単調で遅いのですが、軽く殴っても殆んどダメージは無いみたいで御座います。やはり魔力核に直接攻撃しないと——……」
「あ‼ それから、名前を聞いても教えてくれないのですよ‼ イミト様に怒られてしまうのです‼」
身振り手振りと口振りで喜怒哀楽を満面に表現し、パチクリと
——本当に、
「……別にイミトは怒りはせん。今後の為に集められる情報を集めて来いと言っておっただけだ。今の能力の情報だけで十分すぎるであろうよ。それに奴の名はバルドッサと言うようだ、ルーゼンビフォアが言葉を漏らしておった」
「バルドッサという名前なのですか⁉ 凄い、流石クレア様なのです‼」
少なくとも戦場で生まれ、多くの戦場を渡り歩いてきた孤高の魔物騎士デュラハンであるクレア・デュラニウスが、これまでに経験してきたあらゆる戦争に彼女のような人間は居なかったのだろう。
そして神妙で芳醇な
一方——
ルーゼンビフォア・アルマーレンは落下の衝撃でクレーター状となった地表の凹みから這い上がる仲間に手を貸さず、
「——……あんな小娘相手に、ずいぶん手こずっているようですね」
「問題ない——話に聞いていたより出来る相手だが、攻撃は効いていないし俺に捕まらぬ為に常に動き続けている向こうの
「消耗戦など……私は命じていませんよ。せめてコチラの邪魔になるような動きはしないで頂けると助かるのですが」
前方で歓談の如く、殺意を持った敵を
ルーゼンビフォアは再び苛立った心を落ち着かせるべく眼鏡を外し、
「俺に命令して良いのはレザリクス殿とアーティーだけだ。協力はするが、図に乗るな」
「「……」」
やがて互いの気配で
「ずいぶん仲が良いようだな。お喋りしておる暇があるのか? そろそろミュールズの騎士団どもが半人スライムの襲来に気付き始める頃であろうに」
横入のように向こうでの会話を終えたクレアが話しかけてきて。
その背後には無論、何事も楽しげに過ごす少女が背後で鎧の付いた拳を構えている。
「……全力の魔法で一気に片を付けます。アナタは、あの二人の足止めをなさい」
「——仕方ないか」
相対するは試し振りで
「ふん。まぁよい、不安要素はコチラにはあるまいよ。それよりも……アチラはどうなっておるのやら」
その時、クレアは——ほんの僅かに目を伏せて、遠くの憂いに想いを
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます