第43話 開戦。2/6
「——ええ。少し心配ではあります、和平調印式の事もそうですが……暗躍する敵対勢力が何か事を起こすのではないかと」
予定外と言えば予定外、マリルティアンジュは苦笑するイミトの語る道理に同意しつつも、何やらと
そんなマリルティアンジュの憂いに対し、
「確かに……サムウェル殿、アルバラン側の護衛はどうなっているのでしょうか? 外交上、あまりツアレスト側からの警護は難しいのではと思うのですが」
イミトは
極々、自然な流れであった。
「はい。そうですね……この中央議会城の出入り口やツアレスト側の王族や要人には最低でも二人以上の警備が付けられるのですが、城内のアルバラン国の警護は全てアルバラン側で行っており、ツアレストは関与しておりません」
故に違和感なく、護衛騎士サムウェルも姫君を安心させようと、この中央議会城の警備状況をつらつらと語るのである。
「しかしながら先に申しました通り、城内の出入り口は厳重に警備管理されておりますし、特に問題は無いものかと存じます」
さりげにイミトの眼が
「ですが……相手は他者に変身できる能力を持った者。万が一のことがあれば……」
それでも
故に、何かしらの行動を彼に起こさせようとしたのだろう。
「——では、姫様が直接お見舞いに行って様子を見てくるというのは如何ですか?」
そして、そんな姫の思惑とは全く違う
「婚約が決まった相手を心配するのは道理。姫様が許可して頂ければ私やサムウェル殿も同席し、アルバラン側に異常が無いか確認も出来て尚の事、姫の御心も安心で御座いましょう」
「そうですね。それは良い考えかと存じます、直ぐに手配しましょう」
理詰めで常識を蹴り飛ばすようなイミトの提案に、嬉々として両手を合わせて微笑む姫の笑顔を周囲の誰が
そして
「では、その為にも、まずは食事を。心配のあまり食事を採らないのは本末転倒になりかねません。他人を見舞うには己が健康で居なくては」
「ふふ、そうですね。イミト様の朝食、楽しませて頂きます」
悪意を覆い隠すような善意の正論。姫を
「サムウェル殿とそちらの騎士殿も御一緒にいかがですか? 余分に作り過ぎて私と姫だけでは余らせてしまいそうですし」
更に追い打ちを掛けて、話題の中に彼らを巻き込む猛攻ぶり。
「い、いえ、我々の立場で姫と席を同じくするなど、
「私は構いませんよ、むしろ是非イミト様の料理を楽しんで頂きたいです」
「なんでしたら毒見役という方便もあります。それに食事は大勢で楽しんだ方が美味しくなるものですよ」
「——……で、では。失礼ながら——私が、少しだけ」
微笑ましく善意に満ちた言、戸惑いの中で同僚騎士と目を合わせるサムウェル。
「「……」」
その
穏やかな朝の一幕、或いは序章。否——冒頭に
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