第7話

     【カイザー視点】


ある森に差し掛かったときだった。視察からの帰り道突如として我が隊の馬たちの足が止まった。複雑に組み込まれた広範囲の魔法陣に引っかかったと気がついた。幸いにも俺の馬の脚は強靭な魔術封じをした蹄を履いていたため縫い付けるように留められることはなかったが、隊の大半の馬は魔法陣の強力な魔術によって地に足を取られていた。


カイザーの安否を気遣いカインたちが馬を降りたときだった。

カインたちはその魔法陣を取り囲むように数十人の盗賊に行く手を阻まれていることに気がついた。

王の近衛兵たちはすぐに解呪の魔法陣を組み王を安全な場所まで避難させた。

ただカインたちはその盗賊の足止めのために殿を努め、深手を追ってしまった。

通常なら決してやられるような強さではない。しかし、魔法陣が厄介だった。体内の魔素と体力を一時的にありえないくらい減らされていたのだ。

カイザーは先に城にもどり、副長のアルに増兵を指示しカインの救出に向かわせた。が、その場にはおびただしい血の跡と事切れた盗賊と兵がいるのみでカインはこつ然と姿を消していた。カインの同期に当たるアルは最悪も考え拳をギュッとにぎりしめた。


近くの崖から落ちたことも考えられたが、運が悪いことに雨が兵の足を泥に沈めた。降りしきる雨のため捜索も難航し一旦切り上げられた。



✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛✛


次の日から捜索開始と兵士とアルが城から出たときだった。

道の先に見慣れた顔がこちらに歩いて来ていた。


「おい! あれ……カインじゃないか!?」


門兵が捜索の兵に声をかけた。


「大丈夫か! カイン」


走ってカインのもとにいく。


「ああ。済まない、心配をかけた。王に報告にいく」


「あ、あぁそうだな。……って……ん?おまえ……」


そこでアルは奇妙な違和感に気がついた。小綺麗になった格好、カインに傷が全く無かったためだ。

戦っていた際に確実に攻撃を受けていたはず。しかも回復系の魔法師たちはいなかった。いやいたが王について避難したため現場にはいなかった。


「ああ、そのことについても報告する」


カインの表情はどこか陰りがみえた。

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