第40話

 後ろ髪を惹かれる思いで、さくらからそっと離れ寝室を後にした。パタンと寝所のドアの音が大きく響いた。

私室をでると廊下にナタリーが佇んていた。

そんなナタリーにさくらのそばにいるよう指示し、

執務室に向かった。


 カイザーは執務室に戻り机に腰掛け、窓の外を眺めた。暗闇に窓から月の光だけが差込みカイザーの顔を照らした。カインの話を思い出す。

さくらは異世界から来た女ということだった。

異世界と言われてもいまいちピンとはこないが、過去に現れた異世界人がいたこたこともごくごく稀だがあったはずだ。

 世界の理を歪めるもの……だったはず。

全属性を有し、膨大な魔素を身に宿し、運命の番という稀なもとして我々の前に現れた。

 通常カインの運命の番で模様が現れた場合さくらが宿すのはカインの子のみ。たが、もしかするとわたしも同じようにさくらが運命の番の可能性……いや、直感を信じるならば運命の番だと断言できるだろう。

 そうなった場合であってもどんなに惹かれても、さくらは確実に正妃にはなれない。愛妾がいいところだろう。他の男の紋が出た以上それは私の子である可能性あやふやになってしまう……カインは王家の血がながれているとはいえ、正妃はむりだろう……。


 だとしたら、もう一つはカインと婚姻を結ばせたうえで私がさくらを寝所に召し上げる。ということ…だがそれをカインが良しとはしないだろうな。だが、カインと同様におれにも番としての権利はある。指を咥えてだまってやつに渡す気もない。

 あとはさくらの気持ち次第……か。

 さくらのことは殆ど何も知らない。今は運命という本能に近い部分で強烈に引き寄せられている状態だ。

 口づけをしただけで脳天から腰までビリビリと痺れた。

さくらを蹂躙したカインはとてつもない快感におそわれたに違いないな。

 我を忘れるほど囚われ、虜にされる。

光に集まる蛾のように。

執務室の窓から差し込む月の光を仄暗い眼差しで静かに見つめた。

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