第29話
あっ……どうぞとソファーに案内するとカイザーはちらりと横目でさくらを見て腰を下ろした。
「座れ」
カイザーに促されさくらもソファーに腰を掛けた。勿論対面に。
カイザーは長い足を組み腕を胸の前で組んでいるだけで凄いオーラを放っていた。
それに比べ身長の低い私はさながらライオンに食べられるうさぎのようだった。
不安が顔にでていたんだろう、カイザーは小さく溜息をつくと静かに口を開いた。
「さくら……今日のことを話してくれるか」
ナタリーから聞いていたからだろう、早速その話題だった。
「……っ」
さくらが言い淀んでいると、
「王宮内に強力な魔法陣を組まれたとゆうことは、かなり危険なことになる。今回なにも被害がなかったから良いとゆうわけにはいかない」
深刻そうにかたる姿を見て、さくらは重い口をひらいた。
「わ…わかった。話すわ。今日図書館にいったんだけど、そこで魔術関連の本を読みたいといったらラスル司書長がその本が置かれた部屋に案内してくれたの……。そこでクスクスと子供……だと思うんだけど笑い声がきこえて……」
「笑い声…つづけろ」
「うん……部屋に入ってね、本を読もうとして椅子に座ったとき、その子に出会ったの。でもその子には影が無くて……。その子は幻影みたいなもんだよって言ってたと思う」
「!!? 幻影だと!?」
さくらの話を聞きカイザーはハッとした顔になる。若干だが顔色も良くない気がする。
「そいつの容姿は……」
「銀髪の少年だったわ。白い服を着ていて……名前は確か……ルツィアだったかな」
「ルツィア……そうか。分かった。さくら、結界については本当に関与していないんだな?」
表情をすっと消して真剣な目がさくらを見つめた。
「うん!それは絶対に。する意味も無いし……」
「今後、またそいつに出会った場合必ず報告出来るようこれを渡しておく。必ず身につけておいてくれ一応だが、護りのまじないが掛けられている」
コトリとテーブルに綺麗なオーロラ石がはめ込まれたブレスレットを渡された。
「さくら、そいつは確実にかなり高位の魔術師だ。その少年の姿も本人の容姿とは限らない可能性もある、幻影魔法を近距離からするならまだしも遠い場所からの幻影魔法などほぼ不可能に近い」
「そうなんだ……うん、わかった。このブレスレットは必ず付けておくわ。ありがとう」
「それと……だ。さくらの属性と魔素の量を測りたいのだがかまわないか?」
「あっ……うん、それは勿論!」
そう言ってカイザーは懐からカップみたいな容器を取り出し目の前に置いた。すると不思議なことに透明な液体で満たされる。
「判別の瓶だ。これに手を浸して魔力をこめると属性や、魔素の量がわかる」
「あ! それラスル司書長にきいたやつだ!」
カイザーはさくらをみて頷くと話を再開した
「火なら赤に。水なら青に。光なら黄色に光る。魔素の量が多いほど水は濃く濁っていく。火と水どちらもならば紫色になる。水と光なら緑だな癒しの力になる。私がやってみるから見ておいてくれ」
カイザーが液体に手を浸した。ポゥっと瓶自体がひかり、液体の色は濃いオレンジ色になった。
「私は火と光だ」
なるほど。絵の具みたいな感じなんだ。液体から手を引き抜き桜の前に瓶を置いた。不思議なことにカイザーの手は一切濡れてはいなかった。
「ではやってみろ」
こくんと頷いて手を液体に浸した。
ぽわんと瓶が妖しく光った。
光と水とかならいいなぁ……とのほほんと考えていたさくらだったが、そんなさくらの予想かけ離れた全く違う色だった……えっ……な、なにこれ……!?
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