第27話 ハイリ・クプ・ラピニカ。4/4
ゆるりと立ち上がり、
「「……」」
「
口から垂れた
恐らくは彼女の魔力で形作られているのであろう長い耳、そして全身を覆い始める白い体毛も、カトレアの胸に埋め込まれた魔獣の姿そのもの。全身前のめりの前傾姿勢も
だが——、クレアらは実に平然としていた。
「先に行っておくが、氷は作れんぞ。この部屋の魔法陣は氷の軸となる水の魔素を吸収する仕組みになっておる」
「ああ、そういう事か。それは確かに都合の良い場所だな」
「逃げようとしても斬る。貴様に選択肢など無い事は理解しておけ」
床に投げ捨てられたカトレアの剣の頭上では、黒い魔力で創り上げられるクレアの剣が絶望の光を
だが、だがそれでも憎悪に駆られた兎の魔物はタカを
「……デュラハンと人間。私なんかを警戒してるのかピョン? ウケるピョン」
彼女には優位性があったのだ。己の宿る体が目の前の憎き奴らにとって仲間であるという事実を誤認して優位性があると思っていたのである。
「それとも——この人間がそんなに大事ピョンか? 兎ふふふふ、ひゃははは‼」
「「……」」
「「いや、全く以ってどうでもいい」」
「え?」
故に、彼らの返答が音を広く収集しようとする長い耳に
「おおむね、貴様の想定通りの小賢しさだな、イミトよ」
「まさか兎のキャラ付けにピョンを付けてくるとは思わなかったけどな」
「では事前の打ち合わせ通り、サッサと片付けるか」
驚くほど冷淡に、兎の魔物の脅しを叩き返し、食前の運動とばかりに兎の魔物を全く意にも介さずに会話を進める二人のデュラハン。
「……もしかして私が、この体の持ち主ごと自殺出来ないとでも思ってるピョン?」
「それなら——」
見くびっていたのだ。カトレアの胸の内に
「やかましいわ」
——自身が知るニンゲンだとタカを括って
「うっ——え……嘘」
そうして気付いた時には胸の少し下、
「貴様は我らの質問に答えればよい。立場を
イミトの抱えるクレアの
「安心していいぞ。死ぬことは無いらしい、そいつの体はアンデットだからな」
通常のデュラハンの体には存在しない首から上の顔は、実に気怠そうに視線を逸らして言葉を
「あ、ああ……——痛いイタイぁ痛いぃぃぃ‼」
状況が理解出来ずに居た兎は、やがてようやくと気付くのだ。
——目の前にいる二人のデュラハンが、己などと比べようも無い程に狂気を抱えた怪物である事を。
「ああ、痛覚はあるのな。悪い、考えてなかったわ」
ジタバタと剣に釘付けにされて宙に浮く体を
「——これで我らが仲良くお喋りに来たのでは無いという事が分かったか」
「ワカッタ‼ 分かったから抜いて‼ 抜いてビョン‼」
「半濁点が濁点になったな。元気いっぱいだ」
「ふん。我は雷魔法も使えるが、ついでに味わってみるか?」
「やだ、やめて‼ やめてピョン‼ 分かったって言ったビョン‼」
ハイリ・クプ・ラピニカは絶望していた。そして呪っていた。
己がこれまで
こうしてボタボタと噴き出すように堕ちる赤い液体を床伝いに吸い寄せる赤い魔法陣の部屋にて、ここで以前行われていた
——。
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