第16話
長い回廊を抜け進んでいくとその先に歴史のありそうな建物がみえてきた。建物の前の広場には天使の像が中心にある噴水が水を弾きながら流れ落ちていた。その美しい景色に思わずほぅっと息がもれた。
「さくら様。あちらが図書館になります」
「すごい……素敵」
あまりにも素敵すぎて言葉にならないとはこうゆうことを言うんだろな。
立派な扉を開くと広い品のいいエントランスがあり、二階が見える吹き抜けになっていた。そしてありとあらゆる本があるんじゃないかとゆうくらいの本棚にはぎっしり本が詰まっていた。ほんの独特な匂いと古い少し埃っぽいような香りが鼻をくすぐる。
少し先に行くとカウンターのようなスペースに誰かいることに気がついた。
ちかづくと本を読んでいた顔をあげ、すっと椅子から立ち上がった。
すらっとした長身にカーキ色の長髪を後に括り、モノクルをした知的な印象の男性だった。
「あ、すみません、突然おじゃましてしまって。さくらと申します。こちらの図書館少し見学させていただいてよろしいでしょうか?」
男性はさくらの顔をじっとみつめ、侍女に目をやりふわりと小さく笑った。
「えぇ、ごゆっくりご覧になってください。ラスル・チェリッシュと申します。私はこちらで司書長をさせていただいております。何かお探しの本はございますか?」
「あっ、はい! よろしくお願いします。魔術関連の本はありますか?」
「魔術……ですか? 高位魔術の記されている本は禁書になっていまして、王の許可がいりますが、基本的な魔術の書ならございますよ。ご案内しましょうか?」
「はい! お願いします」
さくらは元気よく返事をして彼の後について奥に部屋へと向かった。
その本は螺旋階段を上がったさきの小部屋に置いてあった。
そこはなんとゆうか不思議な感覚になる部屋だった。ドアの前まで来たときに囁きに近い小さな声が聞こえた。クスクスと子どもが笑う声のような…
キョロキョロと周りを見渡しても何もいないのだが、そんなさくらをみて不思議に思ったのかラスルが声をかけてきた。
「どうかされましたか?」
「あっ……いえ何か声が聞こえた気がして。でも気のせいだとおもいます」
「声……ですか?」
フム……と顎に手をあて考えるラスルをだったが直ぐに姿勢を正し
「もしまた何か変わったことがございましたらこちらでお呼びください」
といって一枚の栞を私に手渡した。
ラスルが私に手渡すと、色が金色の栞に変色して輝いた。
「こちらは一度手にとって読まれた本を記録します。私がその栞の契約主なのでそちらに向かって手をかざしていただきますと私と通信ができます」
へぇ〜凄いな。これも魔法かぁ。
「わかりました。こちらの部屋で少し本を読みますのでよろしくおねがいします」
その小部屋の窓側には小さな机と座り心地の良さそうなソファーがあったのでさくらはそこで本を読むことにした。
「さくら様。ではお茶をおもちしましょうか?」
ナタリーが声をかけてきた。
「ありがとうございます、お願いしていいですか?」
答えるとナタリーはラスルとともに部屋を後にした。
先程ラスルが手渡してくれた栞をしげしげと眺めていると、
またクスクスとちいさな声が聞こえた。
「だ……だれ?だれかいるの?」
明るい部屋とは言え、すこし怖くなりきゅっと肩を抱いた。
〘ねぇ…あなた…だれ?〙
鈴を転がしたような声がはっきりきこえた。
ぱっと横を向くと、白い服を来た銀髪の美少年が本棚にもたれ掛かっていた。人では…ない。
だってその姿は窓から差し込む光に照らされているのだが、影が…無かったからだ。
ゆ…幽霊!!?
さくらはおばけの類が本当に苦手だった。
〘みえるんでしょ?〙
「……っ」
こ、答えていいんだろうか?た、魂とかとられるとか……?
〘はぁ……とりあえずこわがらせたりしないから答えてくれない?〙
ちょっとムスっと頬をふくらませる姿は、普通の子どものようにみえて怖かった気持ちもすこし和らいだ。
「き……きこえるわ。あなたは誰なの?」
そう答えると、ぱっと顔を輝かせて私を見つめてきた。うっ!いけない……美少年の笑顔は破壊力がやばい。
〘僕の名前はルツィア〙
「ルツィア……くん。えっと……あなたは幽霊?」
〘ははっ! 幽霊じゃないよ。いまは力がなくて実態をたもてないけど、本体は別の場所にあるんだ〙
「あ、じゃあこれは映像?みたいな感じなんだ」
〘ん〜まぁそんなかんじかな?♪〙
「で、わたしに何か用があるの??」
〘うん……えっとなまえは……〙
「あっごめんなさい。さくらです」
〘さくらね。よろしく。あのねさくらの魔力を感じたんだ。で探してたらここにいたって感じかな?〙
「魔力。うん。魔力はあるみたい。でもよくわからないからここにしらべにきたの」
〘よくわからない? 自分の魔力? そうだ! 手を出して〙
手を伸ばしてさくらの両手をつかんだ。映像なのに本当に触られているような感じでぴくりと体がうごいた。
〘ふふ……緊張しないで。ぼくの目をみて〙
手を握られルツィアの目を覗き込むと魔力が指先からさらさらと入ってくる感覚があった。瞳の中が炎のようなゆらめきを発した。綺麗…と見入ってしまうような。
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