第14話

「失礼します」


侍女がワゴンにティーセットを乗せて部屋に入って来た。


「あ、すみません。ありがとうございます」


ぱっと立ち上がりぺこりとお辞儀をすると、びっくりしたのか大きく目をひらき瞬きをして、


「さくら様。お顔をおあげください。私達に頭を下げる必要はございません。さくら様は陛下の寵姫ですから」


そう侍女が告げると、座っているカインのピクリと眉を寄せた。


「えぇ?! いやいやちがいます! たまたまこちらに住まわせていただいているだけで……」


「カイン様。先程副騎士団長がお探しになっておりましたよ。向かわれてはいかがですか?」


なにやら寒い空気が部屋の温度を1、2度さげた。

ぷるっと身震いしカインに向かって


「だったら早くいってあげて。ま、またきていいから……」


先程のことを思い出し顔が赤くなったさくらをくすりと笑い、


「そうだな。じゃあまたこちらに寄せてもらう。あと王宮内とはいえ一人での行動は控えてくれ」


そう言うとちらりと侍女に目配せすると

さくらの手をそっとつかみ手の甲にちゅっと口づけをおとした。


カインが部屋から出ていくと侍女はカップに紅茶をそそぎ、さくらの前にそっと置いた。


「ありがとう。そういえば貴方のお名前聞いてなかったわね?」

「はい。私はナタリーと申します。さくら様の侍女にはあと二人ついております。御用の際はべるでお呼びください」


「は、はい。わかりました」


ナタリーはきちんと束ねた茶色の髪に濃いグリーンのきれながの瞳の綺麗な女性だった。性格はとても真面目そうだった。雰囲気がピンと張ったシーツをイメージさせた。


「ナタリー、このお茶を飲んだら王宮内を案内してほしいのだけど大丈夫かしら?」


「もちろんでございます。私は護衛も兼ねておりますのでご安心ください」


護衛…?! てことはナタリーは強いのか。最強メイドさんとか萌える…いやいや。とりあえずあまり怒らせないようにしないと。


「じゃあ行こっか!」


こうしてさくらは王宮内を探索することになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る