第5話

カインを部屋に招き入れようとリビングにあるソファーに向かおうとしたさくらの手を引き カインはさくらをギュッと抱きしめた。


がっちりした胸板から微かに匂う男の香りにさくらはくらっとした。さくら……と耳元でかすかなあつい吐息をもらされ、さくらは耳まで真っ赤になって抱きしめられたままかたまってしまった。


手でカインを離そうと突っ張っても腰をがっちり捕まれ身動きがとれないのでどうにかカインに離してもらおうと、もう! っと顔を上げると猛獣のようなあつい眼差しに囚われまたしても固まってしまった。


「さくら……すまない。こんな……おれのせいで……お前を渡したくない……誰かに渡すぐらいなら……俺が……犯……」


なんだかカインがブツブツといってる。

やばい、なんかやばいよ?


「カイン?ねぇ……カイン! 落ち着いて! 聞いてる?」 


さくらの叫び声でハッと我を取り戻したカインはパッとさくらのからだを離した。


ふぅ……と息をついてこっちとカインを手招きしてソファーに腰掛ける。


向かい側に座ってもらおうとどうぞと手で指し示したのだが…ん?なぜに?よこ?

カインはなにも間違っていないかのようにさくらのよこに腰をかけた。




うん……近いわ!


「か、カイン? あの横じゃ……あの……近くない? 喋りづらくない?」


「いや。変ではないだろ」


そ…そうなんだ。まぁこっちの世界での距離感? みたいなもんかな? ぐらいでさくらは気にしないことにした。


「で、話って? どうしたの? とりあえずは奴隷云々もないし、身の安全は確保されたっぽいんだけど、ちがうのかな?」 



「いや、まちがいなく奴隷ではなくなった。(が、カイザーに目をつけられた。厄介すぎる)」


カインは胸の内で毒を吐いた。

王ことカイザーは腹違いのカインの兄にあたる。

側室を3人もっている。まだ正妃は決まっていない。この三人もカイザーの目にかなったのではなく、貴族からむりやりこの地位に収まった女たちだ。王に媚び後宮で好きにしている。

夜伽は必要だとゆうことだが王が朝まで褥を共にしたものは誰もいない。

その王がさくらに目をつけてしまった。

くっと歯を食いしばって一連の過程を見ていた。奴隷におちると衣をすべて脱いださくらの媚態が脳から離れない。

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